CIN 1で3ヶ月に一度検査しているんですけど、それって何?

趣味の会で初めてお会いした方に名刺を差し上げましたところ、アイラボさんてどんなお仕事をされていますか?ということで、『子宮頸がんやおりもの検査などをしています』といって、簡単な説明をしました。すると、「私、検診でCINの1と言われ、3ヶ月に一度婦人科を受診していますが、これって(CINの1)どういうことなのか良く分からないんですけど?」婦人科の先生はどのように説明してくれましたかと尋ねると、「何か専門的な説明はしてくれたのですが、私自身全く理解していません。」HPVというウイルスについても説明はなかったんですか?と聞くと、「全くありません」、、、と言うのです。
子宮頸がんとHPVの関係については、HPVワクチンのこともあるし、大半の国民は「知っている」と思い込んでいましたが、お話を聞いている時の表情から、ご自分の(CIN 1 )がHPV感染が原因であることは全く知らなかったようです。お医者さんも、そんなこと当然知っていると思い説明はされなかったのでしょうか?私のブログを見ている皆さんはそんなことないですよね。
立て続けにその方は「HPVの感染って、どうして起こるんですか?」と聞いてきました。
このような方に説明する時は、(その後、パートナーやご主人さんとの対応のことを考えると)一瞬緊張しますが、正直にお話しさせて頂いています。そして、感染しても全く症状がないのでいつ感染したのか全く分からない事多くの女性(日本ではなく欧米の調査では70%)は生涯一度は感染すると言われている事を伝え、だから子宮頸がん検診は世界中で行われている事、トラブルにならないでくださいね、と伝えるようにしています。
このようなことももあり、最近男性のHPV検査が増えています。その理由として、“大切な人に感染させたくないと思う(風俗利用経験があったり、複数の女性とお付き合いの経験がある)男性”、“お付き合いしてもいいけどHPV感染が心配なのでHPV検査を受けてくださいという女性”が増えているようです。

またまた話が横道にそれてしまいました。

この機会にCIN 1について説明しておきましょうね。
CIN 1とはCervical Intraepithelial Neoplasia の略で、日本語では子宮頸部上皮内腫瘍という意味の病理学的表現です。子宮頸がん検診は細胞診という方法で行われますので、(病理学的表現ではなく)
LSIL(Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion) 軽度扁平上皮内病変(軽度異形成)と表現されます。
軽度異形成とは、クラミジアや淋菌と同じようにHPVというウイルスの感染症という位置付けになります。
つまり、この方の現状は、HPV(ヒトパピロマウイルス)という子宮頸がんに関係のあるウイルスが感染しているという意味になります。(この写真は当人のものではありません)

アイラボの報告書で(CIN 1=LSIL)はどんな状態なのか?

この写真は、アイラボの郵送検査や健康保険組合から依頼された方に使用している細胞診の報告書です。一般の方にも理解して頂けるように若干表現を変えています。そしてもし異常が見られた場合、日本中どこの婦人科を受診されても先生方にご理解いただけるように診断の根拠となる細胞の写真を添付しています。
報告書の内容をもう少し個別に説明しましょう。。
この方が診断された「CIN 1」つまり軽度異形成(LSIL)は、子宮頸がん関連病変の中の入り口に相当する段階です。前にも述べたように、“HPVというウイルスの感染がある”という段階で、前がん病変ではありません。しかし、HSIL (高度扁平上皮内病変)の中の中等度異形成になると、人の細胞の遺伝子の中にHPVの遺伝子が組み込まれた状態になり、LSILの感染症から腫瘍の性格を持つ細胞へと性格が変わります。その意味では中等度異形成・高度異形成は前癌病変と言えます。
“ASC-HはHSILの存在が否定できない”時に使われる分類です。

子宮頸部のHPV感染については、その90%が免疫力によって自然に排除されると言われてります。
しかし、残りの10%が感染し続け(持続感染)中等度異形成や高度異形成に進みますので、LSILと診断された場合は定期的追跡検査が必要になります。
最近では、感染しているウイルスの型を調べることも可能になり、アイラボでは「HPVタイピング検査〈ハイリスク13種)」Kit005で調べることができます。
検診で、LSILと診断された時には婦人科を受診することになります。そしてもう一度細胞診検査を受けます。その際は「子宮頸管を含め」検査して頂くことを特に強調しています。その理由は、子宮の入り口から少し奥に入ったところに発生する“子宮頸部腺がん”を見逃さないためです。特に自己採取法で採取されたケースでは十分な細胞が採取されていない可能性があるので、この点を強調しています。(医師採取においても頸管内の細胞が採取されないこともあります)
再検査の結果“NILM”になることは少なくありません。採取の仕方がまずいことや性周期によって細胞が取れにくいことがあるためでです。確かにLSILの90%はいずれNILMになりますが、HPVが排除されたからと考えるのは誤りです。主治医の指示に従って定期的な検査が必要です。
細胞診とは別に、“HPV検査でウイルスがいなくなったかどうかを調べることも可能です。”

追跡検査は面倒がらずに受けましょう。

検診でHPVの感染を見つけたのですから、それを無駄にしないためにも追跡検査は面倒がらずに受けてくださいね。
追跡検査は通常細胞診で行います。LSILからNILMになることは、“異常な細胞がなくなった”ということですが、“HPVが排除された”わけではありません。排除されたかどうかはHPV検査の方が精度が良いと思います。
追跡検査のもう一つの意義はLSILより進行したHSILの細胞に代わっていないか?を見るためです。そのためには細胞診は欠かせない検査になります。

婦人科医からの細胞診依頼書にBV susp.の記載

“子宮頸がん細胞診検査で細菌性腟症が疑われても報告書にはその旨を記載しないで下さいということが検査機関内の取り決めになっていることがあります。
子宮頸がん細胞診検査が本来の目的ですので、“それは当然かも知れませんが、カンジダやトリコモナスは報告されるのに細菌性腟症はなぜ?”という思いで日々矛盾を感じています。
現に、婦人科の先生方からの検査依頼書に細菌性腟症(bacterial vaginosis=BV)に関する記載があること自体極めてまれなことです。
この度そんなまれなケースを経験しました。検査依頼書にはASC-USのfollow-upHPV検査(-)に加え、BV susp.とありました。こんな単純なことですが、私にとってはとても嬉しい出来事です。

私が細菌性腟症の研究を始めるきっかけになったのは子宮頸がん検診の検査依頼書に“におい⊕”と記載する女医さんがおりました。その先生に「先生が記載されるにおい⊕には何か意味がございますか?」と質問したことがあります。その先生は「父が診察の時に気づいたことはメモをするようにと言われていますので、“少し臭いが気になる患者さんにはそう記載しています。」という返事が返ってきました。”

子宮頸がん細胞診標本の中に細菌性腟症が疑われる所見が見られても、婦人科医はもとより患者さんにもこの情報は伝わりませんので、当然治療もされません。臭いは気にならない方もいますので、すべてが治療の対象ではないのですが、『細菌性腟症が疑われます(BV susupect)』の結果をもらった先生は『治療しますか?』と訪ねてあげることが出来ます。
今回は検査の責任者に『お医者さんが検査依頼書に“BV susp.” と記載しているのですから、是非報告書に反映させてください』とお願いしました。
今回検査した標本の中にはASC-USに相当する異型細胞は見られなかったのですが、典型的な細菌性腟症が疑われる所見が見られます。
やや紺色に染まっているもやもやが腟ガルドネラ菌の塊です。もちろん明らかな乳酸菌は見られません。
このようなほぼ典型的なケースについては多くの細胞検査士の方も診断に迷うことはないと思います。

細胞診検査を受けてもBVの報告は期待できないことが多いかも?

日本人は検診を受けるのが苦手な国民かも知れません。
『なんだか最近オリモノや臭いが気になるので今年は検診を受けてみよう。』そんな方、少なくないかも知れません。しかし、前述のように、子宮頸がん関連病変についての“異常”は見られなく安心できても、気になっていたオリモノや臭いの原因は“分からないまま”で終わってしまいます。
BVは病気というよりは腟内フローラの乱れによるものですから、“絶対に治さなくてはいけない病気ではないかも知れません”が、少なくてもQOLの面からは気になる方が多いのではないかと思います。

気になる方は是非ご相談ください

なぜかというと、細菌性腟症の原因は様々です。
勿論、腟内洗浄が原因で腟内フローラの環境がくるってしまう方が多いと思いますが、それだけではありません。
10代後半から20代に多く、30代でいったん減少し、40代後半からまた増える傾向があります。私の経験に基づく解釈では“10~20代は活発な性行動”、“30代は子育て中で性行動が安定”、40代以降に増加する原因は様々でそのひとつには入浴による(思いもしない腟洗浄)を考えています。

ご相談はお気軽に!
042-652-0750で椎名が承ります。
月曜日、土曜日は休みです。
水木金の午後はおおむねOKです。


検査を希望される方は
1)おりものが黄色い方は「おりもの&臭いの検査」
2)臭いだけが心配な方は「腟内フローラチェック」

10代でも勇気を出して検査してよかった。

子宮頸がん検診は20歳から?そうですかね。
私は“セックスを始めたら子宮頸がん検診は定期的に”だと思います。
今回は10代後半の女の子についてお話しします。
『おりものがだんだん多くなってきた。でも、病院に行く勇気はない。(理由は)何と言っていいのか分からないから』と言います。そこで病院には行かなくても郵送で検査できる『おりもの&臭いの検査』を選んだと言います。 ちなみにこのキットで調べられるのは淋菌、クラミジア、細菌性腟症、トリコモナス、カンジダ、それに腟炎です。

早速顕微鏡を見ましょう (今回は4枚の写真を見て頂きます)
この検査では、検体が適正に採取されているか? トリコモナスやカンジダはいないか、さらに細菌性腟症が疑われる所見がないか?腟炎を起こしているか?について顕微鏡で観察できる標本を作製します。
(淋菌とクラミジアは他の遺伝子検査に廻します)
この写真は皆さんにおなじみの細菌性腟症の典型的な所見です。
この方が勇気を出して検査してみようと思ったのは細菌性腟症が原因でしたね。
その他にも白血球増加していますので、腟炎を伴っているようです。この写真の中にはトリコモナスやカンジダは見られませんが、淋菌やクラミジアなど、その他の感染症もチェックしておきたいところですね。
他の場所を見ても、細菌性腟症と腟炎を疑う所見は同じですが、写真の中央には核がいくつもあるように見える(異常な)細胞を認めます。HPVの感染による変化なのかな?、、、と考えます。
他の場所には、細胞の大きさに比べ核の占める割合がとても大きな(異常な)細胞もみられます。
核の構造がちょっとおかしく、やはり核の中で何かが起こっているのかな?、、、HPVの感染に伴う変化なのかな?、、、16型の感染があるのかな?、、、中等度異形成(CIN2)程度の病変があるのかな?、、、そんなことを考えながら見ています。
別の場所にはこんな細胞もみられます。
やはり、腟炎だけではこのような細胞は見られないよな?、、、核が2つ存在しますので、やはりHPVの関与を除外することはできない、かといって、典型的な中等度異形成の形態とも若干異なるし、、、(とても迷うところです)、、、(そんなことで)私はASC-H(HSILの存在も否定できない)と考えました。

オリモノや臭いの後ろに異形成(HPV感染に伴う病変)が!

『おりもの&臭いの検査』には本来子宮頸がん細胞診検査は含まれてはいませんが、『おりもの&臭いの検査』を進めている段階でこのような異型細胞が発見されました。このような場合、アイラボでは『今回は通常子宮頸がん細胞診検査のために作製する標本の1/10程の細胞を観察しただけですので、残った検体で「子宮頸がん細胞診検査」「HPV検査」を追加することが可能です。』との報告をします。それらを同時に検査する「最新の子宮頸がん検査」を選ぶこともできます。当然このような追加検査をせずに、婦人科を受診することも可能です。

こうしている間に、淋菌とクラミジアの検査結果が出てきました。
結果は、クラミジアの感染もありました。

勇気を出して検査してよかったね

セルフメディケーション!

病気の早期発見早期治療こそがすべての幸せに通じます。
せっかく検査してこれだけのことが分かったので、必ず婦人科を受診してくださいね

優しい夫からの一言

2022.9.30の記事 「旦那からの一言で命が」という記事を紹介しました。そのご夫婦とはコロナの影響で3年以上もお会いできなかったのですが、先月やっと会うことが出来ました。
『お前最近臭いが強くなったぞ、子宮頸がん検診を受けろよ』と旦那に言われた話です。もう十年以上前の話ですが、私がそのご夫婦のお宅に招待された折にたまたまお二人の前で「臭いの話」をしたことがきっかけだそうです。
そのご主人は昨年肺がんで他界されたと聞き、肺がんについての話もしておけばよかったと後悔しています。

いくらご夫婦であっても、『お前臭いよ』、、、とはなかなか言えないものです。
私が細菌性腟症の研究を始めた頃「男が黙って去っていく病気」と表現した研究者(確かヨーロッパの方であったと思います)がいましたが、面と向かってはなかなか言えないもんです。

でも最近、ご主人に臭いを指摘された方のお話を聞きました。
自分でもここ数年臭いが気になってはいたので、婦人科を受診していろいろ調べて頂いたのですが、結果は「なにも異常なし」であったそうです。

それでは結果を見ることにしましょう
腟内は白血球がほとんど見られず、とてもきれいな状態に見えます。
しかし、中央にはClue cell(クルーセル)が見られ、腟ガルドネラ菌が腟内を支配しています
細菌性腟症の典型的な所見ですが、細胞診の仕事をしていても、検査機関によっては「細菌性腟症が疑われます」との記載ができないところもあります。
従って、お医者さんや患者さんには伝わりませんので、たとえ検査をしても「特に異常はありません」という回答いなります。トリコモナスやカンジダが見られる場合はその旨を記載するのになぜ?、、、ですかね。

さらに拡大を上げてみましょう
乳酸菌は全くなく腟ガルドネラ菌だらけですね。
このように、典型的な細菌性腟症は白血球の増加(腟炎)は伴わないのです。
白血球が増えないと言うことは、腟ガルドネラ菌が増えても“異常事態との認識はない”のかも知れません。更には、乳酸菌がいなくなってしまったので“代わりに腟内を守っている”ようにも思います。

困るのは、“嫌な臭い”なのです。

子宮頸がんでなくてよかったですね。

いつも臭いの話をしますが、臭いの原因は子宮頸がんや細菌性腟症に限ったことではありません。
届いた検体のフタを開けた瞬間強烈な臭いに見舞われ、部屋中の窓を開けることもありますが、トリコモナスの感染であったり、カンジダ症であったり、淋病であったりもします。
なので、おかしいと思った時には先ずはチェックしてほしいのです。
アイラボが開業して始めて世に送り出したキットは『婦人科トータルセルフチェック』です。子宮頸がん、細菌性腟症、トリコモナス、淋菌、クラミジア、カンジダ、腟炎と言った臭いに関係のある全ての病気を丸ごと入れたキットです。

婦人科の敷居は高い、誰でもそうです。
私の恩師も婦人科医ですが、『椎名君、女性はお産以外に私達の所へは来たくないんだよ。それで子宮頸がんや不妊症など手遅れになってしまうんだよ。何とか自分で採取しても精度の高い検査を考えてくれよ』そんなことがあって、初めて世に出したのがこのキットです。

風邪は万病の元、(女性にとって)臭いは万病のサイン

セルフメディケーション!

病気の早期発見早期治療こそがすべての幸せに通じます。
パートナーの方に『優しく』伝えてあげましょう

自分のオリモノは正常ではないかも? と思って検査を依頼

『いつ頃からかははっきり覚えていませんが、かなり前からおりものが気になっていました。ネットの記事を見て「自分のオリモノは正常ではないと思い、アイラボさんの婦人科トータルセルフチェックを購入しました。今30代ですが、これまで子宮頸がん検診を受けたことがなかったので、子宮頸がん検査が含まれているキットを選びました。』という方からの依頼です。

おりものや臭いに関係したキットは「腟内フローラチェック」や「おりもの&臭いの検査」があります。しかし、この方の様に、子宮頸がん検診を受けたこのがないのであれば適切なキットと選んでいただけました。

この方と同じような悩みを抱える方とても多いと思います。
アイラボのキットは自己採取法ですので自宅で簡単に採取できます。取り返しがつかなくなる前に是非試してくださいね。

早速顕微鏡を見てみましょう。
腟内は白血球の増加(腟炎)はなく、比較的きれいに見えます。
しかし、中央にはClue cell(クルーセル)が見られ、腟ガルドネラ菌が腟内を支配しているようです

さらに拡大を上げてみましょう
細胞にやや灰色っぽく見えるちるガルドネラ菌が充満しています(Clue cell)。
乳酸菌らしき桿菌は見られません。これだけの所見でこのケースは『細菌性腟症が疑われま』。
その他にトリコモナスやカンジダも見られません。

追加:このケースは淋菌とクラミジアも遺伝子検査で陰性でした。
従って、この方が悩まれていたのは『細菌性腟症』であることがはっきりしました

このままにしておいてはいけませんね

もうかなり長い間このような状態であったと思われます。
今の状態は、腟内フローラが乳酸菌から腟ガルドネラ菌にシフトしてしまっていますので、不快な症状で悩まれているのであれば婦人科の先生にご相談されるのが良いと思います。現状では白血球が増加していませんので、腟ガルドネラ菌の増殖を抑え、乳酸菌を増やす治療が一般的です。最も大切なことは、生活習慣の改善(細菌性腟症になった原因を取り除く)が必要になります。厄介なことに、その原因が一つではありませんので、アイラボでは検査を受けられた方には個々にご相談を受けられるようにしています。
お気軽にご相談頂ければと思います。

この検査ではもう一つ大切な事が分かりました。

それは初めての子宮頸がん検査で『異常な細胞がみられなかったということです。』
これを機会に、定期的に子宮頸がん検査を受けるようにしましょう。

オリモノや臭いの心配がなく、子宮頸がん検査のみなら『子宮頸がん(細胞診)検査』だけでOKです。
『最新の子宮頸がん検査』は「細胞診検査(今回の検査)」と「HPV検査(危険なHPVの感染があるかどうかを調べる検査)」を同時に行うキットです。両方とも異常がなければ数年に一度受ければ安心できます。
セルフメディケーション!

おかしい?
いつもの違う! と思ったら早目にチェックですね。
原因がはっきりすれば早めの治療が可能になります。

先生!カンジダではなくてBVです。

おりものの異常は、様々な原因で起こります。
婦人科のお医者さんから『カンジダいますか?』という依頼が時々あります。もちろん“正解”であることもありますが、『カンジダはいませんが、BV(細菌性腟症)が疑われます』という報告は多々あります。でもこの先生のように、『カンジダいますか?』と聞いてくる先生はいいですね。多分、カンジダなのかBVなのかの判断がつかないのだと思います。
BVありますか?』と聞いてくる先生は極めて少ないです。BVのことを理解されていないのか?それともあまりに多すぎて対応しきれない⇒“面倒”なのでしょうか?

前にも取り上げたとこがありますが(ここをクリック)、細胞診検査で明らかに細菌性腟症(BV)が疑われるケースでも、『そのことを報告書に記載しないでください』という検査機関は少なくないのです。
ですから、細菌性腟症に関しては、正しく診断されていないケースがとても多く、治療に反映されないケースがたくさんあることを知っておくべきです。従って、セルフメディケーション!『細菌性腟症かな?』って思ったらら自分でチェックされるのが良いと思います。

カンジダの治療をしていても完治しません

このような悩みを抱える人がとても多いのです。
一度アイラボの検査でチェックしてみよう”そんな人が増えています。
これまでにおりもの検査をされてない人は『おりもの&臭いの検査』で、すでにおりもの検査をされている方は『腟内フローラチェック』が良いでしょう。

今回は、『多分病院でも一応の検査はしてくれていると思いますが、はっきり分からないので』という理由で『おりもの&臭いの検査』を依頼された方のケースを紹介します。
ゴマ粒のように紺色に染まる小さな細胞は白血球ですが、その数は比較的少なく、腟炎を起こしている状態ではありません。
しかし、細胞の上や細胞がないところにも“薄くぼやけて見える”ものがあります。

さらに拡大を上げてみましょう
薄くぼやけて見えたのは、腟ガルドネラ菌でした。
他の視野を見てもほとんど同じ所見で、カンジダや乳酸菌は見えませんし、トリコモナスも見られません。
この画像で考えられる病気は細菌性腟症以外にありません。

また、他の遺伝子検査で淋菌やクラミジアも検出されていません。

カンジダの治療を続けても細菌性腟症は改善されません!

おかしいと思ったら先ずはセルフチェック!

セルフメディケーション!
あなたの健康を守るのは貴女だけです。
おりものや臭いが心配な時はおりもの&臭いのチェック
細菌性腟症が心配な時は腟内フローラチェックがお勧めです。

アイラボの男性HPV検査をチェックしておこう

男性のHPV検査は『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR』で検査しています。
この検査法は高感度でしかも全てのHPVが同じ感度で検出できるのが特徴ですので、単独感染と多重感染を厳密に区別することができます。
基本的には39種のHPVを同時に検出できますが、アイラボが提供している『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマKit113)は「16,18,31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,68の13種に加え、尖圭コンジローマを引き起こす6,11と、アイラボが独自に加えている53,66の計17種」を同時に調べます。

アイラボではどの検査においても、(お客様に採取して頂きますので)検体が適正に採取されているかをチェックしていますが、この検査も遺伝子検査を実施する前に細胞診標本を作製して検体の適否判定を行っています。

それでは早速本日最初の標本を見てみましょう。
亀頭の先端を中心にカリの部分から水で湿らせた綿棒で擦過(こすって)して細胞を採取しました。
通常はこの写真のように、ややオレンジの色調で染まる(核が見られない)重層扁平上皮の表層細胞が採取されます。顕微鏡の1視野にこれだけの数の細胞が採取されているので、検体としては『適正』と判定します。

拡大を上げてみましょう。
拡大を上げた写真ですが、細胞に明らかな核は見られません。
この様に亀頭部分の細胞は皮膚と同様に、核のない細胞がほとんどです。
勿論この段階でHPVの感染があるかどうかは分かりません。
このように、検体として十分な細胞が観察できますので、遺伝子検査に送られます。

遺伝子検査の結果は『陰性』で、17種全てが検出されません。

先ずは一安心ということですね。

次のケースを見てみましょう

このケースもオレンジ色に染まる扁平上皮細胞が採取されていますので、検体としては『適正』ですので
遺伝子検査に廻します。

拡大を上げてみましょう。
写真の中央左側の細胞には明らかな核が見られます。
それも一つの細胞だけでなく、いくつもの細胞に見られ、しかも核は大きくなっています。
前のケースとは明らかに異なった所見です。

検体を採取する時には特に隆起性病変(イボ状の病変)は確認できなかったようですが、健康な亀頭部分をこすって来てもこのような核のある細胞に遭遇することはほとんどありません。従ってこの核のある細胞を見た段階で、HPVの感染を疑うことができました。

結果は尖圭コンジローマを起こす6型が検出されました。
亀頭の皮膚表面には目では確認できなかったが、感染した細胞が露出していたことになります。
HPVの感染細胞は皮膚の表面に存在しますので、軽くこすっただけでも検出できるのです。

検体の適否判定は極めて重要な検査です。

検査に必要な検体が採取されていないと、遺伝子検査の結果は感染していても『陰性』になってしまいます。
従って、十分な細胞が採取されていない時は、無料で採取器具をお送りしています。



このキットは子宮頸がんハイリスク型13種と尖圭コンジローマの原因となる6型と11型を同時に感染しているHPVの型を調べる検査です。現在はサービスでHPVの53型と66型を追加して調べています。
特徴は、6畑、11型の単独検査に比べて割安料金になっています。
こちらのキットは子宮頸がんハイリスク型13種の型を調べる検査です。
現在サービスで53型と66型を追加して調べています。

中咽頭がん対策として咽頭HPV検査キット提供準備開始

4月29日のスマホ記事に『咽頭がんの発症リスクは「オーラルセックス」により増大していた?!』
という記事がありましたので、この機会にこの病気について少し勉強しておきましょう。

この記事を要約してみると
 1)この20年、欧米では「中咽頭がん」が増加している
 2)日本でも増加傾向にある。
 3)かつてその原因は喫煙や飲酒が主な原因とされていたが、近年オーラルセックスによるウイル
   スの感染が明らかになった

 4)中咽頭がんの7割はHPVへの感染
 5)オーラルセックスで中咽頭がんの発生率が8.5倍
 6)日本では毎年24,000人程が中咽頭がんと診断されている。
 7)以前は中年男性に多かったが、今では若い男女にも見られる
 8)イギリスで扁桃腺の摘出手術受けた1,000人を調べたところ80%がオーラルセックスの経験があった。
 9)しかし、中咽頭がんを発症する人は少数でしたが、その原因は分かっていないが 
(この記事では)HPVは自然免疫で十分対応できることがあげられている。
10)女性のHPVワクチン接種率の高い国では、男性のHPV感染も少なくなることが分かっている。
11)アメリカ、イギリス、オーストラリアでは男性へのHPV接種拡大を進めている。
12)日本でも男女双方にHPVワクチン接種を広めることで、咽頭がんの発症を減らすことが期待されている。

こんな内容の記事です。

早速、“中咽頭がん”で検索してみましょう

がん情報サービスのページが出てきました。
https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/about.html

発生には、喫煙と飲酒のほか、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因となっているものがあることが分かっています。ヒトパピローマウイルス感染に関連した中咽頭がんは、そうでないものに比べて予後が良いことが知られています。

“中咽頭がん 発生率”で検索すると

国立がん研究センター中央研究所の小村先生の記事がありました。
『中咽頭がんの原因には何があるの?〜喫煙や飲酒、ウイルス感染が関連している〜』

【飲酒・喫煙】
中咽頭がんの原因の多くを占めるのが、飲酒と喫煙であるといわれています。
お酒、たばこにはどちらも発がん性があります。中咽頭は飲食物や空気の通り道であることから、お酒をよく飲む人、たばこをよく吸う人ほど発がんリスクが高まるとされています。また、(お酒を飲んで顔が赤くなる人)は、アルコールの分解がうまくいかず、発がん性のアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすいために、継続的に飲酒することで発がんの可能性が高まることが分かっています。なお、中咽頭がんは50~70歳代に好発しており、女性よりも男性に多い傾向があります。これは飲酒や喫煙による長年の慢性刺激が誘因になること、飲酒や喫煙の習慣が男性に多いことが理由と考えられています。

【ウイルス感染】
中咽頭がんの発症には、ヒトパピローマウイルスの関与も指摘されています。ヒトパピローマウイルスは、皮膚や粘膜の細胞を介してヒトからヒトへ接触感染するウイルスで、咽頭への感染は主に口腔性交(オーラルセックス)によるものです。
感染しても大抵は症状が出ないまま排除されますが、感染して状態が続くとがんを抑制する遺伝子のはたらきが失われ、これによってがんが発生すると考えられています。
ヒトパピローマウイルスは100を超える種類が存在し、一部の高リスク型(特に16型と18型)が中咽頭がんの発生に関与しているとされ、性交の多様化によって近年では中咽頭がんの発症者が比較的若い世代にも増えてきているといわれています。
また、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、肛門がん、陰茎がんなどの発生にも関わっており、これらの部位においては主に腟性交や肛門性交(アナルセックス)によって感染します。

アイラボでは咽頭のHPV検査キットを提供していません、、が?

その理由は、
自己採取では咽頭から適正な検体が安全に採取できない』からです。
しかし、中咽頭がんとHPV感染の関係が徐々に明らかにされるにしたがって、『検出率が低いのは理解しましていますがどうしてもやってほしい』という方が増えてきています。特に風俗で働く女性にとっては子宮頸がんどころではなく、中咽頭がんの方が心配という人が増えている気がします。その理由として、『子宮頸がんは定期的に検診を受けていれば(早期に発見できるので)適切に対応できるが、中咽頭がんについては良く分からないだけに怖い』ということがあげられます。

ここ1年ほどの間に“どうしても検査をして欲しい”という方には、検査精度が低い可能性があることを説明した上でキットを提供しました。18名の方にハイリスク型13種と(当社が独自に加えている)66型と53型の計15種について調べました。
検査は杏林大学保健学部大河戸先生が開発した高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCRで測定しました。その結果、2名の女性からHPVの感染が確認されました。
その1例目は、子宮頸がん検診でLSILと診断され、最近のどが痛いこともあり、のどのHPV感染も気になったので検査されました。
結果は58型、66型、53型の感染が確認されました。他の1例は、オーラルのサービスをしている女性で、腟と咽頭のHPVタイピング検査を依頼された方です。腟からは上記15種のHPVは検出されませんが、咽頭から66型が検出されています。

性器に比べて口腔や咽頭は感染しにくいのではないか?

前で紹介した中咽頭がんの原因は「飲酒と喫煙」が主な理由にあげられていましたが、私は喫煙と飲酒がHPVに感染しやすい土壌を作っているのではないかと考えています
つまり、HPVはウイルスですが、コロナやインフルエンザとは異なり、健康な粘膜や上皮細胞に接触しても感染は成立せず、粘膜や上皮に傷がつくことで感染が成立するが、口腔や咽頭からはそれに比べて検出される割合が(経験的に)少ないのが現状です。私達はその原因として、“うがい液”での検査は十分な検体が採取されない可能性を考慮して検査キットの提供を控えてきました。しかし、最近の研究で、医師による咽頭擦過検体とうがい液を比較しても結果に大きな差が見られないことが明らかになりました。
これらの結果から総合的に考えてみると、検出率が低いのではなく、HPVがオーラルセックスで口腔や咽頭に侵入したとしても、口腔や咽頭が健康であれば感染が成立しないのではないかと考えました。飲酒や喫煙で粘膜にダメージを受けている状態ですと感染しやすく、それは喫煙や飲酒だけでなく、風邪で咽頭が赤く腫れている時や歯周に炎症がある場合では感染しやすいのではないかと思います。
従って、アイラボが実施した(うがい液で陽性になった)2名は中咽頭に感染病巣があるためであり、(オーラルセックスで一時的にHPVによる汚染があったとしても)感染が成立しないケースが多いのではないかという結論に達しました。

中咽頭がん対策として咽頭HPV検査キットの販売の準備を始めます。

検査方法は、『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR』を採用します。

早速準備に取り掛かりますが、お急ぎの方はアイラボにご一報下さい。
042-652-0750です。

おりものの異常とわずかな出血 がんが心配!

40代前半の方、「子宮頸がん検診はこれまで数回受けただけで、ここ10年ぐらいは受けていないので子宮頸がんが心配! 特におりものが気になるので、近くの婦人科を受診したが、内診と問診をしたが特に問題はないとのことで、検査をしないで腟内に何か薬を入れてくれた。しばらくはオリモノが気にならなかったのですが、元に戻ってしまうので、がんが心配になり、郵送でできる検査を受けました。」が検査を受けた理由です。

早速顕微鏡を見てみましょう。
これは顕微鏡の400倍の写真です。
視野全体に、ゴマのように見えるものが白血球です。
白血球がたくさん見えるということは、腟内で炎症が起こっていることになります。
つまり、何らかの理由で、細菌や虫、カビ、ウイルスなどが腟内で増えているために、それらを退治する白血球が増えているのです。白血球が増えてそれら微生物を貪食(どんしょく=白血球の中に取り込む)すると、白血球は死にます。それが“膿(うみ)”の元です。従って、腟内で炎症が起こっているとオリモノは黄色になります。この方はかなりひどい状態ですので、おりものの量が多いばかりでなく、臭いも伴っていると思われます。強い炎症を起こしていますので、時には軽い出血を伴うこともあります。

さて、炎症の原因は何でしょう?
さらに拡大を上げてみました。
白血球の形がより鮮明に見えるようになりました。
この方は、“がん”が心配で検査を受けられましたが、どうやら、この拡大した写真の中には気になる異常な細胞は見られません。
白血球より小さく、ややオレンジ色に染まる楕円形の構造物が散見られます。
これはカンジダの胞子です。
従って、この方の腟炎の原因はカンジダの増殖がその一つであることが分かります。

先ず、原因の一つがカンジダでした

腟カンジダ症の特徴は、①かゆみを伴う事 ②白っぽいおりものの増加ですが、この方の様に炎症を伴っているケースではおりものは黄色くなります。また、かゆみはカンジダ症だけでなく、トリコモナスの感染がある時、ヘルペスの感染初期、HPV感染初期、さらに細菌性腟症や淋菌やクラミジアの感染時にも症状を訴える人がいます。
従って、婦人科の先生も、オリモノの性状や臭いでそれら感染症を区別することはなかなか難しいようです。
アイラボに検査を依頼される先生方でも「カンジダはいますか?」というケースが実は「トリコモナス」であったり、「細菌性腟症」であったりします。従って、経験だけではなく、しっかり検査をしたうえで治療に進むべきで、今回も腟錠を処方されたようですが、それがカンジダの治療薬ではなかった可能性も否定できません。
また実際カンジダの治療薬が処方されたとしても、治療後の完治確認検査を行っていない場合は、完全に治っていないこともあります。完治確認検査は病院で行ってくれるのが一般的ですが、行われないこともありますので、そのことを確認して必要であれば郵送検査でも確認できます。

いつもと違う症状は“何らかの異常”のサイン

今回紹介した方は、“オリモノがいつもと違う”、“病院を受診して治療しても症状の改善は一時的”そんなことで『がんが心配になった』ケースです。
もう40年も前の話になりますが、ある婦人科の先生が2週間の間に2度子宮頸がんの細胞診検査を依頼してきたことがあります。最初の検査の報告書を見ると、“クラスⅡで、扁平上皮化生細胞がみられます。”という結果でした。
そして2度目は私が検査を担当しました。まだクラミジアの検査法が確立していない時期でしたが、私はクラミジア感染を疑い、検査を依頼した先生に電話で、2週間後に再検査をされた理由を伺いました。先生の回答は『出血が止まらずがんを考えています。』でした。このように婦人科医であっても、原因がはっきりしなければ“がんを疑う”でしょうし、確認のため短期間の間に再度検査をすることもあるでしょう。
この方が“郵送検査を受けてみよう”と思ったり、“セカンドオピニオンを選択したい思い”も当然です。
この方の様に、いつもと違う症状があるときは、早めに検査をすることで悩みからも解放されます。
そのままにしないことが病気の早期発見のみならず、QOL(生活の質)の向上にもつながるのです。

悩みがある時は、先ずアイラボのスタッフにご相談下さい!
042-652-0750です

電話で担当の先生にクラミジア感染が疑われることを伝えた訳

その頃は他の検査機関で仕事をしていましたので、『研究段階では明らかになっていることでも、報告書には書かないでください』ということになっていたからです。そして40年が経過した現在でも、多くの検査機関で、「クラミジアの感染が疑われます。」との記載はしていないと思われます。多分その理由は『もしその件で問い合わせがあっても説明できないから』だと思います。それはクラミジアだけではありません。細菌性腟症に関しても明らかに教科書的な所見が見られても記載ができない検査機関が多いと思います。それも同様で、検査機関のみならず、お医者さんも患者さんに説明できないという理由があるからではないでしょうか?

こんなことがあり、“おりものが心配だから子宮頸がん検査を受けた人の場合”、子宮がんは心配なかったという結果をもらっても、“おりものの原因が報告書に反映されないことが多いのです。”

おりものが心配な時は先ずご相談ください!

自己採取法による子宮頸がん検診(2022年度)の集計が出ました

2022年5月の厚生労働省広報誌に『ワクチンについて知ってください子宮頸がんの最前線』という見出しの記事があります。
要約すると、8年ぶりに“2022年4月からHPVワクチン接種の積極的な勧奨が再開された。” その背景にはカナダやイギリスでは80%以上の人が3回の接種を済ませているのに対し、日本ではわずかに1.9%(2019年集計)であったと言っています。
そして“日本では年間11,000人が子宮頸がんを発症し、2,900名がなくなっています。”20代から発症し、30代までに治療によって子宮を摘出して妊娠できない人は1,000人にも及ぶようです。
【そして予防が大事だと!】
ワクチン接種でHPVの感染を予防しましょう。
子宮頸がん検診で早期に発見して、早期の治療につなげましょう。
ワクチンを接種しなくても2年に一度は検診を受けましょう。
2年に一度は検診を受けましょうというばかりでは日本女性は反応しないのでは

2,009年、『子宮頸がん検診の受診率を5年間で50%まで上げる。』と豪語した人がいましたが、今はどうなっているのでしょうか?

あれから13年が経って今の受診率は?

同じ広報誌の<Part4>では、健康局 がん・疾病対策課 課長補佐の渭原先生が解説されていますが、“子宮頸がん検診の受診率は43.7%”で、30代後半から50歳で50%を超えているが、20‐24歳では15.1%と最も低くなっていると解説しています。

『そうした若い世代に対して、各自治体では検診の周知のやり方を工夫しています。たとえば、成人式で啓発をしたり、大学と連携したり、SNSで情報発信をしたりしています。』、、、でも、受診率は上がらないんですよね?

つまり、“13年経過してもまだ50%の目標も達成されていない”のです。

アイラボは自己採取法を対策の柱に掲げてきました。

細胞診断学を業とする私達は、日本女性を子宮頸がんから守るために自己採取法への理解と普及に努めてきました。
その根幹には、“医師採取に比べて精度が劣る” との批判があるのなら、“細胞診のプロとして最善の努力をしてみよう。それでも意味のないことであるならまた違った方法を考えよう。” そんな思いでこの20年間自己採取法と向き合ってきました。

(ふと昔を思い出しました)細胞検査士あり方委員長を仰せつかって初めての仕事が、『細胞検査士責任賠償保険への加入』でした。ところがある時、細胞検査士会の重鎮(故MH先生)から電話を頂き、急遽日本臨床細胞学会の重鎮(故YT先生)とお会いすることになりました。YT先生曰く、全ての責任は細胞診指導医(現在は専門医)が持つので、そのような保険は必要ないと言われたのです。細胞診は細胞検査士が最初に標本を観察し(スクリーニング業務)、もし異常な細胞があればそれにチェックを打って、細胞診専門医の先生がさらに観察して最終診断を行うという仕組みです。『もし最初のスクリーニング業務で異常な細胞を見落としてしまったら、それは専門医の先生の責任ではなく、見落としてしまった細胞検査士の責任は免れません。ですから、責任賠償保険は私達にとって必須なのです』と言ってご理解を求めました。しかし内心は、(細胞検査士ありかた委員長として)間違いを犯してしまった時の責任賠償は当然のことですが、“同僚の細胞検査士に向け、細胞検査士とは極めて責任の重い仕事である、知識・技術を磨くために切磋琢磨し、この仕事に従事する上での使命感・責任感を自ら養い、細胞検査士としてのプライドを持ってほしい”という思いがありました。
その時YT先生は私にとってとても重要なお話をしてくれました。『これから細胞検査士としていろいろな仕事をしていくとき、自分の意にそぐわないことが山ほどあるかも知れないが、すぐにあきらめず、自分が納得できるまで例え相手が医師であろうと、信念を曲げないで頑張れ、ただし、(細胞検査士として)ストライキだけはやってはいけない。いいかい。』そんなお話を頂いたことを思い出しました。

日本女性の子宮頸がん検診の受診率が低い理由は、“医師に採取されるのが苦手な人”、“仕事や子育てが忙しく検診を受ける時間がない”、“症状もないのに面倒” などが考えられます。

細胞診に従事する人へのモットー

ちょうどその頃、杏林大学保健学部で教鞭をとっていたこともあり、子供たちに細胞検査士として誇りをもって生きて欲しいという思いから、(一週間ほど入院したベッドの中で)こんなことを考えました。
そして今は、アイラボのモットーとして検査室に置いてあります。

アイラボにおける自己採取型子宮頸がん検査(2022年度分追加)

2022年度(2022.4~202.3)にアイラボで実施した自己採取型子宮頸がん検査は検診機関からの依頼に加え、郵送にて個人から依頼されたものを含みますが、風俗従事者の検診は含まれません。
総受託件数は2377件で、適正に検体が採取されていなかったものは6件(0.25%)、NILM(異型細胞が見られない)は2285(96.37%)、ASC-US(細胞の由来がはっきりしない、HPV感染も否定できない)は44例(1.86%)、LSIL(軽度異形成、HPV感染)は29例(1.22%)、ASC-H(HSILの存在が否定できない)は9例(0.38%)、HSIL(中等度異形成~上皮内癌)とSCC(本来扁平上皮癌がここに入りますが、この1例は悪性が推定された特殊なケースで扁平上皮癌ではありません)は各1例、AGC(異型腺細胞)2例(0.08%)でした。従って、ASC-US以上は3.07%LSIL以上は1.78%になります。

風俗営業従事者を集計に加えなかった理由
今年度は、風俗営業従事者について、自己採取法で30名の子宮頸がん検診を実施しました。
検査の内容はハイリスク型13種のタイピング検査と細胞診を同時に検査しました。
その結果、細胞診においては、NILMが18例、ASC-US・LSIL共に5例、ASC-H・HSILがともに1例でした。
従って、ASC-US以上は40.0%LSIL以上は23.3%であり、前述の一般の人対象にした検診と郵送検査で実施したグループに比べ、おおむね10倍以上の陽性率を示しました
この結果は、我々が以前報告した成績と全く同様でした。
さらに驚くことは、同時に行ったHPVタイピング検査では23例(76.7%)において1種類以上のハイリスク型HPVの感染が確認されています。

同じ年度に行われた医師採取子宮頸がん検査の成績と比較

比較のために2検診施設の2023年3月15日までの成績を示します。なお、全ての検体はアイラボ式LBC法で標本を作製し、A検診施設はサーベックスブラシ、B検診施設は頸管ブラシで採取されています。
A検診施設は、検診総数5462件でASC-USは47例(0.84%)、LSILは8例(0.15%)、ASC-Hは2例(0.04%)、HSILは3例(0.05%)、AGCは7例(0.13%)で、ASC-US以上は1.21%LSIL以上は0.37%でした。

B検診施設は、検診総数726件でASC-USは15例(2.07%)、LSILは7例(0.96%)、ASC-H、AGCは各1例、HSILは3例(0.41%)で、ASC-US以上は3.12%LSIL以上は1.65%でした。

加藤式による子宮頸がん検診でも大きな差はありません。

私達の検査成績を見ても、加藤式自己擦過法による子宮頸がん検査は、医師採取に比べても著しく検出精度が落ちることはありません。しかし、自己採取法に関しては、ややもすれば「悪法」であるかのごとき発言をする細胞診関係者は少なくありません。
当然のことではありますが、子宮頸管内に発生する子宮頸部腺がんを早期に発見するという点からは医師採取に比べれば劣ることが想定されますが、HPV感染に伴う変化を早期に発見し、医療機関への橋渡し的役割と考えれば決して「悪法」ではなく、特に検診受診率の低い若い世代へ自己採取法の門戸を開くことで受診率向上が期待されます。健康保険組合や検診機関では「子宮頸がん検診ガイドライン」が存在することで、自己採取法は「ダメの一点張り」の機関から、「希望者には提供する」機関もあり、私個人的には、せめて「医師採取が苦手な方には自己採取を選べます」程度のやさしさがあってほしいと考えます。前述の故YT先生の言葉『これから細胞検査士としていろいろな仕事をしていくとき、自分の意にそぐわないことが山ほどあるかも知れないが、すぐにあきらめず、自分が納得できるまで例え相手が医師であろうと、信念を曲げないで頑張れ』を忘れず、少しでも子宮頸がん検診の受診率向上に努めたいと考えています。

なぜ「悪法」になってしまったのか? それにもまた訳があるのです。
それは検査にかかわる検査機関や細胞検査士の使命感が大きくかかわっているのです。
つまり、検査精度は「適切な採取」「適切な標本作製」「適切な(顕微鏡の)観察」この3つが全て適切に実施されて初めて検査法として成立するのです。従って、どの採取器具を選択すべきか、どのような標本を作製するのが良いか? いかに使命感をもって観察するかにかかっているのです。利益を優先すれば「安い採取器具を選ぶ」だろうし、「加藤式が推奨する直接塗抹より良い方法はないか」といった向上心があるか? 自己採取法なので(異常な細胞が相対的に少ないので)よりしっかり観察すべきなのに「サーっと見てしまった」といった細胞検査士の存在が「悪法」にしてしまったように思えます。
細胞診に関わるものの責任と言っても過言ではないのです。

こんなことを私達自らの反省点に掲げ、自己採取法の普及に取り組む仲間ができることを切に願うばかりです。