腟内フローラ状態を知っておきたい

40代後半の方、カンジダ症や腟炎を繰り返し、マイコプラズマやウレアプラズマの感染の経験もある方が、一度腟内フローラの状態を知っておきたいということで検査を受けられました。
この様な悩みを抱える方は少なくありません。カンジダ症は、強いかゆみを伴うため、多くの場合婦人科を受診されますが、腟炎や細菌性腟症では、“おかしい” “婦人科を受診すべきか?” と思いつつもそのままにしてしまうケースは少なくないと思います。
ましてやマイコプラズマやウレアプラズマの検査まで受けられる人はさらに少ないと思います。
そんな悩みを抱える人は、この方の様に一度は腟内の状況を知っておかれることは大切だと思います。

典型的な細菌性腟症の状態です

白血球の増加はなく腟内はとてもきれいです。
しかし、拡大を上げた写真を見ても乳酸菌はほとんど見られません。
写真の中央には腟ガルドネラ菌が群がった細胞(クルーセル)が見られます。
細菌性腟症は炎症(白血球の増加)を伴わないことが特徴の一つですので、この症例は典型例と言えます。
従って、腟内フローラチェックの評価としては「乱れている」ということになります。
長年細菌性腟症と向き合ってきた私の結論は、この世代における原因の一つは入浴ではないかと考えます。
30代に少なくなる傾向は、子育て時代になると20代に比べて性行動が穏やかになり、腟内フローラが安定するのではないかと考えます。しかし、40代後半から50代で増加する一因は性行動以外に、入浴が関係している可能性を指摘したいと思います。
入浴の際にお湯が腟内に入ることで、腟洗浄を毎日行っている状況になってはいないだろうか?
フラジール等で治療した後はしばらくシャワーを利用してみてはどうか?
細菌性腟症は性感染症ではありませんので、医師の側でもそれほど重要ししていないようです。私が細胞診の報告書に「細菌性腟症が疑われます」と記載しても、どれだけ対応して頂けるのか不明です。現実的には「そのような報告は必要ない」という検診機関もありますし、「わからないこと」や「めんどうなこと」はあえて関与しないというような対応は少なくありません。「臭いやオリモノでの悩みはないか」位いは伝えてあげたい気がします。


淋菌/クラミジアの検査でも

郵送検査は基本的には医師が関与しない検査です。
なので検査を提供する側としては、検査前の相談、適切な検査キットの選び方、検査の実際、そして結果の報告方法、さらに検査後の相談窓口等々、考慮すべきことは多岐にわたります。
その中で、Drシイナラボ(アイラボ)が最も重視しているのが、検体の適否評価です。
本来なら、病院やクリニックを受診し、必要に応じて医師が検体を採取しますので、私達は適正に採取されていることを前提で検査します。しかし、郵送検査の場合、検査を受ける人が自身で採取するわけですから、送られてきた検体が検査に適しているかどうかをチェックすることが大前提となります。
アイラボでは、到着したすべての検体について検体の適否判定を行っています。
以前こんなことがありました。
男性の方から尿道の淋菌・クラミジアの感染を調べる検体が届きました。
いつものように、特別な染色をした標本を顕微鏡で観察すると、そこにはがん細胞がたくさん見られたのです。
検査を依頼した方も、私達にとっても全く予期せぬことが起こったわけですが、実はこのようなことは少なくありません。今回は、女性の方で腟内の淋菌とクラミジアの検査を行ったケースを紹介します。

こんな細胞が出現!

左(上)の写真は弱拡大ですが、写真の中央に気になる細胞があります。
右(下)の拡大を上げた写真ではオレンジ色に染まる核の大きな細胞が見られます。
私達は、このような細胞が見られた時は「LSIL」か「ASC-US」で迷います。
しかし、この度はASC-US相当と考えましたが、検査依頼者が淋菌とクラミジアの感染があるかどうかを知りたいわけですので、「異型細胞も見られますので、病院への受診、または子宮頸がん検査の追加検査をお勧めいたします。」として報告しました。
でも、病院やクリニックを受診して精密検査を受けてくれる方、実はそれほど多くないんです。
せっかく子宮頸がん検診を受けて、ASC-USやLSILと診断されても医療機関を受診しない人がいるんです。
何のために「検診」を受けたのか、何のために高いお金をかけての「郵送検査」をしたのかよくわかりません。
セルフメディケーション、結果的には淋菌やクラミジアの感染はなかったのですが、子宮頸がんに関係があるるHPVの感染が疑われたのです。ここからは自分で自分を守る作業です。頑張ってね。

綿棒採取の簡易キットにもこんな細胞が!

Dr シイナラボ(アイラボ)の検査キットの中には、コストパフォーマンスを考えた~シンプルキット~があります。綿棒で採取しますので、検査精度が著しく低くなるため「子宮頸がん検査」には使えません。
淋菌、クラミジア、トリコモナス、カンジダ、細菌性腟症、膣炎の有無を調べる「おりもの&臭いの検査」にもこの~シンプルキット~があり、定期的に検査が必要な方が多く利用されています。
アイラボでは、お受けした全ての検体を、特別な標本を作製して「適切に採取されているか」チェックしています。しかしそんな標本でもびっくりする細胞が目に飛び込んでくることがあるんです。

この段階でHPV感染が明白!

弱拡大では、白血球の増加はなく、とてもきれいな腟内です。
しかし、写真の中央にはオレンジ色とグリーンに染まる(多染性)細胞が見られます。
さらのこの細胞には複数の核が存在(多核)します。
細胞の多染性も多核もHPV感染の特徴なんです。
だからこの写真をもって“LSIL=軽度異型扁平上皮内病変(軽度異形成)”と診断できるのです。
このように、HPVの感染が明らかでLSILと診断された時、感染しているHPVの型を調べておくことで、感染が一時的か持続しているかを知ることが出来ます。またより危険なHPVなのかどうかも知ることが出来ます。(HPV検査の中には16型、18型、その他に分けて報告してくれる検査もあります)

このケースはたまたま綿棒で採取してこのような細胞が出てきたわけですので、“幸運”な例です。
これに満足しないで、この際しっかりと検査をしておくことが大切です。
婦人科を受診して子宮の入口(子宮頸部)をしっかり検査しておきましょう。
受診できない方は、「最新の子宮頸がん検査」だけでも受けておきましょう。
セルフメディケーション、ご自分の意志で「おりもの&臭いの検査」を受けた結果、異型細胞が見つかってしまった訳ですが、ここで面倒くさがらず、せっかく見つかったのですから、いずれかの方法で今の状況をチェックしてくださいね。

炎症や傷がつくと修復されます

よほど大きなケガでなければ、いつの間にか元通りになっています。
これは組織修復という機能で、皮膚や粘膜では絶えず起こっています。
例えば女性性器の場合、腟は皮膚と同じ物理的刺激にも強い重層扁平上皮でおおわれていますが、子宮の入り口(子宮頸部)から奥(子宮内膜)に向かっては粘液を分泌する一層の円柱上皮という組織でおおわれています。また、子宮頸部の円柱上皮が腟の中にめくれる(外反)とそこには扁平上皮化生という組織ができます。これら組織は物理的刺激や腟炎などによって傷つけられることがあります。
そんな時に細胞を採取すると組織修復細胞が見られます。

これは円柱上皮を修復していた細胞です

傷口の周りから中心に向けてあらゆる方向から細胞がシートの様に増え、素早く傷の表面を覆っていきます。
円柱上皮、重層扁平上皮、扁平上皮化生それぞれ修復細胞の形態(顔つき)は若干異なりますが、これら細胞は円柱上皮の修復細胞と思われます。
右(下)の細胞を見ると出来立てほやほやの柔らかそうな感じがします。
しかし、核は大きく生き生きしていますので、時にがん細胞との鑑別が難しいこともありますが、細胞検査士の資格を持つ人は間違えることはないと思います。
感染症などで強い腟炎がある時、細胞診や組織検査をした後、避妊具を装着している人などで見られます。
しかし、子宮頸がん関連病変ではないのでこの細胞が出ていても診断は「NILM」です。

円錐切除後嫌な臭い続きませんか?

高度異形成や上皮内癌が疑われるケースに円錐切除術という方法で病巣だけを取り除く治療が行われます。
当然のことですが、治療後の感染予防のために腟内には抗生物質が投与されます。
そのため、腟内正常細菌叢(腟内で複数の細菌がバランスを保って環境を守っている状況)が元の状態になるまでにはかなりの時間を要すことは想像できますが、治療後1年以上経過したケースでもかなりの頻度で細菌性腟症の状態が持続し、腟内フローラ(乳酸菌の仲間)が回復していない症例に遭遇します。
このことについて、婦人科の先生に質問してみると、「性生活の復帰に伴い、元の状態(細菌性腟症)に戻ってしまうのではないか」との回答が来ました。つまり、パートナーから腟ガルドネラ菌がうつるという考え方です。
その詳細は分かりませんが、治療後細菌性腟症(臭い)で悩まれていることはありませんか?
最近ちょっと気になっています。

術後一年4ヵ月経過後の細胞像

左(上)の弱拡大では、青色に染まりゴマ粒のように見える白血球がたくさん存在します。
若干腟炎の状態で、オリモノが黄色味を帯びていることが推測されます。
しかし、本人にとっては、前がん病変(高度異形成や上皮内癌)を治療しているので、今の状態は「問題ない」と思っているかも知れません。
しかし、右(下)の写真のように、乳酸菌はほとんど見られず、細菌性腟症の代名詞的なClue cell(クルーセル)も見られます。
写真で示すような状況で「臭いやおりものは気にならない」と答える人は少ないと思います。
Dr シイナラボ(アイラボ)の郵送検査キットの中で「腟内フローラチェック」や「おりもの&臭いの検査」を依頼される方の80%近くは、“臭いが気になる”ようです。
少しづつですが、おりものや臭いについて“気にされる女性”が増えてきたように思えます。
かなり昔の話になりますが、杏林大学で教鞭をとっている時、恩師の偉い先生が、「今どんな研究をしているのかね?」と聞いてきたことがありました。すかさず「女性のにおいに関する研究です」と答えると、帰ってきた言葉が「そんな臭いを消すようなつまらん研究はやめろ!」でした。心の中で「先生、分かってんのかな?」と思いつつ、とっさに出た言葉は「先生が思っていらっしゃるような“ヘロモン的”な臭いではありません。不快に感じる臭いの研究です。」と答えました。、、、でも理解はしていただけなかったようです。
女性のQOLの向上をお手伝いする研究なのに!!!

私達はASC-USとします

ASC-USはアスカスと言い、「意義不明な異型細胞」が出現しているという意味です。
つまり、由来がはっきりしないが、NILM「上皮異常は認めない(陰性)」でもなく、明らかにLSIL 「軽度扁平上皮内病変(軽度異形成)」と診断できる所見でもない時に分類されます。

少し専門すぎて分かりにくいと思いますが、子宮頸がん細胞診検査という目的からすれば、「HPV感染と断定できないが、HPV感染を否定できない細胞が見られた。」という意味です。

するとこのような細胞が出現!

左(上)のオレンジ色に染まる細胞は比較的大きな細胞で、周りに見られる正常の中層細胞に比べると、核が大きく、やや濃く染まっています。従ってNILMではないのですが、LSILとするには核の所見が乏しいのです。つまり、どっちつかずの変な細胞なんで「意義不明な異型細胞」とします。右(下)の細胞も正常の細胞に比べると核が大きくなっています。「お前はどこから来たのかい?」、、、そんな細胞なので、こちらも「意義不明な異型細胞」と私達は判断し、ASC-USと診断します。
ASC-USと診断された時は「HPV検査」で子宮頸がんと関係がある危険なHPV(ハイリスク型HPV)の感染があるかどうかを調べることになります。
ハイリスク型HPVは国際的に13種(16,18,31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,68)が知られています。
HPV検査は基本的に13種の中のいずれかの感染があるかどうかを調べる検査で、感染している個々の型を調べる検査ではありません。測定機種によっては最も危険な16型、次いで危険な18型、その他に分けて報告されるものがあります。また、測定方法によっては検出感度が異なったり、検出できない型が存在することもあります。
さらに、私たちの経験からこれら13種以外の型(例えば82型など)の感染でもHSIL相当の異常な細胞が検出されていますので、HPV検査の信頼度はおおむね95%程と考えられています。
それでは半世紀以上もの長い間子宮頸がん検診に採用された細胞診検査の精度はどうなんでしょう?
日本の子宮頸がん検診の草分けのお一人でもある野田紀一郎先生は「細胞診で子宮頸がんは100%防げる」と言われておりましたが、私自身も全く同感でこの仕事を続けてまいりました。しかし、我が国の子宮頸がん検診の受診率は他の先進国に比べ最も低く、現在でも50%を超えていないのです。そして細胞診の検査精度については私が思っているのとは異なり、80%とも70%とも言われているのが現状です。このことについてはまた別の機会にお話ししたいと思いますが、とても残念な評価です。
いずれにしても、HPV検査と細胞診検査の精度は100%ではありませんので、私達は両方の検査を同時に実施する方法を提案しています。
セルフメディケーション、ASC-USと診断されたら「HPV検査」を受けましょう。
検診でASC-USと診断されたら、残った検体で「HPV検査」が出来ます。これは保険が適用されますので必ず受けましょう。保険の適用にはなりませんが、自己採取で「HPV検査」で子宮頸がんと関係がある危険なHPV(ハイリスク型HPV)の感染があるかどうかを調べることも可能ですす。
私達が実施した外国製のエヴァリンブラシという採取器具と加藤式器具の改良型(セルソフト)との比較調査ではHPVの検出感度はほとんど変わりません。

細菌性腟症例はASC-US/LSILに注意!

Dr シイナラボ(アイラボ)の郵送検査キットの中には「おりもの&臭いの検査(シンプルキット)」があります。このキットはコストを安く抑える目的で綿棒による採取を行うため、その他の検査(例えば子宮頸がん細胞診検査など)の追加検査はできません。
検査内容は、淋菌、クラミジア、トリコモナス、細菌性腟症、腟炎ですが、しばしば異型細胞も発見できます。
このケースはClue cellが見られ、細菌性腟症が疑われますので、綿棒採取検体ではありますが、異型細胞の有無をしっかりチェックします。

するとこのような細胞が出現!

弱拡大では、白血球の増加はなく、比較的きれいな背景です。
しかし、拡大を上げると、標本背景には乳酸菌はなく、腟ガルドネラ菌が見られます。
そして、オレンジ色に染まる細胞の核は大きくなり、クロマチンの増加(核の染まりがやや濃くなっている)が見られます。ASC-USまたはLSILと診断される細胞です。
ASC-USの定義は(意義不明な異型細胞=由来がはっきりしない細胞)ですので、観察する細胞検査士によってはある程度の幅があっても仕方のない分類です。しかし、なんだかよく分からない細胞としつつも、(HPV感染があるかも知れない?)ので、HPV検査で確認することになっています。つまり、大切なことはHPV感染を疑わせる所見が見られたらASU-US、HPV感染が明らかな場合はLSILと診断します。
私達はこの細胞を見ると“限りなくHPV感染を疑うもののLSILとするには若干所見に乏しいため、ASC-USとします”がLSILと診断しても「よし」とします。
細胞診断学は推定診断ですので、それだけの幅があっても「よし」と考えています。
前にも述べましたように、この検体はシンプルキットで採取されましたので、残った検体で他の検査を追加することができません。
従って、婦人科を受診して細胞診検査を受けるか、アイラボのキットであれば「子宮頸がん細胞診検査」または「最新の子宮頸がん検査(子宮頸がん細胞診検査+HPV検査)」の追加検査が望まれます。
セルフメディケーション、ご自分の意志で「おりもの&臭いの検査」を受けた結果、異型細胞が見つかってしまった訳ですが、ここで面倒くさがらず、せっかく見つかったのですから、いずれかの方法で今の状況をチェックしてくださいね。

膣の中にヘルペスが感染しても症状は

ヘルペス、正式には単純性ヘルペスウイルス感染症です。
唇にできるのがⅠ型、性器にできるのがⅡ型となっています。
しかし、性行為で感染することが多いため、Ⅰ型・Ⅱ型を分ける意味はあまりありません。
つまり、性交だけでなく、キスやオーラルセックスでもうつります。
初めてこのウイルスに感染した時は強い痛みを伴い、特に外陰部に感染した時は歩行困難ななることもあります。しかしこのケースは、外陰部には特にヘルペスを疑う所見は見られないものの、かゆみとおりものが増えたことで婦人科を受診し、子宮頸部細胞診検査を実施しました。

多核細胞が出現しています

子宮頸部の細胞診検査は、子宮頸がんに関係した細胞だけでなく、いろいろな感染症に伴う変化も観察できます。ヘルペス感染もその一つで、特徴的な所見がみられるケースでは細胞診での診断が可能です。
その特徴的な所見とは
1)(写真のような)多核形成。
一つの細胞の中にいくつもの核がみられるもので、ヘルペス以外にもHPVの感染や放射線治療後、がんなどで同じような所見が見られます。しかし、ヘルペスの場合は一見多核に見えますが、実は、いくつかの細胞が融合してあたかも多核の様に見えるだけなのです。
2)核のスリガラス様構造。通常、細胞の核は細かい顆粒状(クロマチン)を呈していますが、核の中でウイルスが増殖すると、(写真の様に)核内は無構造化します。このことをスリガラス様と表現します。つまり、ウイルスが核の中で増えていることを意味します。
3)核の鋳型状配列。細胞融合により(写真の様に)核がお互いに押し合っているように見られる所見です。
4)核辺縁の不規則な肥厚。クロマチンが核辺縁に押しやられ、(写真の様に)核膜が厚い部分と薄い部分がみられる現象です。
5)好酸性核内封入体。初めての感染には見られない所見で(このケースです))、再発時の細胞にみられる特徴です。
このケースの様に、腟内にのみ感染がみられる時は、特徴的な症状はなく、黄色いおりものが多くなるなど、クラミジア、淋菌、トリコモナスなどと同じような症状になることが少なくありません。しかし、このケースの様に白血球の増加(腟炎)が乏しい時は、婦人科の先生も再発に気付かないため、診断できない可能があります。
しかし、自分では“いつもと違う?” “何かおかしい?” と感じたので、婦人科を受診しましたが、それは正解でしたね。
おかしいと思ったらそのままにしないことです。セルフメディケーション。自分の健康は自分だけしか守れません。

乳酸菌の仲間がいっぱい!

私は昨日が75歳の誕生日でした。この年まで好きな仕事を続けていられること、皆さんに感謝感謝の思いで一杯です。
今でも、毎日30件ほどの検査をしています。
今日も嬉しい画像に遭遇しました。

乳酸菌は条件が良ければいっぱい増えます

最近、このようにたくさんの乳酸菌の仲間が見られるのが少なくなっている気がします。ですから、ついつい嬉しくなって皆さんにも見せたくなってしまいました。
せっかくの機会ですから乳酸菌を覚えてくださいね。腟の中で見られる細菌では大きいのが特徴で、細長い針のように見えます。専門的には桿菌(かんきん)と言います。

いつも、乳酸菌の仲間と表現しますが、単一な種類ではなく、複数存在しますのでそのように表現しています。
腟内の条件が整えば、このようにたくさん増える事ができるのです。
細胞診を本格的に初めて50年以上になりますが、なんとなく腟内フローラに変化がみられるように思えてなりません。50年前はもっとたくさん乳酸菌が腟内を支配していた気がしますが、最近は腟ガルドネラ菌がえばっている気がしてなりません。この半世紀の間に何が起こっているのだろうか?
軽度異形成やASC-USと診断されるケースに細菌性腟症が合併することも何となく多い気がするのは私だけなのかな?最近そんなことを思っています。
腟の中は“乳酸菌の仲間が守っている”、、、と考えるのが一般的ですが、腟ガルドネラ菌も乳酸菌ほどではないがグリコーゲンを分解して酸を作ります。“ひょっとして、腟ガルドネラ菌も腟内を守っているのかも知れない?”、、、なんて思うこともあります。
腟内を乳酸菌が支配するとPhは3~3.5と強い酸性に傾きますが、腟ガルドネラ菌が支配するようになると
4~4.5程になると言われます。それが臭いと関係あるのか???、、、そんなことを考えていると眠れなくなります。

こんな状況をそのままにしてはいけません

Drシイナラボ(アイラボ)に子宮頸がん検査とHPVタイピング検査の依頼がありました。
タイピング検査とは、感染しているHPVの型を調べる検査ですので、HPVの感染が明らかである人か、感染の可能性が高い人が選ぶ検査になります。

この方の子宮頸がん細胞診検査の結果はNILMでHPVタイピング検査でも13種のハイリスク型HPVの感染は見られませんでした。

その時の顕微鏡をのぞくと!

弱拡大の写真のように、顕微鏡をのぞくと全面が白血球だらけ! ひどい腟炎の状態でした。
拡大を上げた写真では、背景にたくさんの膣ガルドネラ菌も見られ、臭いもおりものも大変な状況ではなかったのではないかと推測されます。多分ご自身は“あまりにもおりものの異常が気になって、子宮頸がんではないか???” と思ったのではないかと思います。
こんなにひどい状況でも、本人にとってはこれって「病気?」なのか「そうでない?」のか分からないのです。
なので、「がん?」{性病?」{何なの?」、、、分からないままそのままになってしまうことも少なくないのです。
この人は知り合いの方から、「がんの検査を受けたほうが良いのでは?」と忠告され、アイラボの検査を受けたようです。
セルフメディケーションとは「自分の健康は自分の責任で守る」です。
検査キットを選ぼうとしてもなかなか思うようにはいきません。
だから、先ずは、日本性感染症学会認定士である私達に相談してください。
いつもと違う。これは変だ?って感じるのは貴女だけです。 あなたの健康やQOLの向上にチャレンジできるのは貴女だけです。