病院でいろいろな検査をしたけれど異常なし。それでもヘルペス感染を疑う細胞が見つかったケース


尿道の強い痛みを訴え、泌尿器科を受診している方から相談がありました。
この方は2年前、別の泌尿器科で前立腺炎と診断されたことがあります。
今回は、悪寒を伴う40℃近い発熱と尿道の痛みがあり泌尿器科を受診。一般尿検査、超音波検査、培養検査、生化学検査、腎機能検査、末梢血液検査など、さまざまな検査を受けましたが、特に異常は認められなかったとのことでした。
そこで、アイラボの「男のパスポート」を利用したところ、尿道から採取された細胞に単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を強く疑う所見が認められました。
「病院でいろいろ検査をして異常がなかったのに、本当に今回の検査でヘルペス感染が分かるのでしょうか?」
そのような心配から、無料電話相談にご連絡をいただきました。

ヘルペス感染細胞は特徴的な形態を示します

外性器、たとえば尿道口、亀頭、冠状溝、陰茎などに水疱や潰瘍などの病変があれば、医師は単純ヘルペスウイルス感染を疑うことができます。
しかし、病変が尿道の内部にある場合には、外から肉眼で確認することが難しいことがあります。
アイラボの「男のパスポート」では、細い綿棒を使って尿道から検体を自己採取します。その検体を用いて淋菌、クラミジア、トリコモナス、カンジダなどを調べ、さらに、うがい液を用いて咽頭の淋菌・クラミジア感染についても調べます。
アイラボの郵送検査で大切にしていることの一つが、**「検体の適否判定」**です。
医療従事者ではなく、ご本人が採取する検体だからこそ、「検査に適した細胞がきちんと採取されているか」を確認することが重要だと考えています。
そのため、採取された検体の一部をスライドガラスに塗抹し、パパニコロウ染色を行い、顕微鏡で観察しています。
この過程で、目的とした検査項目以外の異常を疑う細胞が見つかることがあります。
今回が、その一例です。
それでは、実際の尿道擦過物標本を見てみましょう。
尿道の単純ヘルペス感染細胞弱拡大
弱拡大で観察すると
全体的に細胞の変性がみられ、一部に好中球も認められます。
さらに、赤い矢印で示した部分に、多核細胞が認められました。
正常の尿路上皮にも複数の核をもつアンブレラ細胞がみられることがありますので、「多核細胞がある」というだけでヘルペス感染とは判断できません。
そこで、この部分をさらに拡大して観察してみます。
尿道の単純ヘルペス感染細胞強拡大
強拡大で観察すると
複数の核が認められ、それぞれの核内構造は均質化し、いわゆる「すりガラス状」の変化を示しています。
さらに、核膜がやや肥厚してみえ、隣り合った核が互いに押し合うような像も認められます。
このような**多核化、すりガラス状の核、核の押し合い像(nuclear molding)**は、ヘルペスウイルス感染細胞にみられる特徴的な細胞変化です。
この視野だけでも、ヘルペスウイルス感染を疑う重要な所見と考えられます。
ヘルペス感染細胞 尿道弱拡大
別の場所も見てみましょう
別の視野では、好中球の明らかな増加はみられませんが、ここにも多核細胞が認められます。
さらに拡大してみましょう。
ヘルペス感染細胞 男性尿道 強拡大
こちらでは、隣接する核が互いに押し合う**核の押し合い像(nuclear molding)**が、より明瞭に認められます。
すりガラス状の核、多核化、nuclear moldingなどを総合すると、ヘルペスウイルス感染を強く疑う細胞所見と考えられます。
ただし、細胞診は細胞の形態から感染を推定する検査です。単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)の確定や型別が必要な場合には、PCRなどのウイルス学的検査と医療機関での診察が必要になります。
また、今回認められた細胞所見が、40℃近い発熱を含むすべての症状の原因であったかどうかについても、この検査だけで判断することはできません。

腟内に発症した場合も、外からは分からないことがあります

女性の場合も同じようなことがあります。
外陰部などに水疱や潰瘍がみられればヘルペス感染を疑うきっかけになりますが、病変の場所や状態によっては、診察だけでは分かりにくいケースもあります。
今回のようなケースは多くはないかもしれません。しかし、感染症が疑われるにもかかわらず原因がはっきりしないとき、細胞を直接観察することによって重要な手掛かりが得られる場合があります。
単純ヘルペスウイルスに感染すると、症状が治まった後もウイルスは神経節に潜伏します。そして、体調や免疫状態などによって再活性化し、症状が再発することがあります。
今回の検査では、尿道から採取された細胞にヘルペスウイルス感染を強く疑う所見が認められました。
これは確定診断そのものではありませんが、医療機関を受診し、必要に応じてさらに検査や治療を受けるための重要な手掛かりになったと考えています。