New! アイラボのHPV検査 ~Fem HPV test~ とは

子宮頸がん検診は今年から推奨グレードAの「HPV検査単独法」が自治体の検診にも認められるようになりました。
検体の採取は「医師採取を基本とする」にはなっていますが、「自己採取は認めない」といったこれまでの表現より柔らかくなりました。子宮頸がん検診の受診率を上げる目的であれば、自己採取を容認することは当然であり、既にWHOや米国FDAも自己採取を許可しています。
この度アイラボは、『Fem+(フェムプラス)Femtech Tokyo ^女性の健康と活躍を支援する』の展示会に参加し、多くの方からアイラボ式HPV検査が支持されました。
これを機会にこれまでのHPV検査Kit003をFem HPV testとしてサービス内容を拡大しましたので、改めてその詳細をご報告致します。

New ! Fem HPV test とは

Fem は女性ですが、アイラボでは「優しい」の意味を込めました。

せっかく採取した貴重な検体を有効利用し、
女性が健康で活躍できる環境を整えることに貢献したいと思います。
通常のHPV検査に比べると、若干コストは上がってしまいますが、
検診という貴重な機にご理解を賜れれば幸いです。

Fem+ フェムプラス ~女性の健康と活躍を支援する展示会~
Femtech Tokyo/ 女性のウエルビーイング推進EXPO に出展

10月17日(木)から19日(土)10:00~17:00 まで「東京ビッグサイト東7ホール」にて
「Fem+ フェムプラス ~女性の健康と活躍を支援する展示会~ Femtech Tokyo/ 女性のウエルビーイング推進EXPOに出展することになりました。

株式会社アイ・ラボCytoSTD研究所は2002年に「女性特有の病気や悩みに対応できる検査会社」を立ち上げ、病院に行くのが「恥ずかしい」「忙しい」「面倒」な人にも自宅で気軽に検査ができる郵送検査の普及、電話やメールによる無料の悩み相談、女性のQOL向上を目的に腟内フローラチェックの提供、さらに先進国の中で最も遅れている子宮頸がんリテラシーを高める目的で男性用HPV検査キットを提供しています。

展示の主な内容を何回かに分けて紹介します。

こんな仕事をしています

私達の仕事は、まさにFemtech Labで、女性の健康とQOL向上に特化した検査機関です。
個人や会社・健康保険組合様を対象に「今の検診(検査)は恥ずかしい・忙しい・面倒と思う方に郵送による検査を提供しています。自分で採取した検体をポストに入れるだけで検査結果が分かるものです。
■ 女性にとって婦人科の敷居は高く、ついつい我慢して子宮頸がんや不妊症が手遅れになってしまう事がないように。
■ 仕事や子育てで、検診を受けなければと思ってもなかなか行けない、行く気になれない人のために。
■ 交通の便が悪く、自身で出向くのは困難な方や僻地に住んでいる方のために。
■ 特に心配な症状もないのにわざわざ出かけていく気になれない人に。

大阪の大成化工株式会社と共同で開発したセルソフトは、今年4月からアイラボの郵送検査に使われています。
HPV検査をはじめ婦人科感染症や細胞診検査など幅広い検査の検体採取器具です。
HPV検査の採取器具としての有効性が明らかになり、論文として掲載しました。
ネットから英論文と和訳された論文を見ることができます。
https://ilabo-cyto-std.com/cellsoft

産婦人科クリニックや病院の先生方には、細胞診はどこに出しても(依頼しても)同じではなく、可能な限り先生方の要望をかなえたいと考えています。
アイラボでは日本でLBC法が普及する前からLiquid Transport Cytology System(実用新案登録)で細胞診の受託検査を行っています。

自己採取法の欠点を十分に理解し利点を最大限に活用

検査キットはアイラボのHPで見てください。

少し専門的な話になりますが、自己採取法の利点からお話ししましょう。

【利点】
病院に行くのが恥ずかしい、忙しい、面倒、、、そんな人にとっては最高のデバイスです。
自宅で採取してポストに入れるだけですからね。
加藤式採取器具はおよそ400万本が使われ、医療事故が起こっていない安全性が担保された器具です。
セルソフトは加藤式の安全性や細胞捕捉能に優れている点はそのままにして、外筒を若干細くして恐怖感を減じ、素材を環境にやさしい植物由来に変えました。
加藤式・セルソフト共に自然に剥離して腟の奥に溜まった細胞と子宮腟部(子宮が膣内に出っ張った部分)を直接擦って細胞を採取するので大量の細胞が採取できます。
従って、婦人科感染症の検査はこれ一本採取するだけで大半の検査が可能になります。
例えば、細胞診、HPV検査、淋菌・クラミジア・トリコモナス・カンジダなどの感染症、腟内フローラや細菌性腟症の検査などが可能です。
検体の処理から顕微鏡の観察まで、十分な訓練を受けた細胞検査士が検査することで医師採取と同等の精度が得られます。

【欠点】
子宮体がんは検査の対象外です。早期に発見するのは困難な場合があります。
子宮頸部の奥に発生する子宮頸部腺がんも早期に発見できないこともあります。
■ 細胞診を目的とした場合、細胞成分が沢山採取されるため目的の異型細胞の数が相対的に少なくなるため、標本の作製や顕微鏡を観察する際、通常の標本(医師が採取したもの)より、より慎重に対応しないと、極端に検査精度が落ちてしまいます。従って、自己採取法の検体を受け入れる検査機関はそのことをに対する教育を、それを依頼する側も検査機関の対応をチェックすることが最も重要になります。

初期は異型細胞が検出できないこともあるが医師採取も同じ

左の列から説明すると、2008年の4月から2010年の10月まで調べたものです。
最初にASC-US(1:黄色)の細胞が検出されてからてからLSIL(2:オレンジ)が検出されたり、異型細胞が検出されない(NILM)になったりを繰り返します。おおむね90%のケースでHPVが自然にいなくなると言われています。私達はこのような時期を第一段階としています。
中央の列も最初は第一段階ですが、2011年2月の検査で初めてASC-H(HSILの存在が否定できない)の細胞が出ました。私達はASC-H(3:ピンク)の細胞が出た段階で第二段階の始まりとみています。このように第二段階は、NILM(異型な細胞がみられない)、ASC-US、LSIL、ASC-H、HSIL(中等度異形成や高度異形成、上皮内癌が含まれます)の細胞が出たり出なかったりする時期です。そして右の列のした1/3の様に、毎回ASC-H以上の異型細胞が出続けるようになったら第三段階としています。
先生方の判断にもよりますがASC-HやHSILの細胞がみられるようになると組織検査が行われ、円錐切除術やレーザー蒸散法による治療が行われます。
このように、第3段階になるまで何年もかかるのが子宮頸がんです。第一段階はその90%がHPVが自然に消失すると言われますが(私達が確認したことではありません)、残りの10%が第二段階に進んでいくので、長い期間定期的に細胞診で異常な細胞が出ていないかチェックする必要があります。しかし、NILMが続くと、仕事は忙しいし、とても面倒なので、もう大丈夫なのではないか? と勝手に判断し、定期検査を受けなくなってしまう人がいます。
せっかく検診でがんになる種を見つけたのにこれでは救える子宮も命もがんの思うつぼになってしまうのです。
こんな方、ひょっとして多いのではないか?とても心配しています。
前の表でも分かるように、第3段階に入ると自己採取された検体でも毎回異常な細胞が出るようになります(もちろんこれに当てはまらないケースもあると思いますが、)ので、忙しい方や面倒になってしまう方は、そんな時だけでも自己採取でチェックして頂きたいものです。セルフメディケーション(自分の健康は自分で守る)の考えがあれば、自分に最適なキットや検査機関を選ぶことができると思います。
また検査機関や検査キットを提供する側は、受診者がそれを判断できる十分な説明責任があります。

検査精度や効率、、、それも大切なことですが、優しさが一番

「椎名君、日本の女性にとって(私達のような)婦人科の敷居は高いんだよ。
おかしい? いつもと違う? と思ってもついつい我慢して手遅れになってしまうことが多いんだよ。
何とか自己採取による検診の精度が上がる様な方法を考えてくれないか」
、、、と言われた産婦人科医で細胞診専門医でもある故八田賢明先生の言葉は大変重いものがありました。
その一言でアイラボの今があるように思えます。
そうなんですよ。高度な知識や技術を持ち合わせていても本当の優しさがなければ、日本の子宮頸がん検診の受診率は上がらないと思います。
私達が自己採取にこだわり、どうしたら検査精度が上がるのか、この20年ずっと考え実践してきました。
【ポイント1】採取器具はお医者さんの代わりになるものですから、その選択を誤るとその先の検査に最善を尽くしても良い結果が得られるはずはありません。私達はこれまでの経験から画像左の加藤式採取器具を選びました。
【ポイント2】検体の処理方法の検討では、加藤先生が考案した検体の塗抹方法(検体をスライドガラスに塗る方法)は採取器具から直接塗抹する方法ですが、この方法だと大切な細胞が塗抹周辺に偏り、細胞が重なった部位の観察がしにくくなり、結果として異常な細胞を見落とす原因になります。私達は採取された細胞を全て保液中の中に洗い出し、遠心分離後の沈査を検体とし、すり合わせ法(2枚のガラスに均等に塗抹する方法)で標本を作製しました。この操作をすることで顕微鏡で観察しやすいきれいな標本が作製されます。
【ポイント3】は細胞検査士(顕微鏡を観察し異常な細胞を見つけ、その細胞がどの程度の異常かを判断する特殊臨床検査技師)によって診断されます。人による仕事ですので極めて責任の重い仕事になります。ポイント1、ポイント2の工程で最善の仕事をしてきてもポイント3で適切な仕事ができないと検査精度は著しく下がります。使命感が求められる作業になります。
このように自己採取細胞診は全ての工程に最善を尽くして初めて医師採取と同じ成績が期待される検査なのです。
加藤式採取法をこのように改善することで有効性を評価したのがこの論文(これは和訳したもの)です。
私達が経験した某検診機関で実際あったケースを紹介します。(下の表に関する説明です)
N社の担当者(臨床検査技師)から、「従業員の子宮頸がん検査をお願いしたいのですが、アイラボさんは加藤式のみを採用されているんですよね。」という確認の電話があり、翌年から従業員の子宮頸がん検診を受託しました。一方、N社は家族検診を某検診機関に委託していましたが、その理由も加藤式採取器具を採用していたからとの事でした。つまりN社の担当者は会社の事情で自己採取による検診を選ばざるをえなかった様ですが、それなら加藤式を採用している検診機関、検査会社を探したようです。
担当者は従業員そしてその家族のことを精一杯考えた末の決断であったと思います。
そして数年が経過したある時、某検診機関の最高責任者から一本の電話があり、「N社担当者から家族検診の子宮頸がん検査をアイラボさんにお願いできないかというのですが、どんなことか説明して頂きたいのですが」という内容でした。当時N社からはそのことに関した何の連絡もなかったので、急いで某検診機関の訪問させて頂きました。そして当社の加藤式採取器具による検査方法を説明させて頂きました。その会議の最後に、責任者の方は即決で、「それでは来年度から全ての子宮頸がん検査はアイラボさんにお願いします。」という返事を頂きました。
下の表を見るとその理由は一目瞭然です。
同じ加藤式での検査、毎年同じ受診者(母集団)でこれだけの差が出てしまっていたのです。
もちろん某検診機関は検査会社に委託していました。その検査会社はいつもと同じように(加藤式の通常の方法)検査をした結果です。自己採取検体を医師採取と同じように検査した結果です。

N社担当者(臨床検査技師)、某検診機関責任者(医師)共に優しさを感じた方々でした。
この表をよく見て頂けると、これまで述べてきたことが理解できると思います。
優しさが一番大事と言いましたが、そのためには検査に関わる労力は医師が採取した検体に比べると2倍も3倍もになるのです。
ある検査会社にお手伝いに行っていた時、異常な細胞が沢山存在するケースを「異型細胞はありません」と診断した検査士さんがいました。どうしてこんなことになってしまったのか理由を問うと「自己採取検体だからサッと診てしまいました」という回答が返ってきました。全く逆なのです。加藤式自己採取器具は正常な細胞も沢山採取されますので、相対的に異常な細胞は少なくなります。私達が細胞検査士資格認定試験を受けた頃は1枚の標本の中に異常な細胞が数個から5・6個しかない標本を一定の時間内で観察させ、的確に異常な細胞を拾い上げる試験がありましたが、自己採取検体を検査する時はまさにこの試験の様に“一つでも異常な細胞は見逃さないぞ”という思いの使命感が必要なのです。
細胞診という検査は、検体を機械にかければ自動的に結果が出てくるというものではありません。いくつもの工程を適正に行い、最終的には使命感をもって顕微鏡で観察する検査ですので、私達は自己採取検体を扱う細胞検査士を独自に再教育しています。
そしてそれを終了した細胞検査士に下のような修了書を渡しています。
細胞診検査とは、自己採取検体を扱うということは、こんなことを考えなくてはいけない検査なんです。
私達が細胞診を始めた頃、(50年も前の話で恐縮ですが)野田紀一郎先生(日本での子宮頸がん検診の先駆者)が、子宮頸がん検診を受ければ子宮頸がんで亡くなる人をゼロにすることができる(正確な表現ではないかも知れませんがそのような意味の言葉)ということをおっしゃっていました。当私はその言葉に感動し、今もそれを信じていますが、現実を冷静に見ると、残念ながら細胞診の信頼性はかなり揺らいできた感があります。2009年以降子宮頸がん検診の受診率を5年間で50%まで引き上げる目標を掲げ様々な団体を巻き込み、啓蒙活動が行われてきましたが、15年が経過しても未だにその目標には至っていません。
そんなこともあってか、今年からHPV検査が子宮頸がんガイドラインで推奨ランクAになりました。この検査は、子宮がんの原因になるハイリスク型HPVの感染があるかどうかを調べるものものです。細胞診は異常な細胞が出ているのか?そしてその細胞はどの程度の異常(LSIL、HSILなどの)かを調べる検査なので、内容はかなり異なります。次のテーマは「HPV検査単独法」について考えてみたいと思います。