淋菌とクラミジアの検査を依頼された方でも、アイラボでは

細胞診による子宮頸がん検査や淋菌やクラミジアの検査は通常医師が診察時に採取します。
従って、アイラボのような検査所に届いた検体は“医師によって適正に採取されている”ことが前提で検査を開始します。
細胞診検査では、届けられた検体は特殊な染色を行った後細胞検査士が観察しますので、たとえ医師が採取した検体であっても目的の細胞が採取されていない時は『判定不能』として報告し、再度採取していただく事になりますが、淋菌やクラミジアなど採取された検体をそのまま測定機にかけるため、多くの場合それが適正な検体であったかどうか分からないことがあります。例えば、郵送検査で尿を用いて淋菌やクラミジアの検査を依頼した場合、尿の代わりに市販のペットボトル入りのお茶を入れたらどうなるでしょうか?その結果は『陰性』で届きます。本来であれば『不適切検体』となるべきですが、そのような報告にななりません。
そんなこともあり、アイラボでは郵送検査を提供している全ての検体は検体の適否判定を実施しています。
上の写真が、適否判定用の標本で、下が子宮頸がん検査用の細胞診標本です。
観察する面積は少ないですがこの手間を加えることで、検体の適否判定のみならず、白血球の増加(炎症)があるかどうか?など、いろいろな情報をお客さまに還元できるのです。
実際この様に観察しています。

検体の適否判定が目的ですが、思いもよらない情報が!

いくつかの事例を紹介します。

1)男性の方で、“尿道の淋菌クラミジアの検査”を依頼されました。が?
  標本中には異型細胞がゴロゴロ、淋菌クラミジアは陰性でしたが、『早急に泌尿器科を受診して
  精密検査を受けるようコメントしました。』


2)女性の方で、“腟内フローラチェック”を依頼されました。が?
  標本中には白血球の増加が著しい(強い腟炎が見られた)ため、『おりもの&臭いの検査の追
  加』
を提案させて頂きました。しかし、いずれの感染症も陰性でした。アイラボではこのような
  場合、追加検査で『女性のマイコプラズマチェック』を提案させて頂いています。ただしこの検
  査は高額なため、あらかじめ担当者にご相談頂くようコメントした上でご本人に判断して頂きま
  す。 その結果、マイコプラズマ・ジェニタリウムが検出されました。

3)女性の方で、シンプルキットではない“おりもの&臭いの検査”を依頼されました。が?
  標本中には、HSILの存在を疑わせる異型細胞が見られたため、追加で『最新の子宮頸がん検査』
  または『子宮頸がん+HPVタイピング検査』を提案しました。細胞診検査を追加した理由は、検
  体の適否判定標本は観察面積が限られているため、正規の標本で確認する必要があるためです。
  また、HPVタイピング検査を提案した理由は、HPV感染は明らかなので、若干高額になりますが
  感染しているHPVの型を調べておくことが今後の経過を見るうえでも有益と思われるからです。

婦人科細胞診標本は最も安価な婦人科感染症の総合検査

アイラボでは、検体の適否判定に細胞診(パパニコロウ染色)標本を用いています。その理由は、婦人科検査材料(自己採取子宮頸がん検査、腟内フローラチェック、おりもの&臭いの検査、等)のパパニコロウ標本は腟内や子宮頸部の状態を容易に広範囲に見ることができるまさにスクリーニング検査に最適な標本だからです。
子宮頸がん検診に子宮腟部・頸部のパパニコロウ標本を用いているため、子宮頸がん関連病変の細胞の有無を見るだけでなく、『炎症の有無』『ホルモン状態』『トリコモナスやカンジダなどの感染症』等々、たくさんの情報が提供されます。これを無駄にせず、受診者に可能な限り伝える事の重要性をアイラボでは訴えています。

婦人科細胞診はがんの早期発見だけでなく、感染症の早期発見やQOLの向上に有益な方法ですので、郵送検査部門での普及に期待されます。

子宮頸がん検診でもクラミジア感染が分かった!

私の教え子の何人かが、アイラボで細胞診の仕事を手伝ってくれています。
そんな一人(昨年まで杏林大学保健学部で細胞診の教育をしていた飯島淳子さん)が「クラミジアかも?」と言って、彼女が観察した標本の再チェックを依頼してきました。“ちょっとうれしい空気が職場に流れます。” (余談:教え子が社会に出、そして第一線での仕事を終え、そしてまた一緒に仕事ができること、私にとってこんな幸せはありません。)

私が教員時代に最も熱心に取り組んだのがクラミジアに関する研究でしたから、特に、婦人科細胞診検査でクラミジア感染の診断が可能な特徴的な所見である星雲状封入体らしきものを発見したときは、一応に皆“ちょっとうれしい雰囲気になるのでしょう。”

それでは今日の星雲状封入体らしき細胞を見てみましょう。
写真の背景には白血球がたくさん見られ、“ひどい腟炎”であることが容易に分かります。写真中央には細胞が比較的平面的に並んだ集塊が見られますが、これは扁平上皮化生細胞の比較的未熟な細胞です。実はクラミジアはこの細胞で最もよく増えるのです。
そしてどうやら写真の中心部分に細胞の核と同じように染まる少しぼやけて見える部分が見られます。そのぼやけた部分とその左側にある細胞の核との間に白い仕切りのように見える構造が見られます。
これは“ピンポン”だと思いますが、拡大してみましょう。
ぼやけて見える封入体の部分をもう少し細かく観察すると、ぼやけている中に少し濃く染まったゴマ粒のようなものが見えます。
これは網様構造体と言って、成熟する前のクラミジアなのです。既に成熟したクラミジアはそれより粒子が細かいため、光学顕微鏡ではぼやけて見えます。
私はこの“ぼやけた中にやや濃く染まる粒子を見た時”これはあたかも“星雲”のように見えたので、これを星雲状封入体(nebular inclusion)と命名しました。

典型的な星雲状封入体です。

この細胞はクラミジアの研究当初に発見したクラミジア感染細胞です。

研究は素晴らしい!

実際、星雲状封入体を診断できる細胞検査士は少ないと思いますが、
細胞形態学的にはとても興味ある研究でした。
研究当初は、何も分からないことからのスタートでしたが、
根気よく続けたことで発見できた形態です。
研究って素晴らしい!
今日はちょっと自慢話になってしまいましたが、、、

努力は決して無駄にならない。
努力は必ず報われる。
努力した人は本当の幸せを味わえる。


今日は幸せな一日でした。

CIN 1で3ヶ月に一度検査しているんですけど、それって何?

趣味の会で初めてお会いした方に名刺を差し上げましたところ、アイラボさんてどんなお仕事をされていますか?ということで、『子宮頸がんやおりもの検査などをしています』といって、簡単な説明をしました。すると、「私、検診でCINの1と言われ、3ヶ月に一度婦人科を受診していますが、これって(CINの1)どういうことなのか良く分からないんですけど?」婦人科の先生はどのように説明してくれましたかと尋ねると、「何か専門的な説明はしてくれたのですが、私自身全く理解していません。」HPVというウイルスについても説明はなかったんですか?と聞くと、「全くありません」、、、と言うのです。
子宮頸がんとHPVの関係については、HPVワクチンのこともあるし、大半の国民は「知っている」と思い込んでいましたが、お話を聞いている時の表情から、ご自分の(CIN 1 )がHPV感染が原因であることは全く知らなかったようです。お医者さんも、そんなこと当然知っていると思い説明はされなかったのでしょうか?私のブログを見ている皆さんはそんなことないですよね。
立て続けにその方は「HPVの感染って、どうして起こるんですか?」と聞いてきました。
このような方に説明する時は、(その後、パートナーやご主人さんとの対応のことを考えると)一瞬緊張しますが、正直にお話しさせて頂いています。そして、感染しても全く症状がないのでいつ感染したのか全く分からない事多くの女性(日本ではなく欧米の調査では70%)は生涯一度は感染すると言われている事を伝え、だから子宮頸がん検診は世界中で行われている事、トラブルにならないでくださいね、と伝えるようにしています。
このようなことももあり、最近男性のHPV検査が増えています。その理由として、“大切な人に感染させたくないと思う(風俗利用経験があったり、複数の女性とお付き合いの経験がある)男性”、“お付き合いしてもいいけどHPV感染が心配なのでHPV検査を受けてくださいという女性”が増えているようです。

またまた話が横道にそれてしまいました。

この機会にCIN 1について説明しておきましょうね。
CIN 1とはCervical Intraepithelial Neoplasia の略で、日本語では子宮頸部上皮内腫瘍という意味の病理学的表現です。子宮頸がん検診は細胞診という方法で行われますので、(病理学的表現ではなく)
LSIL(Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion) 軽度扁平上皮内病変(軽度異形成)と表現されます。
軽度異形成とは、クラミジアや淋菌と同じようにHPVというウイルスの感染症という位置付けになります。
つまり、この方の現状は、HPV(ヒトパピロマウイルス)という子宮頸がんに関係のあるウイルスが感染しているという意味になります。(この写真は当人のものではありません)

アイラボの報告書で(CIN 1=LSIL)はどんな状態なのか?

この写真は、アイラボの郵送検査や健康保険組合から依頼された方に使用している細胞診の報告書です。一般の方にも理解して頂けるように若干表現を変えています。そしてもし異常が見られた場合、日本中どこの婦人科を受診されても先生方にご理解いただけるように診断の根拠となる細胞の写真を添付しています。
報告書の内容をもう少し個別に説明しましょう。。
この方が診断された「CIN 1」つまり軽度異形成(LSIL)は、子宮頸がん関連病変の中の入り口に相当する段階です。前にも述べたように、“HPVというウイルスの感染がある”という段階で、前がん病変ではありません。しかし、HSIL (高度扁平上皮内病変)の中の中等度異形成になると、人の細胞の遺伝子の中にHPVの遺伝子が組み込まれた状態になり、LSILの感染症から腫瘍の性格を持つ細胞へと性格が変わります。その意味では中等度異形成・高度異形成は前癌病変と言えます。
“ASC-HはHSILの存在が否定できない”時に使われる分類です。

子宮頸部のHPV感染については、その90%が免疫力によって自然に排除されると言われてります。
しかし、残りの10%が感染し続け(持続感染)中等度異形成や高度異形成に進みますので、LSILと診断された場合は定期的追跡検査が必要になります。
最近では、感染しているウイルスの型を調べることも可能になり、アイラボでは「HPVタイピング検査〈ハイリスク13種)」Kit005で調べることができます。
検診で、LSILと診断された時には婦人科を受診することになります。そしてもう一度細胞診検査を受けます。その際は「子宮頸管を含め」検査して頂くことを特に強調しています。その理由は、子宮の入り口から少し奥に入ったところに発生する“子宮頸部腺がん”を見逃さないためです。特に自己採取法で採取されたケースでは十分な細胞が採取されていない可能性があるので、この点を強調しています。(医師採取においても頸管内の細胞が採取されないこともあります)
再検査の結果“NILM”になることは少なくありません。採取の仕方がまずいことや性周期によって細胞が取れにくいことがあるためでです。確かにLSILの90%はいずれNILMになりますが、HPVが排除されたからと考えるのは誤りです。主治医の指示に従って定期的な検査が必要です。
細胞診とは別に、“HPV検査でウイルスがいなくなったかどうかを調べることも可能です。”

追跡検査は面倒がらずに受けましょう。

検診でHPVの感染を見つけたのですから、それを無駄にしないためにも追跡検査は面倒がらずに受けてくださいね。
追跡検査は通常細胞診で行います。LSILからNILMになることは、“異常な細胞がなくなった”ということですが、“HPVが排除された”わけではありません。排除されたかどうかはHPV検査の方が精度が良いと思います。
追跡検査のもう一つの意義はLSILより進行したHSILの細胞に代わっていないか?を見るためです。そのためには細胞診は欠かせない検査になります。

婦人科医からの細胞診依頼書にBV susp.の記載

“子宮頸がん細胞診検査で細菌性腟症が疑われても報告書にはその旨を記載しないで下さいということが検査機関内の取り決めになっていることがあります。
子宮頸がん細胞診検査が本来の目的ですので、“それは当然かも知れませんが、カンジダやトリコモナスは報告されるのに細菌性腟症はなぜ?”という思いで日々矛盾を感じています。
現に、婦人科の先生方からの検査依頼書に細菌性腟症(bacterial vaginosis=BV)に関する記載があること自体極めてまれなことです。
この度そんなまれなケースを経験しました。検査依頼書にはASC-USのfollow-upHPV検査(-)に加え、BV susp.とありました。こんな単純なことですが、私にとってはとても嬉しい出来事です。

私が細菌性腟症の研究を始めるきっかけになったのは子宮頸がん検診の検査依頼書に“におい⊕”と記載する女医さんがおりました。その先生に「先生が記載されるにおい⊕には何か意味がございますか?」と質問したことがあります。その先生は「父が診察の時に気づいたことはメモをするようにと言われていますので、“少し臭いが気になる患者さんにはそう記載しています。」という返事が返ってきました。”

子宮頸がん細胞診標本の中に細菌性腟症が疑われる所見が見られても、婦人科医はもとより患者さんにもこの情報は伝わりませんので、当然治療もされません。臭いは気にならない方もいますので、すべてが治療の対象ではないのですが、『細菌性腟症が疑われます(BV susupect)』の結果をもらった先生は『治療しますか?』と訪ねてあげることが出来ます。
今回は検査の責任者に『お医者さんが検査依頼書に“BV susp.” と記載しているのですから、是非報告書に反映させてください』とお願いしました。
今回検査した標本の中にはASC-USに相当する異型細胞は見られなかったのですが、典型的な細菌性腟症が疑われる所見が見られます。
やや紺色に染まっているもやもやが腟ガルドネラ菌の塊です。もちろん明らかな乳酸菌は見られません。
このようなほぼ典型的なケースについては多くの細胞検査士の方も診断に迷うことはないと思います。

細胞診検査を受けてもBVの報告は期待できないことが多いかも?

日本人は検診を受けるのが苦手な国民かも知れません。
『なんだか最近オリモノや臭いが気になるので今年は検診を受けてみよう。』そんな方、少なくないかも知れません。しかし、前述のように、子宮頸がん関連病変についての“異常”は見られなく安心できても、気になっていたオリモノや臭いの原因は“分からないまま”で終わってしまいます。
BVは病気というよりは腟内フローラの乱れによるものですから、“絶対に治さなくてはいけない病気ではないかも知れません”が、少なくてもQOLの面からは気になる方が多いのではないかと思います。

気になる方は是非ご相談ください

なぜかというと、細菌性腟症の原因は様々です。
勿論、腟内洗浄が原因で腟内フローラの環境がくるってしまう方が多いと思いますが、それだけではありません。
10代後半から20代に多く、30代でいったん減少し、40代後半からまた増える傾向があります。私の経験に基づく解釈では“10~20代は活発な性行動”、“30代は子育て中で性行動が安定”、40代以降に増加する原因は様々でそのひとつには入浴による(思いもしない腟洗浄)を考えています。

ご相談はお気軽に!
042-652-0750で椎名が承ります。
月曜日、土曜日は休みです。
水木金の午後はおおむねOKです。


検査を希望される方は
1)おりものが黄色い方は「おりもの&臭いの検査」
2)臭いだけが心配な方は「腟内フローラチェック」

10代でも勇気を出して検査してよかった。

子宮頸がん検診は20歳から?そうですかね。
私は“セックスを始めたら子宮頸がん検診は定期的に”だと思います。
今回は10代後半の女の子についてお話しします。
『おりものがだんだん多くなってきた。でも、病院に行く勇気はない。(理由は)何と言っていいのか分からないから』と言います。そこで病院には行かなくても郵送で検査できる『おりもの&臭いの検査』を選んだと言います。 ちなみにこのキットで調べられるのは淋菌、クラミジア、細菌性腟症、トリコモナス、カンジダ、それに腟炎です。

早速顕微鏡を見ましょう (今回は4枚の写真を見て頂きます)
この検査では、検体が適正に採取されているか? トリコモナスやカンジダはいないか、さらに細菌性腟症が疑われる所見がないか?腟炎を起こしているか?について顕微鏡で観察できる標本を作製します。
(淋菌とクラミジアは他の遺伝子検査に廻します)
この写真は皆さんにおなじみの細菌性腟症の典型的な所見です。
この方が勇気を出して検査してみようと思ったのは細菌性腟症が原因でしたね。
その他にも白血球増加していますので、腟炎を伴っているようです。この写真の中にはトリコモナスやカンジダは見られませんが、淋菌やクラミジアなど、その他の感染症もチェックしておきたいところですね。
他の場所を見ても、細菌性腟症と腟炎を疑う所見は同じですが、写真の中央には核がいくつもあるように見える(異常な)細胞を認めます。HPVの感染による変化なのかな?、、、と考えます。
他の場所には、細胞の大きさに比べ核の占める割合がとても大きな(異常な)細胞もみられます。
核の構造がちょっとおかしく、やはり核の中で何かが起こっているのかな?、、、HPVの感染に伴う変化なのかな?、、、16型の感染があるのかな?、、、中等度異形成(CIN2)程度の病変があるのかな?、、、そんなことを考えながら見ています。
別の場所にはこんな細胞もみられます。
やはり、腟炎だけではこのような細胞は見られないよな?、、、核が2つ存在しますので、やはりHPVの関与を除外することはできない、かといって、典型的な中等度異形成の形態とも若干異なるし、、、(とても迷うところです)、、、(そんなことで)私はASC-H(HSILの存在も否定できない)と考えました。

オリモノや臭いの後ろに異形成(HPV感染に伴う病変)が!

『おりもの&臭いの検査』には本来子宮頸がん細胞診検査は含まれてはいませんが、『おりもの&臭いの検査』を進めている段階でこのような異型細胞が発見されました。このような場合、アイラボでは『今回は通常子宮頸がん細胞診検査のために作製する標本の1/10程の細胞を観察しただけですので、残った検体で「子宮頸がん細胞診検査」「HPV検査」を追加することが可能です。』との報告をします。それらを同時に検査する「最新の子宮頸がん検査」を選ぶこともできます。当然このような追加検査をせずに、婦人科を受診することも可能です。

こうしている間に、淋菌とクラミジアの検査結果が出てきました。
結果は、クラミジアの感染もありました。

勇気を出して検査してよかったね

セルフメディケーション!

病気の早期発見早期治療こそがすべての幸せに通じます。
せっかく検査してこれだけのことが分かったので、必ず婦人科を受診してくださいね

優しい夫からの一言

2022.9.30の記事 「旦那からの一言で命が」という記事を紹介しました。そのご夫婦とはコロナの影響で3年以上もお会いできなかったのですが、先月やっと会うことが出来ました。
『お前最近臭いが強くなったぞ、子宮頸がん検診を受けろよ』と旦那に言われた話です。もう十年以上前の話ですが、私がそのご夫婦のお宅に招待された折にたまたまお二人の前で「臭いの話」をしたことがきっかけだそうです。
そのご主人は昨年肺がんで他界されたと聞き、肺がんについての話もしておけばよかったと後悔しています。

いくらご夫婦であっても、『お前臭いよ』、、、とはなかなか言えないものです。
私が細菌性腟症の研究を始めた頃「男が黙って去っていく病気」と表現した研究者(確かヨーロッパの方であったと思います)がいましたが、面と向かってはなかなか言えないもんです。

でも最近、ご主人に臭いを指摘された方のお話を聞きました。
自分でもここ数年臭いが気になってはいたので、婦人科を受診していろいろ調べて頂いたのですが、結果は「なにも異常なし」であったそうです。

それでは結果を見ることにしましょう
腟内は白血球がほとんど見られず、とてもきれいな状態に見えます。
しかし、中央にはClue cell(クルーセル)が見られ、腟ガルドネラ菌が腟内を支配しています
細菌性腟症の典型的な所見ですが、細胞診の仕事をしていても、検査機関によっては「細菌性腟症が疑われます」との記載ができないところもあります。
従って、お医者さんや患者さんには伝わりませんので、たとえ検査をしても「特に異常はありません」という回答いなります。トリコモナスやカンジダが見られる場合はその旨を記載するのになぜ?、、、ですかね。

さらに拡大を上げてみましょう
乳酸菌は全くなく腟ガルドネラ菌だらけですね。
このように、典型的な細菌性腟症は白血球の増加(腟炎)は伴わないのです。
白血球が増えないと言うことは、腟ガルドネラ菌が増えても“異常事態との認識はない”のかも知れません。更には、乳酸菌がいなくなってしまったので“代わりに腟内を守っている”ようにも思います。

困るのは、“嫌な臭い”なのです。

子宮頸がんでなくてよかったですね。

いつも臭いの話をしますが、臭いの原因は子宮頸がんや細菌性腟症に限ったことではありません。
届いた検体のフタを開けた瞬間強烈な臭いに見舞われ、部屋中の窓を開けることもありますが、トリコモナスの感染であったり、カンジダ症であったり、淋病であったりもします。
なので、おかしいと思った時には先ずはチェックしてほしいのです。
アイラボが開業して始めて世に送り出したキットは『婦人科トータルセルフチェック』です。子宮頸がん、細菌性腟症、トリコモナス、淋菌、クラミジア、カンジダ、腟炎と言った臭いに関係のある全ての病気を丸ごと入れたキットです。

婦人科の敷居は高い、誰でもそうです。
私の恩師も婦人科医ですが、『椎名君、女性はお産以外に私達の所へは来たくないんだよ。それで子宮頸がんや不妊症など手遅れになってしまうんだよ。何とか自分で採取しても精度の高い検査を考えてくれよ』そんなことがあって、初めて世に出したのがこのキットです。

風邪は万病の元、(女性にとって)臭いは万病のサイン

セルフメディケーション!

病気の早期発見早期治療こそがすべての幸せに通じます。
パートナーの方に『優しく』伝えてあげましょう

自分のオリモノは正常ではないかも? と思って検査を依頼

『いつ頃からかははっきり覚えていませんが、かなり前からおりものが気になっていました。ネットの記事を見て「自分のオリモノは正常ではないと思い、アイラボさんの婦人科トータルセルフチェックを購入しました。今30代ですが、これまで子宮頸がん検診を受けたことがなかったので、子宮頸がん検査が含まれているキットを選びました。』という方からの依頼です。

おりものや臭いに関係したキットは「腟内フローラチェック」や「おりもの&臭いの検査」があります。しかし、この方の様に、子宮頸がん検診を受けたこのがないのであれば適切なキットと選んでいただけました。

この方と同じような悩みを抱える方とても多いと思います。
アイラボのキットは自己採取法ですので自宅で簡単に採取できます。取り返しがつかなくなる前に是非試してくださいね。

早速顕微鏡を見てみましょう。
腟内は白血球の増加(腟炎)はなく、比較的きれいに見えます。
しかし、中央にはClue cell(クルーセル)が見られ、腟ガルドネラ菌が腟内を支配しているようです

さらに拡大を上げてみましょう
細胞にやや灰色っぽく見えるちるガルドネラ菌が充満しています(Clue cell)。
乳酸菌らしき桿菌は見られません。これだけの所見でこのケースは『細菌性腟症が疑われま』。
その他にトリコモナスやカンジダも見られません。

追加:このケースは淋菌とクラミジアも遺伝子検査で陰性でした。
従って、この方が悩まれていたのは『細菌性腟症』であることがはっきりしました

このままにしておいてはいけませんね

もうかなり長い間このような状態であったと思われます。
今の状態は、腟内フローラが乳酸菌から腟ガルドネラ菌にシフトしてしまっていますので、不快な症状で悩まれているのであれば婦人科の先生にご相談されるのが良いと思います。現状では白血球が増加していませんので、腟ガルドネラ菌の増殖を抑え、乳酸菌を増やす治療が一般的です。最も大切なことは、生活習慣の改善(細菌性腟症になった原因を取り除く)が必要になります。厄介なことに、その原因が一つではありませんので、アイラボでは検査を受けられた方には個々にご相談を受けられるようにしています。
お気軽にご相談頂ければと思います。

この検査ではもう一つ大切な事が分かりました。

それは初めての子宮頸がん検査で『異常な細胞がみられなかったということです。』
これを機会に、定期的に子宮頸がん検査を受けるようにしましょう。

オリモノや臭いの心配がなく、子宮頸がん検査のみなら『子宮頸がん(細胞診)検査』だけでOKです。
『最新の子宮頸がん検査』は「細胞診検査(今回の検査)」と「HPV検査(危険なHPVの感染があるかどうかを調べる検査)」を同時に行うキットです。両方とも異常がなければ数年に一度受ければ安心できます。
セルフメディケーション!

おかしい?
いつもの違う! と思ったら早目にチェックですね。
原因がはっきりすれば早めの治療が可能になります。

先生!カンジダではなくてBVです。

おりものの異常は、様々な原因で起こります。
婦人科のお医者さんから『カンジダいますか?』という依頼が時々あります。もちろん“正解”であることもありますが、『カンジダはいませんが、BV(細菌性腟症)が疑われます』という報告は多々あります。でもこの先生のように、『カンジダいますか?』と聞いてくる先生はいいですね。多分、カンジダなのかBVなのかの判断がつかないのだと思います。
BVありますか?』と聞いてくる先生は極めて少ないです。BVのことを理解されていないのか?それともあまりに多すぎて対応しきれない⇒“面倒”なのでしょうか?

前にも取り上げたとこがありますが(ここをクリック)、細胞診検査で明らかに細菌性腟症(BV)が疑われるケースでも、『そのことを報告書に記載しないでください』という検査機関は少なくないのです。
ですから、細菌性腟症に関しては、正しく診断されていないケースがとても多く、治療に反映されないケースがたくさんあることを知っておくべきです。従って、セルフメディケーション!『細菌性腟症かな?』って思ったらら自分でチェックされるのが良いと思います。

カンジダの治療をしていても完治しません

このような悩みを抱える人がとても多いのです。
一度アイラボの検査でチェックしてみよう”そんな人が増えています。
これまでにおりもの検査をされてない人は『おりもの&臭いの検査』で、すでにおりもの検査をされている方は『腟内フローラチェック』が良いでしょう。

今回は、『多分病院でも一応の検査はしてくれていると思いますが、はっきり分からないので』という理由で『おりもの&臭いの検査』を依頼された方のケースを紹介します。
ゴマ粒のように紺色に染まる小さな細胞は白血球ですが、その数は比較的少なく、腟炎を起こしている状態ではありません。
しかし、細胞の上や細胞がないところにも“薄くぼやけて見える”ものがあります。

さらに拡大を上げてみましょう
薄くぼやけて見えたのは、腟ガルドネラ菌でした。
他の視野を見てもほとんど同じ所見で、カンジダや乳酸菌は見えませんし、トリコモナスも見られません。
この画像で考えられる病気は細菌性腟症以外にありません。

また、他の遺伝子検査で淋菌やクラミジアも検出されていません。

カンジダの治療を続けても細菌性腟症は改善されません!

おかしいと思ったら先ずはセルフチェック!

セルフメディケーション!
あなたの健康を守るのは貴女だけです。
おりものや臭いが心配な時はおりもの&臭いのチェック
細菌性腟症が心配な時は腟内フローラチェックがお勧めです。

アイラボの男性HPV検査をチェックしておこう

男性のHPV検査は『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR』で検査しています。
この検査法は高感度でしかも全てのHPVが同じ感度で検出できるのが特徴ですので、単独感染と多重感染を厳密に区別することができます。
基本的には39種のHPVを同時に検出できますが、アイラボが提供している『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマKit113)は「16,18,31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,68の13種に加え、尖圭コンジローマを引き起こす6,11と、アイラボが独自に加えている53,66の計17種」を同時に調べます。

アイラボではどの検査においても、(お客様に採取して頂きますので)検体が適正に採取されているかをチェックしていますが、この検査も遺伝子検査を実施する前に細胞診標本を作製して検体の適否判定を行っています。

それでは早速本日最初の標本を見てみましょう。
亀頭の先端を中心にカリの部分から水で湿らせた綿棒で擦過(こすって)して細胞を採取しました。
通常はこの写真のように、ややオレンジの色調で染まる(核が見られない)重層扁平上皮の表層細胞が採取されます。顕微鏡の1視野にこれだけの数の細胞が採取されているので、検体としては『適正』と判定します。

拡大を上げてみましょう。
拡大を上げた写真ですが、細胞に明らかな核は見られません。
この様に亀頭部分の細胞は皮膚と同様に、核のない細胞がほとんどです。
勿論この段階でHPVの感染があるかどうかは分かりません。
このように、検体として十分な細胞が観察できますので、遺伝子検査に送られます。

遺伝子検査の結果は『陰性』で、17種全てが検出されません。

先ずは一安心ということですね。

次のケースを見てみましょう

このケースもオレンジ色に染まる扁平上皮細胞が採取されていますので、検体としては『適正』ですので
遺伝子検査に廻します。

拡大を上げてみましょう。
写真の中央左側の細胞には明らかな核が見られます。
それも一つの細胞だけでなく、いくつもの細胞に見られ、しかも核は大きくなっています。
前のケースとは明らかに異なった所見です。

検体を採取する時には特に隆起性病変(イボ状の病変)は確認できなかったようですが、健康な亀頭部分をこすって来てもこのような核のある細胞に遭遇することはほとんどありません。従ってこの核のある細胞を見た段階で、HPVの感染を疑うことができました。

結果は尖圭コンジローマを起こす6型が検出されました。
亀頭の皮膚表面には目では確認できなかったが、感染した細胞が露出していたことになります。
HPVの感染細胞は皮膚の表面に存在しますので、軽くこすっただけでも検出できるのです。

検体の適否判定は極めて重要な検査です。

検査に必要な検体が採取されていないと、遺伝子検査の結果は感染していても『陰性』になってしまいます。
従って、十分な細胞が採取されていない時は、無料で採取器具をお送りしています。



このキットは子宮頸がんハイリスク型13種と尖圭コンジローマの原因となる6型と11型を同時に感染しているHPVの型を調べる検査です。現在はサービスでHPVの53型と66型を追加して調べています。
特徴は、6畑、11型の単独検査に比べて割安料金になっています。
こちらのキットは子宮頸がんハイリスク型13種の型を調べる検査です。
現在サービスで53型と66型を追加して調べています。

中咽頭がん対策として咽頭HPV検査キット提供準備開始

4月29日のスマホ記事に『咽頭がんの発症リスクは「オーラルセックス」により増大していた?!』
という記事がありましたので、この機会にこの病気について少し勉強しておきましょう。

この記事を要約してみると
 1)この20年、欧米では「中咽頭がん」が増加している
 2)日本でも増加傾向にある。
 3)かつてその原因は喫煙や飲酒が主な原因とされていたが、近年オーラルセックスによるウイル
   スの感染が明らかになった

 4)中咽頭がんの7割はHPVへの感染
 5)オーラルセックスで中咽頭がんの発生率が8.5倍
 6)日本では毎年24,000人程が中咽頭がんと診断されている。
 7)以前は中年男性に多かったが、今では若い男女にも見られる
 8)イギリスで扁桃腺の摘出手術受けた1,000人を調べたところ80%がオーラルセックスの経験があった。
 9)しかし、中咽頭がんを発症する人は少数でしたが、その原因は分かっていないが 
(この記事では)HPVは自然免疫で十分対応できることがあげられている。
10)女性のHPVワクチン接種率の高い国では、男性のHPV感染も少なくなることが分かっている。
11)アメリカ、イギリス、オーストラリアでは男性へのHPV接種拡大を進めている。
12)日本でも男女双方にHPVワクチン接種を広めることで、咽頭がんの発症を減らすことが期待されている。

こんな内容の記事です。

早速、“中咽頭がん”で検索してみましょう

がん情報サービスのページが出てきました。
https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/about.html

発生には、喫煙と飲酒のほか、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因となっているものがあることが分かっています。ヒトパピローマウイルス感染に関連した中咽頭がんは、そうでないものに比べて予後が良いことが知られています。

“中咽頭がん 発生率”で検索すると

国立がん研究センター中央研究所の小村先生の記事がありました。
『中咽頭がんの原因には何があるの?〜喫煙や飲酒、ウイルス感染が関連している〜』

【飲酒・喫煙】
中咽頭がんの原因の多くを占めるのが、飲酒と喫煙であるといわれています。
お酒、たばこにはどちらも発がん性があります。中咽頭は飲食物や空気の通り道であることから、お酒をよく飲む人、たばこをよく吸う人ほど発がんリスクが高まるとされています。また、(お酒を飲んで顔が赤くなる人)は、アルコールの分解がうまくいかず、発がん性のアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすいために、継続的に飲酒することで発がんの可能性が高まることが分かっています。なお、中咽頭がんは50~70歳代に好発しており、女性よりも男性に多い傾向があります。これは飲酒や喫煙による長年の慢性刺激が誘因になること、飲酒や喫煙の習慣が男性に多いことが理由と考えられています。

【ウイルス感染】
中咽頭がんの発症には、ヒトパピローマウイルスの関与も指摘されています。ヒトパピローマウイルスは、皮膚や粘膜の細胞を介してヒトからヒトへ接触感染するウイルスで、咽頭への感染は主に口腔性交(オーラルセックス)によるものです。
感染しても大抵は症状が出ないまま排除されますが、感染して状態が続くとがんを抑制する遺伝子のはたらきが失われ、これによってがんが発生すると考えられています。
ヒトパピローマウイルスは100を超える種類が存在し、一部の高リスク型(特に16型と18型)が中咽頭がんの発生に関与しているとされ、性交の多様化によって近年では中咽頭がんの発症者が比較的若い世代にも増えてきているといわれています。
また、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、肛門がん、陰茎がんなどの発生にも関わっており、これらの部位においては主に腟性交や肛門性交(アナルセックス)によって感染します。

アイラボでは咽頭のHPV検査キットを提供していません、、が?

その理由は、
自己採取では咽頭から適正な検体が安全に採取できない』からです。
しかし、中咽頭がんとHPV感染の関係が徐々に明らかにされるにしたがって、『検出率が低いのは理解しましていますがどうしてもやってほしい』という方が増えてきています。特に風俗で働く女性にとっては子宮頸がんどころではなく、中咽頭がんの方が心配という人が増えている気がします。その理由として、『子宮頸がんは定期的に検診を受けていれば(早期に発見できるので)適切に対応できるが、中咽頭がんについては良く分からないだけに怖い』ということがあげられます。

ここ1年ほどの間に“どうしても検査をして欲しい”という方には、検査精度が低い可能性があることを説明した上でキットを提供しました。18名の方にハイリスク型13種と(当社が独自に加えている)66型と53型の計15種について調べました。
検査は杏林大学保健学部大河戸先生が開発した高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCRで測定しました。その結果、2名の女性からHPVの感染が確認されました。
その1例目は、子宮頸がん検診でLSILと診断され、最近のどが痛いこともあり、のどのHPV感染も気になったので検査されました。
結果は58型、66型、53型の感染が確認されました。他の1例は、オーラルのサービスをしている女性で、腟と咽頭のHPVタイピング検査を依頼された方です。腟からは上記15種のHPVは検出されませんが、咽頭から66型が検出されています。

性器に比べて口腔や咽頭は感染しにくいのではないか?

前で紹介した中咽頭がんの原因は「飲酒と喫煙」が主な理由にあげられていましたが、私は喫煙と飲酒がHPVに感染しやすい土壌を作っているのではないかと考えています
つまり、HPVはウイルスですが、コロナやインフルエンザとは異なり、健康な粘膜や上皮細胞に接触しても感染は成立せず、粘膜や上皮に傷がつくことで感染が成立するが、口腔や咽頭からはそれに比べて検出される割合が(経験的に)少ないのが現状です。私達はその原因として、“うがい液”での検査は十分な検体が採取されない可能性を考慮して検査キットの提供を控えてきました。しかし、最近の研究で、医師による咽頭擦過検体とうがい液を比較しても結果に大きな差が見られないことが明らかになりました。
これらの結果から総合的に考えてみると、検出率が低いのではなく、HPVがオーラルセックスで口腔や咽頭に侵入したとしても、口腔や咽頭が健康であれば感染が成立しないのではないかと考えました。飲酒や喫煙で粘膜にダメージを受けている状態ですと感染しやすく、それは喫煙や飲酒だけでなく、風邪で咽頭が赤く腫れている時や歯周に炎症がある場合では感染しやすいのではないかと思います。
従って、アイラボが実施した(うがい液で陽性になった)2名は中咽頭に感染病巣があるためであり、(オーラルセックスで一時的にHPVによる汚染があったとしても)感染が成立しないケースが多いのではないかという結論に達しました。

中咽頭がん対策として咽頭HPV検査キットの販売の準備を始めます。

検査方法は、『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR』を採用します。

早速準備に取り掛かりますが、お急ぎの方はアイラボにご一報下さい。
042-652-0750です。