異形成の定期検査、どうしても時間が取れないので、、、

子宮頸がん検診で異常が発見されると、精密検査や定期的な追跡検査が必要になります。
例えば、昨年から一部自治体で始まったHPV検査単独法による検診では、「陽性」と判定された場合は細胞診による精密検査(細胞診トリアージ)で、現状での異常の度合(NILMなのか?LSILなのか?HSILなのか?)をチェックしなければなりません。その検査でLSILと診断された場合、半年に一度のペースで追跡(follou-up)検査を受けることになります。
しかし、子育てや仕事で忙しい方には、半日がつぶれてしまうので、かなり負担になります。それに加え、「異常なし」が続くと、「もう大丈夫なのでは?」との思いで、追跡検査を怠ってしまう事も少なくないようです。
この表はアイラボの藪崎宏美が日本性感染症学会(2011年B-30)で報告したものです。
先ずは、一番左のCase 1を見てみましょう。
一番左は検査時期を表し、804は2008年4月に検査を受けたことになります。
次の列はその時の細胞診断になります。
水色で0はNILM、黄色で1はASC-US、オレンジ色で2はLSIL、ピンクで3はASC-H、濃いピンクで4はHSILと診断したことになります。
右端はその時検出されたハイリスク型HPVの型を示しています。
Case1では、16型と39型が長期にわたって感染しているにもかかわらず、異型細胞が見られない時期があります。
ここに示した全てのケースは加藤式採取器具による自己採取の成績ですが、医師採取でも同様なことが起こります。LSILで半年に一度検査しても、NILMが続くことがあります。しかし、この表で示したように、その中のいくつかのケースはHSIL(高度上皮内病変濃いピンクの4)に相当する細胞が出現するようになりますが、Case1、Case5ではその後検出されなくなります。
しかし、Case2、Case3、Case4、Case6の赤枠で囲ったように、毎回の検査でASC-H(ピンクの3=HSILの存在が否定できない)やHSIL濃いピンクの4=高度上皮内病変(前がん病変)に相当する細胞がみられるようになります。
このような状況が続くようになると組織検査(病変の一部組織を採取してより正確な検査)を実施し、そのような病変を取り除く(円錐切除術など)手術
が行われます。
ここに示したケースは風俗営業従事者の定期検査の一環として実施したもので、短期間の観察例ですが、実際HPVに感染していることが分かってからの追跡検査に要す負担は結構きついものがあります。私の知り合いの方でも、HSIL相当の細胞がみられ定期的に追跡検査を行っていましたが、仕事の忙しさに(忙しくて行く時間がないというより、仕事が面白くて)定期検査を後回しにしてしまい、前がん病変が進行してしまったようです。
子育てや仕事、そして学業など、頑張る女性ほど陥りやすいのが子宮頸がんです。

今、病院に行けない! 今回はパスしよう! それを続けたら危険です

今回紹介するケースは以前LSILと診断され、今月定期検査を受けることになっている方ですが、どうしても気が進まないのでアイラボの郵送検査を選んだようです。
早速今回の細胞をみてみましょう。
背景に白血球の増加はなく、とてもきれいです。
直感的に分泌期(生理前)の方かな?
写真中央部にチョットおかしな細胞があるので拡大します。
周りの細胞に比べ少し大きくなって、オレンジ色に染まっています。
核が3つほど見られ、典型的なHPV感染細胞です。
LSILと診断しました。
この写真の中央部分にも、前の写真とはチョット顔つきの違う細胞が見えます。
拡大してみましょう。(あえて拡大した細胞を載せなくても、スマホで簡単に拡大できるのは分かっていますが、そこはお年寄り)
これも典型的なHPV感染細胞です。
もう少し言うと、少なくても「この細胞達は16型の感染ではない」
事が分かります。かといって、このケースが16型の感染がないというわけではありません。
最初の写真で示したように、複数のHPVが同時に感染していることは少なくないからです。

今回もLSILの細胞達で、HSILを疑う細胞はなかった。

チョット安心できましたね。
何もせず心配しているより、こんな形でわずらわしさを時々解消するのも一つの方法かも知れません。
私達の郵送検査をうまく利用して頂ければ幸いです。
自己採取による郵送検査で最大の弱いところは、子宮頸部の奥に発生する子宮頸部腺がんを早期に発見することができない可能性がある点です。この方の様に既に病院で医師の採取による細胞診検査を受けている方であれば、その心配も少なくなります。検査にはこれで全てOKと言うものはありません。
郵送検査でHPV検査「陽性」や細胞診検査でLSIL以上の結果をもらった時は必ず病院を受診し医師採取で子宮頸部の奥から細胞を採取して検査しておくことが大切です。自己採取細胞診はあくまで検診を受けるのは「恥ずかしい、忙しい、面倒」な方、ASC-US、LSILなどで追跡検査を必要としている方で、仕事や学業、子育てで「今回は病院に行けない」と言う方が一時的にチェックしたいときに利用されればその価値は大きいと思います。
そんなことを理解して郵送検査を利用して頂ければ幸いです。

私達の郵送検査ではこんなサービスもあります。

前の写真で示しましたが、HPVの感染以外は、白血球の増加もなく、とてもきれいな腟内のように見えます。しかし、この方の検査依頼書を見ると「臭いが気になる」とありましたので、もう少しその点を考慮して観察してみます。
細菌性腟症に特徴的なクルーセルは見られませんが、細胞と細胞の間に青色にぼやけて染まるものが見られます。さらに拡大を上げてみましょう。
最初の写真で述べましたように、この方が細胞を採取したのは多分月経前一週間程かな?
そうだとすると、通常は乳酸菌が増えてくる時期ですが、少なくてもこの写真では確認できません。
それどころか、青くぼやけたように見えるのは腟ガルドネラ菌ですので、細菌性腟症が疑われます。
Nugent score で表現すると8で「異常」ということになりますので、「臭いが気になるようであれば腟内フローラの状態を確認することも可能です。」と、コメントを入れるようにしています。
子宮頸がん検診で「異常」が判明したら、結構長期に渡り追跡検査をすることになります。
今回ご紹介した方のように、何らかの理由で定期検査が受けられない場合でも、セルソフトによる自己採取法なら自宅で手軽に検査できますので、(子宮頸部腺がんの存在を考慮しながら)有効に活用されることをお勧め致します。