おりものの異常とわずかな出血 がんが心配!

40代前半の方、「子宮頸がん検診はこれまで数回受けただけで、ここ10年ぐらいは受けていないので子宮頸がんが心配! 特におりものが気になるので、近くの婦人科を受診したが、内診と問診をしたが特に問題はないとのことで、検査をしないで腟内に何か薬を入れてくれた。しばらくはオリモノが気にならなかったのですが、元に戻ってしまうので、がんが心配になり、郵送でできる検査を受けました。」が検査を受けた理由です。

早速顕微鏡を見てみましょう。
これは顕微鏡の400倍の写真です。
視野全体に、ゴマのように見えるものが白血球です。
白血球がたくさん見えるということは、腟内で炎症が起こっていることになります。
つまり、何らかの理由で、細菌や虫、カビ、ウイルスなどが腟内で増えているために、それらを退治する白血球が増えているのです。白血球が増えてそれら微生物を貪食(どんしょく=白血球の中に取り込む)すると、白血球は死にます。それが“膿(うみ)”の元です。従って、腟内で炎症が起こっているとオリモノは黄色になります。この方はかなりひどい状態ですので、おりものの量が多いばかりでなく、臭いも伴っていると思われます。強い炎症を起こしていますので、時には軽い出血を伴うこともあります。

さて、炎症の原因は何でしょう?
さらに拡大を上げてみました。
白血球の形がより鮮明に見えるようになりました。
この方は、“がん”が心配で検査を受けられましたが、どうやら、この拡大した写真の中には気になる異常な細胞は見られません。
白血球より小さく、ややオレンジ色に染まる楕円形の構造物が散見られます。
これはカンジダの胞子です。
従って、この方の腟炎の原因はカンジダの増殖がその一つであることが分かります。

先ず、原因の一つがカンジダでした

腟カンジダ症の特徴は、①かゆみを伴う事 ②白っぽいおりものの増加ですが、この方の様に炎症を伴っているケースではおりものは黄色くなります。また、かゆみはカンジダ症だけでなく、トリコモナスの感染がある時、ヘルペスの感染初期、HPV感染初期、さらに細菌性腟症や淋菌やクラミジアの感染時にも症状を訴える人がいます。
従って、婦人科の先生も、オリモノの性状や臭いでそれら感染症を区別することはなかなか難しいようです。
アイラボに検査を依頼される先生方でも「カンジダはいますか?」というケースが実は「トリコモナス」であったり、「細菌性腟症」であったりします。従って、経験だけではなく、しっかり検査をしたうえで治療に進むべきで、今回も腟錠を処方されたようですが、それがカンジダの治療薬ではなかった可能性も否定できません。
また実際カンジダの治療薬が処方されたとしても、治療後の完治確認検査を行っていない場合は、完全に治っていないこともあります。完治確認検査は病院で行ってくれるのが一般的ですが、行われないこともありますので、そのことを確認して必要であれば郵送検査でも確認できます。

いつもと違う症状は“何らかの異常”のサイン

今回紹介した方は、“オリモノがいつもと違う”、“病院を受診して治療しても症状の改善は一時的”そんなことで『がんが心配になった』ケースです。
もう40年も前の話になりますが、ある婦人科の先生が2週間の間に2度子宮頸がんの細胞診検査を依頼してきたことがあります。最初の検査の報告書を見ると、“クラスⅡで、扁平上皮化生細胞がみられます。”という結果でした。
そして2度目は私が検査を担当しました。まだクラミジアの検査法が確立していない時期でしたが、私はクラミジア感染を疑い、検査を依頼した先生に電話で、2週間後に再検査をされた理由を伺いました。先生の回答は『出血が止まらずがんを考えています。』でした。このように婦人科医であっても、原因がはっきりしなければ“がんを疑う”でしょうし、確認のため短期間の間に再度検査をすることもあるでしょう。
この方が“郵送検査を受けてみよう”と思ったり、“セカンドオピニオンを選択したい思い”も当然です。
この方の様に、いつもと違う症状があるときは、早めに検査をすることで悩みからも解放されます。
そのままにしないことが病気の早期発見のみならず、QOL(生活の質)の向上にもつながるのです。

悩みがある時は、先ずアイラボのスタッフにご相談下さい!
042-652-0750です

電話で担当の先生にクラミジア感染が疑われることを伝えた訳

その頃は他の検査機関で仕事をしていましたので、『研究段階では明らかになっていることでも、報告書には書かないでください』ということになっていたからです。そして40年が経過した現在でも、多くの検査機関で、「クラミジアの感染が疑われます。」との記載はしていないと思われます。多分その理由は『もしその件で問い合わせがあっても説明できないから』だと思います。それはクラミジアだけではありません。細菌性腟症に関しても明らかに教科書的な所見が見られても記載ができない検査機関が多いと思います。それも同様で、検査機関のみならず、お医者さんも患者さんに説明できないという理由があるからではないでしょうか?

こんなことがあり、“おりものが心配だから子宮頸がん検査を受けた人の場合”、子宮がんは心配なかったという結果をもらっても、“おりものの原因が報告書に反映されないことが多いのです。”

おりものが心配な時は先ずご相談ください!

自己採取法による子宮頸がん検診(2022年度)の集計が出ました

2022年5月の厚生労働省広報誌に『ワクチンについて知ってください子宮頸がんの最前線』という見出しの記事があります。
要約すると、8年ぶりに“2022年4月からHPVワクチン接種の積極的な勧奨が再開された。” その背景にはカナダやイギリスでは80%以上の人が3回の接種を済ませているのに対し、日本ではわずかに1.9%(2019年集計)であったと言っています。
そして“日本では年間11,000人が子宮頸がんを発症し、2,900名がなくなっています。”20代から発症し、30代までに治療によって子宮を摘出して妊娠できない人は1,000人にも及ぶようです。
【そして予防が大事だと!】
ワクチン接種でHPVの感染を予防しましょう。
子宮頸がん検診で早期に発見して、早期の治療につなげましょう。
ワクチンを接種しなくても2年に一度は検診を受けましょう。
2年に一度は検診を受けましょうというばかりでは日本女性は反応しないのでは

2,009年、『子宮頸がん検診の受診率を5年間で50%まで上げる。』と豪語した人がいましたが、今はどうなっているのでしょうか?

あれから13年が経って今の受診率は?

同じ広報誌の<Part4>では、健康局 がん・疾病対策課 課長補佐の渭原先生が解説されていますが、“子宮頸がん検診の受診率は43.7%”で、30代後半から50歳で50%を超えているが、20‐24歳では15.1%と最も低くなっていると解説しています。

『そうした若い世代に対して、各自治体では検診の周知のやり方を工夫しています。たとえば、成人式で啓発をしたり、大学と連携したり、SNSで情報発信をしたりしています。』、、、でも、受診率は上がらないんですよね?

つまり、“13年経過してもまだ50%の目標も達成されていない”のです。

アイラボは自己採取法を対策の柱に掲げてきました。

細胞診断学を業とする私達は、日本女性を子宮頸がんから守るために自己採取法への理解と普及に努めてきました。
その根幹には、“医師採取に比べて精度が劣る” との批判があるのなら、“細胞診のプロとして最善の努力をしてみよう。それでも意味のないことであるならまた違った方法を考えよう。” そんな思いでこの20年間自己採取法と向き合ってきました。

(ふと昔を思い出しました)細胞検査士あり方委員長を仰せつかって初めての仕事が、『細胞検査士責任賠償保険への加入』でした。ところがある時、細胞検査士会の重鎮(故MH先生)から電話を頂き、急遽日本臨床細胞学会の重鎮(故YT先生)とお会いすることになりました。YT先生曰く、全ての責任は細胞診指導医(現在は専門医)が持つので、そのような保険は必要ないと言われたのです。細胞診は細胞検査士が最初に標本を観察し(スクリーニング業務)、もし異常な細胞があればそれにチェックを打って、細胞診専門医の先生がさらに観察して最終診断を行うという仕組みです。『もし最初のスクリーニング業務で異常な細胞を見落としてしまったら、それは専門医の先生の責任ではなく、見落としてしまった細胞検査士の責任は免れません。ですから、責任賠償保険は私達にとって必須なのです』と言ってご理解を求めました。しかし内心は、(細胞検査士ありかた委員長として)間違いを犯してしまった時の責任賠償は当然のことですが、“同僚の細胞検査士に向け、細胞検査士とは極めて責任の重い仕事である、知識・技術を磨くために切磋琢磨し、この仕事に従事する上での使命感・責任感を自ら養い、細胞検査士としてのプライドを持ってほしい”という思いがありました。
その時YT先生は私にとってとても重要なお話をしてくれました。『これから細胞検査士としていろいろな仕事をしていくとき、自分の意にそぐわないことが山ほどあるかも知れないが、すぐにあきらめず、自分が納得できるまで例え相手が医師であろうと、信念を曲げないで頑張れ、ただし、(細胞検査士として)ストライキだけはやってはいけない。いいかい。』そんなお話を頂いたことを思い出しました。

日本女性の子宮頸がん検診の受診率が低い理由は、“医師に採取されるのが苦手な人”、“仕事や子育てが忙しく検診を受ける時間がない”、“症状もないのに面倒” などが考えられます。

細胞診に従事する人へのモットー

ちょうどその頃、杏林大学保健学部で教鞭をとっていたこともあり、子供たちに細胞検査士として誇りをもって生きて欲しいという思いから、(一週間ほど入院したベッドの中で)こんなことを考えました。
そして今は、アイラボのモットーとして検査室に置いてあります。

アイラボにおける自己採取型子宮頸がん検査(2022年度分追加)

2022年度(2022.4~202.3)にアイラボで実施した自己採取型子宮頸がん検査は検診機関からの依頼に加え、郵送にて個人から依頼されたものを含みますが、風俗従事者の検診は含まれません。
総受託件数は2377件で、適正に検体が採取されていなかったものは6件(0.25%)、NILM(異型細胞が見られない)は2285(96.37%)、ASC-US(細胞の由来がはっきりしない、HPV感染も否定できない)は44例(1.86%)、LSIL(軽度異形成、HPV感染)は29例(1.22%)、ASC-H(HSILの存在が否定できない)は9例(0.38%)、HSIL(中等度異形成~上皮内癌)とSCC(本来扁平上皮癌がここに入りますが、この1例は悪性が推定された特殊なケースで扁平上皮癌ではありません)は各1例、AGC(異型腺細胞)2例(0.08%)でした。従って、ASC-US以上は3.07%LSIL以上は1.78%になります。

風俗営業従事者を集計に加えなかった理由
今年度は、風俗営業従事者について、自己採取法で30名の子宮頸がん検診を実施しました。
検査の内容はハイリスク型13種のタイピング検査と細胞診を同時に検査しました。
その結果、細胞診においては、NILMが18例、ASC-US・LSIL共に5例、ASC-H・HSILがともに1例でした。
従って、ASC-US以上は40.0%LSIL以上は23.3%であり、前述の一般の人対象にした検診と郵送検査で実施したグループに比べ、おおむね10倍以上の陽性率を示しました
この結果は、我々が以前報告した成績と全く同様でした。
さらに驚くことは、同時に行ったHPVタイピング検査では23例(76.7%)において1種類以上のハイリスク型HPVの感染が確認されています。

同じ年度に行われた医師採取子宮頸がん検査の成績と比較

比較のために2検診施設の2023年3月15日までの成績を示します。なお、全ての検体はアイラボ式LBC法で標本を作製し、A検診施設はサーベックスブラシ、B検診施設は頸管ブラシで採取されています。
A検診施設は、検診総数5462件でASC-USは47例(0.84%)、LSILは8例(0.15%)、ASC-Hは2例(0.04%)、HSILは3例(0.05%)、AGCは7例(0.13%)で、ASC-US以上は1.21%LSIL以上は0.37%でした。

B検診施設は、検診総数726件でASC-USは15例(2.07%)、LSILは7例(0.96%)、ASC-H、AGCは各1例、HSILは3例(0.41%)で、ASC-US以上は3.12%LSIL以上は1.65%でした。

加藤式による子宮頸がん検診でも大きな差はありません。

私達の検査成績を見ても、加藤式自己擦過法による子宮頸がん検査は、医師採取に比べても著しく検出精度が落ちることはありません。しかし、自己採取法に関しては、ややもすれば「悪法」であるかのごとき発言をする細胞診関係者は少なくありません。
当然のことではありますが、子宮頸管内に発生する子宮頸部腺がんを早期に発見するという点からは医師採取に比べれば劣ることが想定されますが、HPV感染に伴う変化を早期に発見し、医療機関への橋渡し的役割と考えれば決して「悪法」ではなく、特に検診受診率の低い若い世代へ自己採取法の門戸を開くことで受診率向上が期待されます。健康保険組合や検診機関では「子宮頸がん検診ガイドライン」が存在することで、自己採取法は「ダメの一点張り」の機関から、「希望者には提供する」機関もあり、私個人的には、せめて「医師採取が苦手な方には自己採取を選べます」程度のやさしさがあってほしいと考えます。前述の故YT先生の言葉『これから細胞検査士としていろいろな仕事をしていくとき、自分の意にそぐわないことが山ほどあるかも知れないが、すぐにあきらめず、自分が納得できるまで例え相手が医師であろうと、信念を曲げないで頑張れ』を忘れず、少しでも子宮頸がん検診の受診率向上に努めたいと考えています。

なぜ「悪法」になってしまったのか? それにもまた訳があるのです。
それは検査にかかわる検査機関や細胞検査士の使命感が大きくかかわっているのです。
つまり、検査精度は「適切な採取」「適切な標本作製」「適切な(顕微鏡の)観察」この3つが全て適切に実施されて初めて検査法として成立するのです。従って、どの採取器具を選択すべきか、どのような標本を作製するのが良いか? いかに使命感をもって観察するかにかかっているのです。利益を優先すれば「安い採取器具を選ぶ」だろうし、「加藤式が推奨する直接塗抹より良い方法はないか」といった向上心があるか? 自己採取法なので(異常な細胞が相対的に少ないので)よりしっかり観察すべきなのに「サーっと見てしまった」といった細胞検査士の存在が「悪法」にしてしまったように思えます。
細胞診に関わるものの責任と言っても過言ではないのです。

こんなことを私達自らの反省点に掲げ、自己採取法の普及に取り組む仲間ができることを切に願うばかりです。

風俗でゴムなしの行為をし、HPV感染が心配で眠れない

基本的に風俗の存在はいろいろな問題はありますが、“反対ではありません”という立場です。とはいえ、風俗のことをそんなに良く知っている訳ではなく“必要なんだろうな”程度の理解しかありません。アイラボを開業して間もなく、ある風俗の経営者から電話が入りました。『この仕事をするからには長くやりたいので色々なことをちゃんとやりたいので定期検査をお願いしたい』という内容でした。
アイラボを22年前に立ち上げましたが、会社経営については全くの素人、営業がまともにできるわけではありませんので、頼みの綱はネットだけでした。そのお客さんから定期検査の依頼は嬉しいの一言でしたが、実はそれだけではなく、性感染症は職業病ですので、“キャストや利用するお客さんのために少しは役に立てるかな”と思う気持ちと、“風俗をより良い形で認知して感染症蔓延防止は出来ないか”との思いが脳裏をかすめ、仕事が一段落したらこの問題にとりかかろうと考えました。

しかし、積極的に性感染症対策をしたいキャストさんは少ない

風俗と私達の接点は“性感染症対策”です。
実際、キャストの皆さんは性感染症は怖いとの認識はあるものの、それは他人事であり、実際その火の粉が自分に降り注ぐことはあまり前提にしていないようです。ちょっと信じがたい話ですが、経営者の方が教えてくれました。性感染症のことについてもほとんど知識がない子が多いのだそうです。
普通に考えれば、仕事を始める前に性感染症の予防について十分な教育がなされるべきで、それは当たり前のことと思っていました。
従って、“性感染症対策はキャスト任せではなく経営者の熱意にたよわざるを得ないのが現実ではないかと思います。”

利用される方はそれなりの感染予防に関する知識が必要

ということで、キャストの皆さんは誰一人として病気を隠して仕事をすることはないと思いますが、いつ感染したのか分からないまま仕事をしてしまうことはあり得ます。症状があれば“検査をしなければ”と思うのですが、目立った症状がなければ定期検査の日まで仕事は継続します。従って、風俗を利用される方においては、性感染症がうつる可能性があることを認識しておかなければならないのです。“利用する側とサービスを提供する側双方が十分な知識を持ち合わせることが重要です。”
その点において、今回無料相談をご利用になった方は、(その辺は分かっていながら)その場では冷静さを欠きコンドームなしでの性行為があったようです。無論、HPVだけでなく、すべての性感染症の危険にさらされたわけですから、心配で眠れないのも無理はないでしょう。ただただ、感染しないことを祈る“神頼み”になってしまうのです。

風俗営業従事者の性感染症保有率を学会に報告しました(2010年)

この表は2010年日本性感染症学会にて私が報告したものです。
最も上の赤で示したように、風俗営業従事者における子宮頸がん関連病変(LSIL以上)の検出率は14.5%になっています。通常(一般人)の子宮頸がん検診におけるLSIL以上は1.5%~2.0%との報告が多いようです。このように一般の人に比べると風俗営業従事者の場合はおおむね10倍程になっています。
利用された方が悩まれるの無理はありません。

子宮頸がんからキャストさんを守ることがHPV拡散防止につながる

せめて従業員の皆さんにはHPVワクチンを接種して頂くことができればHPVの拡散は防げます。
そんなことを常日頃考えていますが、(なかなか難しい問題もあります)保健行政に手を差し伸べて頂きたいところです。

パートナーが検診で高度異形成と診断され、私が原因と、、、

アイラボの無料電話相談に、『彼女が子宮頸がん検診で異形成と診断され、俺が原因と怒っているので相談しました。』という男性。話を聞くと、5年ぶりに子宮頸がん検診を受けた30代前半の彼女さん。それまで数回受けた検診では何もなかったのに、あなたと付き合い始めてからこんなことになった(最近結構多い相談です)。検診の結果はHSILで、精密検査を受けるようにとあったようです。頭に来て一年半前から付き合い始めた俺に、「貴方がHPVをうつした!」、、、と言うんですが?確かに彼女と付き合う前に3人程と関係を持ったことはありますが、風俗に行ったことはありません。本当に私がうつしたんでしょうか?
そんな男性の悩みです。

私達の無料相談は“犯人捜し”のためではありませんが

『悩みを聞いて、二人が仲良く生活できるための無料相談です。』と言いながらもご相談には応じています。
このような男性からの“ご相談”や“検査キット購入理由”は結構あるようです。
“子宮頸がんの原因がHPVの感染”によることが国民に浸透してきた証と思います。
淋菌やクラミジアなどのようにおりものの異常や、痛み、さらにかゆみといったいつもと明らかに違う症状が現れると、相手を疑ったり逆に疑われたりしますが、ハイリスク型HPVの感染があっても男女共に全く症状が出ないため、疑われることなく広く男女の間で感染が広まっています。たとえ子宮頸がん検診で“ASC-USやLSIL”と診断されても、(原因が分からなかったので)“貴方からうつされた”的なトラブルはありませんでした。

しかし、現在は違います。
今回のケースの様に、女性の場合は子宮頸がん検診で異常が見つかると「いつうつったのか?」「誰からうつされたのか?」と考えるようです。そして時にはトラブルに発展することもあるようです。
この写真は、他のブログでも使用したものですが、HPVの感染からHSILになるまでを追跡した結果です。
私達の経験では、ハイリスク型HPVに感染しても、すぐにHSILに相当する細胞は検出されないのです。
この写真では限られた期間を切り取ってみているようなものですので、その前の状況は分かりません。

HPVに感染する前から追跡したケースを見てみましょう

一番左側の表は2008年4月(検査時期901)から細胞診検査を始めたケースです。2009年1月になって初めてASC-US相当の細胞が検出されました。このケースはHPV検査を実施していませんので、ASC-USになった時点を感染時期とした場合2010年10月(検査時期1010)までは、HSILの存在が否定できない細胞(ASC-H)ですら検出されません。私達はこの時期をHPV感染の第一段階と考えています。つまりこの時期は淋菌やクラミジアなどの感染と同じように単なるHPV感染症の位置づけで考えています。
中央の表でも同じように見ることができます。2009年1月(検査時期901)から2011年1月(検査時期1101)の間をHPV感染の第一段階と考えることができますが、2011年2月に初めてASC-H相当の細胞が検出されています。初めての感染からおよそ2年間はHPV感染の第一段階であり、この間は異型細胞が出たり出なかったりを繰り返します。
最も右側の表は2008年11月(検査時期811)にASC-H(HSILの存在が否定できない)が検出され、2010年4月(検査時期1004)までの間はNILM、ASC-US、ASC-H、HSILが出たりでなかったりを繰り返しています。私達はこの間をHPV感染の第2段階と考えています。
HSILは中等度異形成、高度異形成、上皮内癌相当の細胞が見られた時に診断されます。LSILは軽度異形成相当の細胞が見られた時の診断で、前述のようにHPV感染症の位置づけです。しかし、中等度異形成以上は感染症の域を超え、ヒトの細胞の中にHPVの遺伝子が組み込まれた状態になり、感染症から腫瘍(がんの方向に向かう増殖)の性格をもった段階と考えられています。従って、感染と腫瘍の両方の細胞が出現します。
2010年4月以降は自己採取法で採取された検体でもASC-H以上の異型細胞が毎回検出されるようになります。
私達はこの時期をHPV感染の第三段階としています。

さて、話を本題に戻りましょう

質問の内容をもう一度整理しておきましょう。
男性の方は1年半前からお付き合いを始めたと言っております。また女性の方は過去5年間は子宮頸がん検診を受けていなかったようです。
私達は日常無料相談を実施していますが、その理由は、女性にとって婦人科の敷居が高く、おりものや臭い、痛み、かゆみなどの症状があってもついつい我慢をしてしまうことで、病気の発見や治療が遅れてしまいますので、先ずは気軽に相談できる場が必要だと考えたからです。この無料相談は犯人探しのためではありません。皆さんがお互いの誤解を解き、これからも仲良く過ごせるために役立てばと考えています。

『一年半前から付き合い始めた俺が原因でHSILになってしまったのでしょうか?』との問いに対し、前の表で説明させて頂いたように、「その可能性はゼロではないかも知れませんが、頻度的には少ないと思います。」という答えになるでしょう。
また、男性が言う『彼女さんは5年間子宮頸がん検診を受けていなかった。』ということから考えれば、「お付き合いされる前に感染していた可能性はあるかも知れませんね。」ということも考えられます。

あくまで可能性の話しであって真実は不明

今回の男性からの質問に対しては、私達がこれまで経験したことやそれを学会で発表した内容を踏まえ紹介しました。その結果はあくまでも“可能性の域を脱していない” のです。

HPV感染についての対応には、「(今お付き合いしている)貴方にうつされたと豪語する女性」「以前にお付き合いした人もいるのでと冷静に対応できる女性」「大切な人にHPVを感染させたくないという男性」「お付き合いしてもいいけどHPVに感染していないか調べてくださいという女性」「俺がうつしたと言われて無実を証明したいという男性」「(俺がうつしたかどうかは分からないけど)勇気を出して誤った男性」、、、といったように対応は様々です。

さあそんな時あなたはどう対応しますか?

人生誰にも過去があり、そして新しい出会いがあります。
新しい人生を歩み始めた二人にはそれら過去を乗り越えて二人にとっての“幸せ”を築いて頂きたいものです。
今回のご相談内容の場合、(もし二人がこれからもずっと一緒にいたいのであれば)こんな対応はどうでしょうか?

今回、子宮頸がん検診を受けたらHSILと診断されて精密検査を受けることになっちゃった。』「それは俺が原因なのかな? そうだとしたらごめんね。」『いや、いつうつったのか分からないけど今見つかってよかった。近いうちに婦人科に行ってくるね』「そうだね。早く見つかれば悪いところだけ治療すればいいみたいだから、むしろ良かったよ。」『うん。だからあまり心配しないでね』、、、如何でしょうか?

セルフメディケーション! 子宮頸がんはHPV感染対策から

HPVに感染しないためには、対策はいろいろあります。
そもそも、どういうメカニズムで感染するのでしょうか?
例えば、HPVがたくさん存在する腟分泌物を男性性器にそっと塗ってみたとします。
実はこれでは感染しないのです。セックスは性器と性器が直接接触し、更に擦るという物理的刺激が加わります。
そのことによって目に見えない小さな傷がつき、HPVはその傷口から侵入して感染が成立します。
従って、コンドームを使用することで性器の大半は守られますが、コンドームから外れる男性性器の付け根の部分は危険にさらされます。従って、コンドームの使用は完璧には防御できませんが、かなりの確率で守れる可能性はあります。最も有効な方法は男女共にワクチンの接種ですので、真面目に検討する意義はあると思います。

医師から「勝手に判断しないで!」と言われちゃった。

性交渉の後、いつも腟がイカ臭くなっておりものが増えます
おりものの色は灰色っぽくて、たまに痒みも出るためネットで調べたらどうやら“細菌性腟炎”らしいので婦人科を受診しました。
先生には「おりものの臭いが気になることを伝えたところ、クラミジア・淋菌・梅毒の3種類の検査をしてくれました。
しかし、自分が心配なのは細菌性腟炎なので、細菌性腟炎とカンジダ腟炎の検査をしてほしいとお願いしたところ、『勝手に判断しないで下さい。』と言われ、自分が希望した検査はして頂けませんでした。早く今の症状の原因を調べて治したかったので、アイラボのキットの中の「完治確認検査:細菌性腟症」を選んでキットを購入しました。

実はこの方のようなケースとっても多いのです。自己診断は如何に?

早速弱拡大で見てみましょう。
白血球はそれほど増えていませんので、腟炎の状態ではないようです。
ですから、この段階で“細菌性腟”については不正解ということになります。
ご覧の通り、一見腟内はきれいな状態に見えます。
弱拡大の中央付近を拡大してみました。
私のブロブを見て頂いている方は何を言いたいのかわかりますよね。
明らかな乳酸菌の仲間は全く見られず、(青っぽく染まる)細かな細菌(腟ガルドネラ菌)がたくさん見られます。
正解は“細菌性腟”です。

細菌性腟症と細菌性腟炎は違います

ネット上には細菌性腟症と細菌性腟炎を混同して使われている方が多いのです。
専門の先生方でも細菌性腟症を細菌性腟炎と表現される方は少なくありません。
細菌性腟症の多くは炎症(白血球の増加)は伴わないのです。
多分検査を依頼された方も誤った表現を見てしまったので、“細菌性腟炎”と言ってしまったと思いますが、イカ臭い(生臭い=魚臭帯下)症状や灰色っぽいおりものがあることから、(本当は)細菌性腟症と言いたかったのだと思います。
従って、この方は自分で検査をして『大正解』という結果になりました。

細菌性腟症は治療すべきか?

細菌性腟症の主たる細菌は腟ガルドネラ菌です。
いったいこの菌はどんな菌なのでしょうか?
少なくても私が知る限り、細菌性腟症の主役であることには間違いないと思います。
いや、見方を変えれば、本来腟内を守っている乳酸菌が主役なのに、その主役がどこかに逃げてしまったので、腟ガルドネラ菌が主役に抜擢されているのかも知れません。乳酸菌は言うまでもなく腟内の糖分(グリコーゲン)を栄養源として旺盛に増えますが、その過程で“酸”が作り出されます。“酸”とは、皆さんが良く知っているものではあのスッパイ“お酢”です。お寿司にはこのお酢を使います。お酢は酸度が高いため、菌を殺したり菌が増えるのを抑える働きがあるのです。つまり、乳酸菌は腟内で増えることにによって強い酸性の環境(Ph3.5程)を作り出すことで、肛門から入り込んで来る腸内細菌が増えることを防いでいるのです。これを腟の自浄作用と言います。
ところがこの主役(乳酸菌)がどこかに行ってしまうと、当然腟内の酸度は低下して中性(Ph7.0)の方向に進みます。
そんな時、腟ガルドネラ菌が増えてくるのですが、見方を変えれば(乳酸菌のやつどこへ行ったんだよと言いながら)乳酸菌の代わりに弱いながらも、酸を作るのです。でもその量は少ないため、腟内の酸度はPh4.5以上になってしまうのです。それでも何とか他の菌を増やさない環境を守っている状態が“細菌性腟症”なのではないかと思ってしまうのです。

でも困ることに、腟ガルドネラ菌が腟内を守っている(仮定)ときに嫌な臭い(魚臭帯下=魚の生臭いオリモノ)を発生してしまうのです。なので、アイラボでは、臭いやおりものが気になるようであれば治療を勧めますが、臭いが気にならないのであれば、腟炎の状態になってしまう前(細菌性腟症の内)に(乳酸菌を呼び戻し)正常の状態に戻す努力をするのが良いのではないかと思っています

腟ガルドネラ菌を殺し、乳酸菌を殺さない抗生物質はフラジール

細菌性腟症の状態であれば、フラジールが最適な治療薬です。
腟ガルドネラ菌を殺し、乳酸菌の仲間は殺さないとても都合の良い抗生物質なのです。
ところが、細菌性腟症の状態の時に、より強い抗生物質(クロマイ座薬)を投与してしまうと大切な乳酸菌まで殺してしまいますので、一時的にはきれいになるのですが、すぐに再発してしまう事が多いようです。
しかし、細菌性腟症の状態を過ぎて腟炎を伴ってしまった状態では、(やもうえず)最初に強いい抗生物質で全ての菌をたたいたうえでフラジールを追加することで、徐々に乳酸菌の仲間を増やせると考えられています。

どうしたら逃げてしまった乳酸菌を呼び戻せるか?

これは私達の専門外の話になってしまいますが、今色々な乳酸菌サプリが出回っています。
それらを試してみることも良いかも知れませんが、私達の経験では、少し時間がかかるかも知れません。
大切なことは規則正しい生活習慣を身に着ける事が一番かと思います。
乳酸菌が十分増えるまでは腟内を静かな状態にしてあげるのが良いのではないかと思います。
腟洗浄は大切な乳酸菌を洗い流してしまう行為ですので、婦人科の先生がされる以外はお勧めできません。
入浴時にお湯が腟内に入ってしまう方がいらっしゃるようですが、そのような状態の場合、毎日腟内洗浄しているのと同じですので、そんな時は、しばらくシャワーだけにするとか試してみましょう。

セルフメディケーション!自分の力で乳酸菌を取り戻しましょう

悩まれているのであれば、アイラボの無料相談(042-652-0750)をお気軽にご利用ください。
相談したからと言ってキットを購入する必要など全くありません。
私、シイナを(電話口に)呼んでください!

自分では臭いは気にならないが? QOLは大切!

50代女性の方からの電話相談を頂きました。
「自分では臭いやおりもの症状はないと思っていますが、肛門付近に小さなイボのようなものがあり少し気になります。女性にとってはいくつになってもQOLを大切にしたいと考えています。子宮頸がん検診は市の検診を定期的に受けていますが、今まで特に問題はありません。アイラボの“婦人科トータルセルフチェック”“HPV検査”を受けたいと思いますが、このキットでよいでしょうか?」というご相談でした。

アイラボの回答は「子宮頸がん検診を定期的に受けているとのことですので、子宮頸がん関連のキットは必要ないと思います。従って、“おりもの&臭いの検査”または“腟内フローラチェック”を選んでいただければ良いと思います。また、肛門付近のいぼ状のものについては“コンジローマ検査”が良いと思います」とお答えしました。

すると、「でも子宮頸がんについても調べておきたい」とのことでしたので、“婦人科トータルセルフチェック”“HPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマ”を選んで頂いて、肛門付近のいぼ状の所からも綿棒で採取して頂くようお願いしました。

その結果を見ると

写真の様に、腟内は白血球が若干増加(腟炎)し、乳酸菌がほとんど見られず、腟ガルドネラ菌が腟内を支配している状況で、その他の検査結果には異常は見られませんでした。

従って、結果のご報告は、『弱い腟炎を伴う細菌性腟症が疑われます。』といった内容でご報告させて頂きました。その後、検査を受けられた方から白血球の増加はどうして起こるのかといったお問い合わせがありましたので以下のように説明しました。
「白血球の増加は、生体の防御反応のひとつで、その多くは通常腟内に存在しない微生物の侵入によることが多いと思います。一般的には淋菌やクラミジア、トリコモナスやカンジダなどの感染症があると白血球が増えます。しかし今回の検査では、そのような感染症は見られませんし、細菌性腟症のみで白血球が増えることはあまりありません。従って、今回のケースではその理由は明らかにできません。ただアイラボでは、他の検査で全く異常が見られまいケースで、強い炎症が見られる場合はマイコプラズマやウレアプラズマの追加検査をお勧めする場合があります。しかし今回はそれほど強い炎症像ではなかったため、あえてその旨の記載はしませんでした。」

結果的にこの方は“マイコプラズマチェック”を追加で受けられました。

その結果は、マイコプラズマ パルバムが陽性

マイコプラズマやウレアプラズマ感染症については、欧米と日本でその対応が大きく異なるようです。
その大きな違いは、欧米では「感染症として対応する」のに対し、わが国では「そんなもの雑菌だ!」程度に考えているお医者さんが多いようです。私達が「マイコプラズマチェック」のキットを提供し始めた10年前には陽性の結果が出た場合でも適切な治療が受けられないケースもあり、遠方の医療機関をご紹介することもありましたが、最近ではそのようなケースはなくなりました。

「黄色いおりものがあるのに検査では異常なし」その裏に潜むもの

私達が日常の業務としている婦人科細胞診(子宮頸がん検診で行われている顕微鏡で異常な細胞があるかどうかを調べる検査)では、子宮頸がんに関係する異常所見がなくても“白血球が増えている(=腟炎がある)ケース”は決して少なくありません。しかし、検査時の医師の内診所見では、極めて高度の炎症以外は“NP(no problem)”とされることが多いのが現状と思われます。
私達は「過剰検査になってはいけない」し「このまま見過ごしてよいのだろうか?」とても迷うことが多かったのですが、最近は比較的強い腟炎を伴っているケース(おりものが黄色)で、淋菌・クラミジア・カンジダ・トリコモナス等の感染症が見られないケースに限って“マイコプラズマチェック”をお勧めすることにしています。

アイラボは“セルフメディケーション!自分の健康は自分で守る”を応援します

結果的に、今回ご紹介したケースの方は、ご自身はいくつになってもQOLを大切にしたいという思いがあり、最後までお付き合い頂きました。私たち検査キットを提供させて頂く側にとっても、“胸のつかえが取り除けた思い”です。
アイラボは、“セルフメディケーション! 自分の健康は自分で守る” を応援しています。

オリモノが以前から多く、時々出血もある

以前から黄色や白いおりものが多く、時々痒みや不正出血もある30代の方から“腟内フローラチェック”を依頼されました。

依頼された方の情報からは「黄色いおりものが多い」という点では腟炎を起こしている状況かな?と推測します。また、痒みもあるということですので“トリコモナスやカンジダ症”があるのかな? と推測します。
そして時々「出血もある」ということですが、腟炎も強ければ出血を伴ってもおかしくないのかな?
そんな思いで検査を始めました。

この方の弱拡大画像です。
やはり白血球が若干増えて、軽い腟炎を伴い、全体的に汚く見えます。
さて、腟炎の原因は何なんでしょう?
拡大を上げてみましょう。
まず目の前に飛び込んできたのは、写真中央付近にややピンク調の楕円形を示す物質です。
これはまさしくカンジダの胞子です。

従って、黄色いオリモノのが増えているる(カンジダ症でも腟炎を伴なわない時は白っぽいおりものです)ことや時々痒みがあるという自身の症状に合致した所見で“カンジダ症に伴う腟炎”が考えられます。その影響もあって、腟内に乳酸菌は減少し、腟ガルドネラ菌や複数の細菌(雑菌)が見られます。
従って、腟内フローラの状態から見れば『乱れている』という結果になります。

このままにしておいてはいけませんね

おりものの異常は、様々な原因で起こります。
今回は“腟内フローラチェック”の依頼を頂きましたが、この検査の中には“カンジダ症”と“細菌性腟症”が入っていましたので、このキットを選んだ方は『正解』ということになります。

かなり前から症状で悩まれていたとのことですが、ご自分が悩まれている状態のときは当然のことですがパートナーにも不快な気持ちにさせてしまう可能性があります。

従って、この度は早めに婦人科を受診して治療されることが大切になります。
今回は、淋菌やクラミジアなどの感染症については調べていませんので、クリニックの先生によってはカンジダの治療だけでなく、それらの検査も追加でして頂ける場合もあります。
もし、検査キットご購入前にご相談頂ければアイラボとしては“おりもの&臭いの検査”をお勧めしたと思います。

「おかしい? いつもと違う」と思った時は

アイラボが郵送検査を始めた理由の一つに、女性のQOL向上にお手伝いをしたい。
そんな思いがありました。
なぜか? 私達の本職は子宮頸がんを早期に発見する“婦人科細胞診”です。
この仕事をしていると、子宮頸がん関連病変(HPV感染とかLSILなど)だけではなく、多くの感染症が疑われる所見も見えてくるのです。その中でカンジダやトリコモナスが確認できれば報告されますが、それ以外の感染症が示唆されても報告書に反映されないことが大半です。時には腟炎が見られるとの報告もあるかも知れませんが、腟炎があったと報告されてもその原因を調べるために婦人科を受診するケースは決して多くありません。

結局のところ、何だか分からないままで終わってしまう事も少なくありません。おりものや臭いなど、ちょっとした不安ならクリニックを受診しなくても手軽に調べられる機会があれば、我慢することなしに“異常”を早く見つけられるのです。そしてもし異常が見つかれば、その時点で治療すれば多くの場合症状は改善し、元通りの健康を取り戻せるのです。
悩んであれこれする前に、先ずはその原因が何なのか? をはっきりさせることが大切です。

お洋服やお化粧と同じように体の健康維持を!

セルフメディケーション!
あなたの健康を守るのは貴女だけです。
おりものや臭いが心配な時はおりもの&臭いのチェック

子宮頸がん検診では教えてもらえない話し

パパニコロウ先生が世に送り出した婦人科細胞診とは。
私がたどり着いた結論は、『婦人科感染症の最も安価で、最も正確な総合的診断法』です。
この一枚の写真にどんな感染症が秘められているのか?

白血球が若干増えているので、腟炎があるのかな?、、、と見ます。
背景には乳酸菌(大切な細胞にピントを合わせて撮影しているため、詳細に確認できないが)が豊富に見られます。
このことから、“若干炎症は伴っているものの腟内フローラ(乳酸菌)はしっかりしている” ことが分かります。
でも、赤の矢印で示した細胞が気になるのです。
前の写真のすぐそばを撮影した写真です。
赤の矢印の先にある細胞は前の写真と同じ種類の細胞です。

それとは別に、黄色い矢印で示した細長い少しぼやけた棒状のものが見られます。
赤で示した細胞にピントを合わせたため、多々ぼやけていますが、他の場所でもっと分かりやすい画像がありますのでそちらを見てみましょう。
この場所なら一目瞭然、カンジダの仮性菌糸であることが分かります。

ということで、このケースはカンジダ腟炎を起こしていることもわかりました。

濾胞性頸管炎があるかも知れない!

赤の矢印の先端にある丸い核を持った細胞はリンパ球です。
リンパ球には小さな細胞と写真のようにやや大きな細胞があります。
成熟したタイプのリンパ球は小型で血液中にもみられます。それより倍以上に大きくなったリンパ球は反応性リンパ球と呼ばれます。このような反応性の大型リンパ球が出現する背景には“リンパ濾胞”というリンパ球の集まりがあります。子宮頸がん検診の検体を見ていると、時に成熟リンパ球と反応性の大型リンパ球が同時に見られることがあり
濾胞性頸管炎と診断します。
つまりこの患者さんは子宮頸部に濾胞性頸管炎が存在する可能性があるのです。
【標本の作製法がLBC法なので、反応性の大型リンパ球を見つけないと診断は難しいです。(詳細は後述します)】
ではどんな時に子宮頸部にリンパ濾胞ができるのでしょうか?

(余談)クラミジア研究で得られた貴重な体験(三井幸彦先生との出会い)

私がクラミジアの研究をしていた頃、何気なしに講談社から出版された医学百科事典を見ていると、三井幸彦先生(眼科学)が執筆された記事を見つけました。それは今日の日本にはほとんど見ることがないトラコーマ(封入体性結膜炎)に関するもので、こんなすごい研究者がいたのだと思い、かなり興奮してその記事を読みました。

すかさず講談社に電話を入れ、三井先生にお会いしたい旨を伝えると、程なく電話が入りました。すでに徳島大学を退官さえれ、現在はご自宅にいらっしゃるとの事、そして連絡先を教えて頂きました。早速電話をすると、『すぐに来なさい。航空券が取れたら到着時刻を教えてください。空港まで迎えに行きます。白いハンカチを持っているからね。』と優しいお言葉を頂きました。そして、翌日の午前11時には徳島空港に降り立ちました。すぐさま先生のご自宅に直行、お昼をごちそうになった後、先生の一言に驚かされました。『これから3時間私のクラミジア研究についてお話します。その後君のこれまでの研究成果を3時間話しなさい。』とおっしゃったのです。日本のクラミジア研究の第一人者の先生と1対1のシンポジュウムみたいなもの、後にも先にもこんな経験はありません。幸せで幸せでたまらなかった一日でした。
そんな二人だけのシンポジュウムの中で、封入体性結膜炎でもリンパ濾胞が形成されることを教えて頂きました。

夜は市内のホテルで二人だけの夕食会。
『当時、婦人科領域でもクラミジアの研究をするように進言したですが、誰も興味を示さなかったんだよ。
君がクラミジアの封入体の研究をしてくれてとても嬉しい。』そう言われて大変喜んでいただきました。
そして最後に、『ところで椎名君、今どうして日本にはトラコーマがなくなったか知っていますか?』と言われました。『それはね、きれいな水を使う環境になるとトラコーマは自然にいなくなるんだよ。』と教えてくれました。

そして半年後、学位論文の審査会場で杏林大学医学部眼科学教授が最後の質問として、『ところで、日本にはどうしてトラコーマがなくなったのですか?』と質問されました。それはまさしく三井先生の最後の教えそのものだったのです。

学問は素晴らしい! 三井先生本当にありがとうございました。

LBC法では反応性の大型リンパ球の存在が診断のポイント

アイラボもそうですが、この20年余りに、子宮頸がん検診や婦人科細胞診はLBC法が主流になりました。
それまでは、医師が採取した検体はその場でスライドガラスに細胞を塗りつけていましたので、濾胞性頸管炎があると、成熟リンパ球と反応性リンパ球がほぼ同じ場所にまとまって塗られるので診断は容易でした。しかし、LBC法は検体を液の中に洗い落すため、それら細胞はバラバラになり、診断は難しくなってしまいました。

『念のためクラミジアの検査が望まれます』と報告したいけど?
多くの検診機関でそれはNGなんです。

子宮頸がん検診の受診率は決して多くありません。2年に一度しっかり受けている人は50%にも満たないのです。
そんな中、“なんか最近オリモノや臭いが気になる、、、今年は子宮頸がん検診を受けてみよう”、、、そんな人少なくないと思います。トリコモナスとカンジダが見つかった時は報告書に反映されますが、“細菌性腟症が疑われても” “クラミジアの感染が疑われても” 結果に反映されることはほとんどありません。『そのようなことは結果に記載しないで下さい。』というところが多いのではないかと思います。多分、それに関して問い合わせがあっても対応できないからかも知れませんが、とても残念なことだと思います。

従って、“オリモノや臭いが気になって検診を受けた方は、「異常なし」の結果を受け取っても、子宮頸がん関連病変に関しては「異型細胞が見られない(NILM)」にしても、細菌性腟症やその他の情報は教えてもらえないのです。” アイラボでも子宮頸がん検診の細胞診を承っていますが、報告できない施設が少なからず存在しますので、とても残念に思っています。

アイラボの郵送検査では、可能な限り私達が習得した知識は皆様に還元しています。

子宮頸がん検診で『AGC』、、、これって何?

この細胞は、加藤式自己採取器具で採取した検体に見られた異型細胞ですが、アイラボでは『“AGC”と診断して、早い機会に婦人科を受診して子宮の入り口(子宮腟部)から少し奥に入った子宮頸部(子宮頸管内)の精密検査を受けて下さい。』と報告しました。“早い機会に”とあえて記載した背景には『子宮頸部腺がん』の存在が強く疑われたからです。
この細胞は、医師がサーベックスブラシという子宮腟部から子宮頸部にかけて細胞を採取する器具で採取しました。前の細胞とは全く様相が異なり、黄色く染まる粘液が特徴的な子宮頸部に発生する腺がんです。このケースも“AGC”と診断し、同様に子宮頸部の精密検査(組織検査)にて確認して頂くよう報告したケースです。
この細胞は、加藤式自己採取器具で採取された細胞です。細胞の核がやや大きくなり、核小体も大きくなっています。このケースは本来自己採取器具では採取し難い子宮の入り口より少し奥からも採取されています。外反といって内側の細胞がめくれるようにして腟内に露出してくれば自己採取器具でも採取されないわけではありませんが、細胞の核が元気そうに見えるので、(良性の変化)と思われますが、念のために婦人科を受診して再検査を受けて頂く事にしたケースです。

この様に“AGC”には様々な細胞が入ってきます。

細胞診とは、採取された細胞を観察してその病変を推定する診断法です。
“がんと診断できるケース” “がんと思われるが断定が困難なもの” “良性の変化と思われるががんの存在も否定できないケース” など、様々な顔つきの細胞が現れたり、観察する検査士によっても診断には幅がります。
今回ご相談頂いた方は、市町村が行う子宮頸がん検診を受けられ、“AGC”と診断されました。その後この方は、最寄りの大学病院を受診し細胞診の再検査と組織検査、さらにHPV検査を受けられたようです。
その結果、細胞診検査ではASC-US(意義不明な異型細胞)と診断されたためハイリスク型のHPV検査を受けられ「陰性」でした。また、組織検査においても異常は見られなかったようです。

検診での“AGC”は何だったのか? 、、、当然の疑問ですね。

少し専門的な話になりますが、私の回答を以下に示します。

AGCとは“atypical glandular cell(異型腺細胞)“という意味です。
腺細胞とは、“腟内は(皮膚と同じ)重層扁平上皮という強い組織(粘膜)で覆われています。これは性行為や出産に耐えられるように厚く幾重にも細胞が重なって丈夫な粘膜です。一方、子宮の入り口から少し奥に入った子宮頸部は粘液を分泌する(単層の)円柱上皮という組織からできています。その接点を扁平円柱接合部(Squamo-Columnar Junction)といいますが、子宮頸がんはこの境目(SCJ)から発生します。
多くの子宮頸がんは“扁平上皮がん”になりますが、一部円柱上皮の性格を持った癌が発生します。これを“腺がん”といいます。
扁平上皮癌に比べて腺がんは少し奥に発生しますので、“検査で見つけにくい”特徴があるし、“たちが悪い”癌なのです。
この癌を見逃さないため、採取する側の医師は“少しでも奥の方から細胞を採取してきよう”としてお奥まで採取できる器具を使って“新鮮な細胞をごっそり”採取してきます。私たち細胞検査士も“腺がんを見逃してはいけない”という思いが強いものですから、少しオーバーに拾い上げざるを得ない状況にあるのです。

扁平上皮癌の場合は、NILM(正常)→ASC-US(HPV感染があるかも?)⇒LSIL(HPV感染がある)⇒ASC-H(HSILお存在が否定できない)⇒HSIL(中等度異形成・高度異形成・上皮内癌などの前がん病変)⇒SCC(扁平上皮癌)といった具合に進行度によって細胞の顔つきが違います。しかし腺がんの場合はそれほど明確な差が現れず、細胞診の判定も難しいのです

AGCとはそういう状況の中で“異型な腺細胞が見られていますので精密検査で確認してほしい”といった診断であり、検査する側の個人差もありますが、そういう状況をご理解頂ければと思います。

(今回の検査で異常がなかったことで安心頂けます)良かったですね。
検診を受けて“AGC”と診断されたことで、病院を受診して精密検査を受けることになってしまったわけです。
結果は、『現在のところ異常はなく、半年後に再検査を受けることになりました。』と、かなり面倒なこになってしまいました。

しかし、細胞診は“怪しい細胞を拾い上げる検査”なのです。
細胞診に携わる私達にとっては、精密検査に廻すべきか、次の検診まで待っても大丈夫な細胞か?大変難しい判断を要求されますので、自身の技術を磨き、常に高い精度を提供する使命感が求められます

“精密検査を要す”の結果を受けた時は、『セルフメディケーション! 自分の健康は自分でしか守れません!』精密検査を受けて“今回は異常ありません”の結果をもらうことが大切なのです。

HPVに感染していても異常の細胞が出るとは限りません

アイラボを開業して20年以上が過ぎました。
特に女性の健康に特化した活動をしてきましたが、その理由の第一は、子宮頸がんや不妊症などの女性特有の病気は早期に発見できれば“大事にはならない”からです。しかし、女性にとってはいつの年代においても“婦人科は敷居が高い”ものです。そして、そのことが早期発見を遅らせてしまうのです。私達でも、“気軽に相談できる場” や “気軽に検査できる場” などの環境づくりなら社会の役に立てると考え、アイラボを立ち上げました。
そして、先ずは病気を知って頂くために、HPやブログでいろいろな病気や、悩み事を紹介し、さらに顕微鏡画像を取り入れ、病気の見える化にも挑戦してきました。
そんなことも少しは役立ったのか、最近自分の健康についてしっかり考える人が増えてきた気がします。

3年2ヵ月間HPV感染者を自己採取法で追跡調査した成績です

この画像は2,011年12月に開催された日本性感染症学会で『HPV持続感染例における細胞形態学的推移』というテーマでアイラボの藪崎宏美が発表したスライドの一つです。
2008年4月の検査で、細胞診ではLSILの細胞が検出され、HPVタイピング検査では16型と51型の重複感染例として始まりました。その後、2,009年1月まで同じウイルスが持続感染しているにもかかわらず、細胞診ではNILM、ASC-US、ASC-H、NILMといった具合に、異型細胞が出たり出なかったりを繰り返しています。『大切なことは、感染していても異常な細胞が必ず検出されるわけではないということです。』2008年2月から2009年3月まで異型細胞は検出されませんが、HPVが消失したわけではないということがこの写真で分かります。
ですから、以前LSIL以上の異型細胞が検出された人は、一回の検査でNILMになったからといって安心してはいけないということをこの写真は教えています。2009年4月の検査では突然ASC-Hの細胞が出ているのです。
この理由は単に細胞診の精度が悪いというだけでなく、細胞を採取する時期(性周期)にも影響することを、大河戸先生は学会で報告しています。
それ以後、LSIL、ASC-US、NILMと顔つきの悪い細胞は出ていないのですが、2009年の9月になると細胞診検査では前癌病変ともいえるHSILの細胞が検出されました。いよいよ癌に近づいてきたのかなと思いきや、またLSILやASC-USといった前がん病変から離れていくような細胞になります。しかし、2010年4月以降は、ASC-H以上の細胞のオンパレードとなります。このように、細胞診では徐々に徐々にですが、顔つきの悪いUSC-H以上の細胞が途切れることなしにいつの検査でも出っぱなしになります
子宮頸がん検診に用いられている細胞診はこのような特性を持っていることが理解できたでしょうか。

私達は2008年11月の細胞は“癌になるのでは?”と予測しました

写真上の細胞でASC-Hと診断しましたが、当時私達はこの細胞を見た時“がんの前駆細胞(将来癌になる最も初期の細胞)”ではないかと思い、“こいつは絶対に注意しなければいけない奴だ!” と勝手に決めつけていました。ところが、私達の顕微鏡にその姿はなかなか見せないのです。2010年4月以降になって、私達の目の前にやっと本性を現し始め、それ以降は毎回HSIL相当の異型細胞が検出されるようになったのです。そしてついに2011年6月の細胞診検査ではHSIL(上皮内癌)相当の細胞になった時点でこの方は円錐切除術を行いました。

患者さんからの嬉しい手紙

自己採取による定期検査で3年以上追跡検査をした結果の全てです。
職業柄定期検査として細胞診も実施していたケースです。検査を受けられた方が皆さんのためになればとのご理解を頂き、こうしてご紹介させて頂きました。
今回は特殊なケースですが、自己採取型の子宮頸がん検診でも、このように役立つ検査なのです
ご当人にも喜んでいただけましたが、私達にとってもとても嬉しいお手紙です。
こちらこそ、ご協力頂きありがとうございました。
セルフメディケーション!
子宮頸がんになる前に円錐切除術などの適切な処置が可能です

私達は「子宮頸がん検査」という言葉は「過去の言葉」とし、これからは癌になる前に発見する検査「HPV細胞診検査」に変えていきたいと考えています。

病院での検査や健診が苦手な人は無理をしなくても検査を受けることが可能です。

心配な方はお気軽にご相談ください。