Fem+ フェムプラス ~女性の健康と活躍を支援する展示会~
Femtech Tokyo/ 女性のウエルビーイング推進EXPO に出展

10月17日(木)から19日(土)10:00~17:00 まで「東京ビッグサイト東7ホール」にて
「Fem+ フェムプラス ~女性の健康と活躍を支援する展示会~ Femtech Tokyo/ 女性のウエルビーイング推進EXPOに出展することになりました。

株式会社アイ・ラボCytoSTD研究所は2002年に「女性特有の病気や悩みに対応できる検査会社」を立ち上げ、病院に行くのが「恥ずかしい」「忙しい」「面倒」な人にも自宅で気軽に検査ができる郵送検査の普及、電話やメールによる無料の悩み相談、女性のQOL向上を目的に腟内フローラチェックの提供、さらに先進国の中で最も遅れている子宮頸がんリテラシーを高める目的で男性用HPV検査キットを提供しています。

展示の主な内容を何回かに分けて紹介します。

こんな仕事をしています

私達の仕事は、まさにFemtech Labで、女性の健康とQOL向上に特化した検査機関です。
個人や会社・健康保険組合様を対象に「今の検診(検査)は恥ずかしい・忙しい・面倒と思う方に郵送による検査を提供しています。自分で採取した検体をポストに入れるだけで検査結果が分かるものです。
■ 女性にとって婦人科の敷居は高く、ついつい我慢して子宮頸がんや不妊症が手遅れになってしまう事がないように。
■ 仕事や子育てで、検診を受けなければと思ってもなかなか行けない、行く気になれない人のために。
■ 交通の便が悪く、自身で出向くのは困難な方や僻地に住んでいる方のために。
■ 特に心配な症状もないのにわざわざ出かけていく気になれない人に。

大阪の大成化工株式会社と共同で開発したセルソフトは、今年4月からアイラボの郵送検査に使われています。
HPV検査をはじめ婦人科感染症や細胞診検査など幅広い検査の検体採取器具です。
HPV検査の採取器具としての有効性が明らかになり、論文として掲載しました。
ネットから英論文と和訳された論文を見ることができます。
https://ilabo-cyto-std.com/cellsoft

産婦人科クリニックや病院の先生方には、細胞診はどこに出しても(依頼しても)同じではなく、可能な限り先生方の要望をかなえたいと考えています。
アイラボでは日本でLBC法が普及する前からLiquid Transport Cytology System(実用新案登録)で細胞診の受託検査を行っています。

自己採取法の欠点を十分に理解し利点を最大限に活用

検査キットはアイラボのHPで見てください。

少し専門的な話になりますが、自己採取法の利点からお話ししましょう。

【利点】
病院に行くのが恥ずかしい、忙しい、面倒、、、そんな人にとっては最高のデバイスです。
自宅で採取してポストに入れるだけですからね。
加藤式採取器具はおよそ400万本が使われ、医療事故が起こっていない安全性が担保された器具です。
セルソフトは加藤式の安全性や細胞捕捉能に優れている点はそのままにして、外筒を若干細くして恐怖感を減じ、素材を環境にやさしい植物由来に変えました。
加藤式・セルソフト共に自然に剥離して腟の奥に溜まった細胞と子宮腟部(子宮が膣内に出っ張った部分)を直接擦って細胞を採取するので大量の細胞が採取できます。
従って、婦人科感染症の検査はこれ一本採取するだけで大半の検査が可能になります。
例えば、細胞診、HPV検査、淋菌・クラミジア・トリコモナス・カンジダなどの感染症、腟内フローラや細菌性腟症の検査などが可能です。
検体の処理から顕微鏡の観察まで、十分な訓練を受けた細胞検査士が検査することで医師採取と同等の精度が得られます。

【欠点】
子宮体がんは検査の対象外です。早期に発見するのは困難な場合があります。
子宮頸部の奥に発生する子宮頸部腺がんも早期に発見できないこともあります。
■ 細胞診を目的とした場合、細胞成分が沢山採取されるため目的の異型細胞の数が相対的に少なくなるため、標本の作製や顕微鏡を観察する際、通常の標本(医師が採取したもの)より、より慎重に対応しないと、極端に検査精度が落ちてしまいます。従って、自己採取法の検体を受け入れる検査機関はそのことをに対する教育を、それを依頼する側も検査機関の対応をチェックすることが最も重要になります。

初期は異型細胞が検出できないこともあるが医師採取も同じ

左の列から説明すると、2008年の4月から2010年の10月まで調べたものです。
最初にASC-US(1:黄色)の細胞が検出されてからてからLSIL(2:オレンジ)が検出されたり、異型細胞が検出されない(NILM)になったりを繰り返します。おおむね90%のケースでHPVが自然にいなくなると言われています。私達はこのような時期を第一段階としています。
中央の列も最初は第一段階ですが、2011年2月の検査で初めてASC-H(HSILの存在が否定できない)の細胞が出ました。私達はASC-H(3:ピンク)の細胞が出た段階で第二段階の始まりとみています。このように第二段階は、NILM(異型な細胞がみられない)、ASC-US、LSIL、ASC-H、HSIL(中等度異形成や高度異形成、上皮内癌が含まれます)の細胞が出たり出なかったりする時期です。そして右の列のした1/3の様に、毎回ASC-H以上の異型細胞が出続けるようになったら第三段階としています。
先生方の判断にもよりますがASC-HやHSILの細胞がみられるようになると組織検査が行われ、円錐切除術やレーザー蒸散法による治療が行われます。
このように、第3段階になるまで何年もかかるのが子宮頸がんです。第一段階はその90%がHPVが自然に消失すると言われますが(私達が確認したことではありません)、残りの10%が第二段階に進んでいくので、長い期間定期的に細胞診で異常な細胞が出ていないかチェックする必要があります。しかし、NILMが続くと、仕事は忙しいし、とても面倒なので、もう大丈夫なのではないか? と勝手に判断し、定期検査を受けなくなってしまう人がいます。
せっかく検診でがんになる種を見つけたのにこれでは救える子宮も命もがんの思うつぼになってしまうのです。
こんな方、ひょっとして多いのではないか?とても心配しています。
前の表でも分かるように、第3段階に入ると自己採取された検体でも毎回異常な細胞が出るようになります(もちろんこれに当てはまらないケースもあると思いますが、)ので、忙しい方や面倒になってしまう方は、そんな時だけでも自己採取でチェックして頂きたいものです。セルフメディケーション(自分の健康は自分で守る)の考えがあれば、自分に最適なキットや検査機関を選ぶことができると思います。
また検査機関や検査キットを提供する側は、受診者がそれを判断できる十分な説明責任があります。

検査精度や効率、、、それも大切なことですが、優しさが一番

「椎名君、日本の女性にとって(私達のような)婦人科の敷居は高いんだよ。
おかしい? いつもと違う? と思ってもついつい我慢して手遅れになってしまうことが多いんだよ。
何とか自己採取による検診の精度が上がる様な方法を考えてくれないか」
、、、と言われた産婦人科医で細胞診専門医でもある故八田賢明先生の言葉は大変重いものがありました。
その一言でアイラボの今があるように思えます。
そうなんですよ。高度な知識や技術を持ち合わせていても本当の優しさがなければ、日本の子宮頸がん検診の受診率は上がらないと思います。
私達が自己採取にこだわり、どうしたら検査精度が上がるのか、この20年ずっと考え実践してきました。
【ポイント1】採取器具はお医者さんの代わりになるものですから、その選択を誤るとその先の検査に最善を尽くしても良い結果が得られるはずはありません。私達はこれまでの経験から画像左の加藤式採取器具を選びました。
【ポイント2】検体の処理方法の検討では、加藤先生が考案した検体の塗抹方法(検体をスライドガラスに塗る方法)は採取器具から直接塗抹する方法ですが、この方法だと大切な細胞が塗抹周辺に偏り、細胞が重なった部位の観察がしにくくなり、結果として異常な細胞を見落とす原因になります。私達は採取された細胞を全て保液中の中に洗い出し、遠心分離後の沈査を検体とし、すり合わせ法(2枚のガラスに均等に塗抹する方法)で標本を作製しました。この操作をすることで顕微鏡で観察しやすいきれいな標本が作製されます。
【ポイント3】は細胞検査士(顕微鏡を観察し異常な細胞を見つけ、その細胞がどの程度の異常かを判断する特殊臨床検査技師)によって診断されます。人による仕事ですので極めて責任の重い仕事になります。ポイント1、ポイント2の工程で最善の仕事をしてきてもポイント3で適切な仕事ができないと検査精度は著しく下がります。使命感が求められる作業になります。
このように自己採取細胞診は全ての工程に最善を尽くして初めて医師採取と同じ成績が期待される検査なのです。
加藤式採取法をこのように改善することで有効性を評価したのがこの論文(これは和訳したもの)です。
私達が経験した某検診機関で実際あったケースを紹介します。(下の表に関する説明です)
N社の担当者(臨床検査技師)から、「従業員の子宮頸がん検査をお願いしたいのですが、アイラボさんは加藤式のみを採用されているんですよね。」という確認の電話があり、翌年から従業員の子宮頸がん検診を受託しました。一方、N社は家族検診を某検診機関に委託していましたが、その理由も加藤式採取器具を採用していたからとの事でした。つまりN社の担当者は会社の事情で自己採取による検診を選ばざるをえなかった様ですが、それなら加藤式を採用している検診機関、検査会社を探したようです。
担当者は従業員そしてその家族のことを精一杯考えた末の決断であったと思います。
そして数年が経過したある時、某検診機関の最高責任者から一本の電話があり、「N社担当者から家族検診の子宮頸がん検査をアイラボさんにお願いできないかというのですが、どんなことか説明して頂きたいのですが」という内容でした。当時N社からはそのことに関した何の連絡もなかったので、急いで某検診機関の訪問させて頂きました。そして当社の加藤式採取器具による検査方法を説明させて頂きました。その会議の最後に、責任者の方は即決で、「それでは来年度から全ての子宮頸がん検査はアイラボさんにお願いします。」という返事を頂きました。
下の表を見るとその理由は一目瞭然です。
同じ加藤式での検査、毎年同じ受診者(母集団)でこれだけの差が出てしまっていたのです。
もちろん某検診機関は検査会社に委託していました。その検査会社はいつもと同じように(加藤式の通常の方法)検査をした結果です。自己採取検体を医師採取と同じように検査した結果です。

N社担当者(臨床検査技師)、某検診機関責任者(医師)共に優しさを感じた方々でした。
この表をよく見て頂けると、これまで述べてきたことが理解できると思います。
優しさが一番大事と言いましたが、そのためには検査に関わる労力は医師が採取した検体に比べると2倍も3倍もになるのです。
ある検査会社にお手伝いに行っていた時、異常な細胞が沢山存在するケースを「異型細胞はありません」と診断した検査士さんがいました。どうしてこんなことになってしまったのか理由を問うと「自己採取検体だからサッと診てしまいました」という回答が返ってきました。全く逆なのです。加藤式自己採取器具は正常な細胞も沢山採取されますので、相対的に異常な細胞は少なくなります。私達が細胞検査士資格認定試験を受けた頃は1枚の標本の中に異常な細胞が数個から5・6個しかない標本を一定の時間内で観察させ、的確に異常な細胞を拾い上げる試験がありましたが、自己採取検体を検査する時はまさにこの試験の様に“一つでも異常な細胞は見逃さないぞ”という思いの使命感が必要なのです。
細胞診という検査は、検体を機械にかければ自動的に結果が出てくるというものではありません。いくつもの工程を適正に行い、最終的には使命感をもって顕微鏡で観察する検査ですので、私達は自己採取検体を扱う細胞検査士を独自に再教育しています。
そしてそれを終了した細胞検査士に下のような修了書を渡しています。
細胞診検査とは、自己採取検体を扱うということは、こんなことを考えなくてはいけない検査なんです。
私達が細胞診を始めた頃、(50年も前の話で恐縮ですが)野田紀一郎先生(日本での子宮頸がん検診の先駆者)が、子宮頸がん検診を受ければ子宮頸がんで亡くなる人をゼロにすることができる(正確な表現ではないかも知れませんがそのような意味の言葉)ということをおっしゃっていました。当私はその言葉に感動し、今もそれを信じていますが、現実を冷静に見ると、残念ながら細胞診の信頼性はかなり揺らいできた感があります。2009年以降子宮頸がん検診の受診率を5年間で50%まで引き上げる目標を掲げ様々な団体を巻き込み、啓蒙活動が行われてきましたが、15年が経過しても未だにその目標には至っていません。
そんなこともあってか、今年からHPV検査が子宮頸がんガイドラインで推奨ランクAになりました。この検査は、子宮がんの原因になるハイリスク型HPVの感染があるかどうかを調べるものものです。細胞診は異常な細胞が出ているのか?そしてその細胞はどの程度の異常(LSIL、HSILなどの)かを調べる検査なので、内容はかなり異なります。次のテーマは「HPV検査単独法」について考えてみたいと思います。

期間限定HPV検査グレードアップキット販売開始
子宮頸がん検診受診率向上キャンペーン

2024年7月8日のブログで紹介したように、HPV検査用自己採取器具セルソフトの完成を記念して既存のHPV検査(ハイリスクHPVタイピングなし)KIT003を期間限定で検査内容をグレードアップして販売を開始しました。
エヴァリンブラシを用いた自己採取法によるHPV検査は、検体を乾燥した状態で検査機関に送られますので、HPV検査だけしか検査できません。結果は、ハイリスク型HPVの感染が「陰性」または「陽性」で報告されます。機種によっては、16型、18型、その他の感染があるかどうかで報告されるものもあります。いずれにしても「陽性」の場合は再度医療機関を受診して細胞診検査を受けることが条件になっています。

アイラボでは自己採取検査キットの場合、全て検体の適否判定を実施していますので、HPV検査前にパパニコロウ標本を作製し、顕微鏡的に腟内の状況を観察してちゃんと細胞が採取されているかを確認しています。その際、白血球が増えているかどうか(腟炎はないか?)、異型細胞はないか?、カンジダやトリコモナスなどの感染症はないか?、更に腟内フローラの状況やホルモンの状態も観察します。そして、私達の経験をもとに、追加検査が必要と思われた時は、細胞診検査やおりもの検査、さらに腟内フローラチェックを勧めることもあります。細胞診とはそれだけの価値がある検査ですので、得られた情報を受診者にフィードバックする意義はとても大きいと考えています。
追加検査を実施するかどうかはあくまで本人の希望によって行われます。残った検体で検査しますので再採取の必要がなので通常価格より1,000円引きになっています。

HPV検査の結果は、16型の感染があるかどうか、18型の感染があるかどうか、それ以外の31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,68のいずれかの感染があるかどうかで報告します。(通常のHPV検査の報告と同じです)

HPV検査で「陽性」の場合、必ず、婦人科を受診して細胞診検査を受けることになります
この度の期間限定グレードアップキャンペーンは、HPV検査で陽性になった場合、即細胞診検査を実施し、HPV検査の結果と同時に報告するサービスです。
「陽性の場合、病院を受診して細胞診検査を受けることななっているのだから必要ないのではないか」との意見もあると思いますが、先ずは現状を速やかに報告し、同時に婦人科を受診して細胞診検査を受けることのことの意義をはっきり伝える試みです。

子宮頸がん検診は『自己採取でも受けられますよ』と

細胞診検査単独法に加え、HPV検査単独法が子宮頸がん検診ガイドラインで推奨グレードAになりました。原則医師採取とはなっていますが、WHOや米国FDAも自己採取を許可したことから、子宮頸がん検診の受診率を上げるために一歩前進といった感じです。市町村や企業健診においても準備が整ったところから医師採取が苦手な方、仕事や子育てで検診に行く時間が取れない方、交通の不便な地域にお住まいの方にも『自己採取でも受けられますよ』とか『自宅で採取できますよ』などと声をかけられるようになりました。

HPV検査は医師採取と自己採取で検査精度は変わりません

HPV検査は、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVの感染があるかどうかを調べる検査ですので、そもそも子宮頸がん検診という言葉は当てはまりません。あえて言うなら、HPV検診の方が分かりやすいのではないかと思います。HPV検診で陽性になった人は子宮頸がんの危険性があるので定期的に子宮頸がん(細胞診)検査を受けましょうというものです。
HPV検査はウイルスが100個ほどあれば(感染した細胞が1個でもあれば)検出できますので、医師が採取しても自己採取でも大きな差はありません。この前のブログでもそのことは説明していますので安心して受けて頂けます。

HPV検査で陽性になった人は“即”細胞診検査を行います

HPV検査が陽性の人は細胞診検査を受けることになります。
これも前のブログで詳しく説明しましたが、HPV検査で陽性であっても、“現状はどうなのかについては全く分からないからです。”つまり、異型細胞が全く見られない段階(NILM)なのか?、明らかなHPVに感染した細胞がみられる段階(LSIL)なのか?、さらに異型の強い細胞がみられる前がん状態(HSIL)なのか? 全く分からないからです。

この度のキャンペーンは、HPV検査陽性の場合、HPV検査に使用した検体で“即”細胞診検査を実施して同時に報告します。

対象の検査キットは

個人の方はもとより、自治体の検診や企業健診さらに健康保険組合様においても

受診率向上を目指し、
これまでの検診(細胞診)に加え、子宮頸がん検診ガイドライン推奨ランクAの
(自己採取型)HPV検査
をご検討頂ければ幸いです。

セルソフトに関する研究で分かった事
(風俗利用男性必見!)

このブログでは、最近学術論文として掲載されたセルソフトに関する研究結果を
一般の人にも分かりやすくTable(表) 1について説明します。
表全体を一枚の画像にしましたので見にくいかも知れませんが、拡張機能を利用するか、必要に応じて印刷して見て頂ければと思います。
赤の下線で示したように、風俗営業従事者30名を取り出しています。

この研究の主な目的は、エヴァリンブラシとセルソフトの比較です

表左側の青枠で示したのはセルソフト(CS)写真中、右の緑色の枠で示したのがエヴァリンブラシ(EB)写真上で高感度多種HPV検出法(uniplex E6/E7PCRで検出されたHPVの結果です。
両器具の写真を見ても分かるように、CSはより奥(子宮の入り口)からスポンジで大量の細胞が採取され、EBはより手前の腟壁成分をからめとるように採取しますので、先ずはEBで採取した後にCSで採取しました。
結果は
1)CS/EBとも全く同じ結果であった。21例(70%)
2)CS/EBともHPVを検出したがEBの方が多かった。7例(23.4%)
3)CS/EBともHPVを検出したがCSの方が多かった。1例(3.3%)
4)CSは検出したがEBは陰性であった。1例(3.3%)
総合的に判断すると、29例(96.7%)が陽性または陰性で一致したことになり、乾燥状態で輸送するEBと50%エタノールを添加し湿性状態で輸送するCSで差は見られなかった事になります。
2)の様にEBで検出されたHPVの数が多かったのは、単純に考えればEBが先に採取したからと思われますが、採取器具の長さが短いEBは腟壁感染部位を擦過した可能性も否定できません。3)4)のケースは逆にEBは子宮腟部の感染部位までブラシが届かなかった可能性も考え得られます。

HPV検査陽性の人は必ず細胞診検査を受けなければなりません

HPV検査で陽性であった人はハイリスク(子宮頸がんに危険な)HPVに感染している事になります。しかし、HPVに感染していることは分かっても、現在自分はどのような状況(軽度異形成高度異形成またはがんなのか?)なのかは分かりません。
そのため、陽性であった人は必ず婦人科を受診して細胞診検査を受けることになります。もしも細胞診検査を受けなかった場合、HPV検査で検診を受けた意味が全くなくなってしまうからです。
HPV検査を病院や検診機関で医師採取で行った場合、検査機関で残った検体が保存されていますので、多くの場合再採取無して細胞診検査が受けられると思います。
自己採取EBでHPV検査を受けた場合、(採取した後検体を乾燥させるので)追加で細胞診検査は受けられませんので婦人科を受診することになります。アイラボでは通常の検診が苦手な人にCSによる自己採取法を提供していますので、HPV検査で陽性が判明した人には自動的に細胞診検査を追加する措置をとっています。(現在期間限定でこのキットを販売しています。)

自己採取型細胞診は子宮頸がん検診ガイドラインでは推奨されていませんので、基本的には婦人科の受診が必要になります。従って、アイラボの報告書の中には「今回の細胞診検査の結果でASC-US以上の細胞が見られたケースは、必ず婦人科で精密検査を受けて下さい。細胞診の結果がNILMであった人も子宮の奥に発生する腺がんを早期に発見できないことがあるため、婦人科を受診することをお勧めします。」といった注意点を付記します。

HPV検査で陽性だった21名の細胞診結果は?

30名中21名(70%)がHPV検査で陽性でした(表左に)。対象が風俗営業従事者ですので陽性率が高値を示しています。このことについては後で議論しましょう。
21名中細胞診でNILM(異型細胞がみられない)が13名(62%)、ASC-US(HPV感染があるかどうかわからない)が3名(14%)、LSIL(HPV感染が見られ軽度異形成)が3名(14%)、ASC-H(中等度異形成以上の存在が否定できない)が1名(5%)、HSIL(中等度異形成から上皮内癌の存在が推定される)が1名(5%)という結果でした。

HPVの感染がある人でも62%の人はNILNであって異型細胞が検出されていませんが、今後ずっと異型細胞が出ないという確証はないのです。ですから、年に一度細胞診検査を受けなければなりません。
ASC-US(細胞診の結果をみる限りでは異型は軽度)なので今後追跡検査が必要になります。LSILも同様で定期的に細胞診での追跡検査が必要になります。ASC-HやHSILと診断された場合はコルポ診断や組織検査が必要になります。
ハイリスク型HPVに感染していてもASC-US以上の異型細胞が発見させるのは意外と少ないのです。

しかし、2024年7月8日のブログでも紹介しているように、ASC-USやLSILの細胞が出ているときはNILM/ASC-US/LSILが繰り返されますので病院に行くのが面倒になって定期検査に行くのを忘れてしまう方が少なくありません。
自己採取法でもHSILまで進行すると毎月検査しても異型細胞が検出できるようになりますので、面倒になった時は自己採取法でもよいので継続的に調べることが大切です。また、その場合であっても常に子宮の奥に腺がんができることを忘れず、必ず年に一度は婦人科を受診していただく事が大切になります。
自身の健康は自身が責任をもって守ること、それがセルフメディケーションです。

風俗利用で最も感染しやすいのはHPVなのです

今回の研究は風俗で働く女性に協力をお願いしました。
その理由は、HPV感染者が極めて多いことが分かっているからです。
今回は30名の検査で21名(70%)が陽性であったことがそれを裏付けています。
尖圭コンジローマは同じHPVの感染症ですが、性病(性感染症)に分類されています。それは“イボができた”ことが肉眼的にも確認できるため病気として認定されますが、ハイリスク型HPVは感染していてもイボは作らないし、肉眼で見ただけでは感染部位に何の変化がなく、痛くも痒くもないのです(感染初期にかゆみに気付く人がいますが性交後の小さな傷の修復に伴うかゆみと区別は出来ません)。ですから当人は感染させる病気にかかっていることに全く気付くことはなく、大切なパートナーに容易にうつしてしまいます。うつされた女性も全く症状がないため、検診で異形成があると告げられるまで気が付かないのがこの病気なのです。
私は風俗を否定するものではありませんが、風俗営業従事者は利用者のみならず自身の感染予防の点からHPVワクチンの接種を義務付けて頂きたいものです。また、利用者においても、この事実を重く受け止め、HPVワクチンの接種や感染予防策の徹底を考えて頂きたいものです。

私達アイラボの職員は日本性感染症学会認定士の資格を有しておりますが、このような資格を有する者が風俗の現場で定期検査の実施やHPVワクチンの普及活動に当たれるのも良いのではないかと考えています・

アイラボの無料相談には風俗利用後の男性から切実な悩みが毎日届いています。
ご相談は電話(042-652-0750)でお願いします。

今後子宮頸がん検診はどう変わる?

子宮頸がん検診における最大の課題は受診率を如何に上げるか?、、、です。
特に我が国においては2009年以降受診率50%を目指し、様々な活動が行われてきましたが、未だにこの目標は達成されていません(2022年度国民生活基礎調査43.6%)。
諸外国の受診率をみても、米国(84.5%)、イギリス(78.1%)、ニュージーランド(77.0%)に比べ日本は42.1%と、米国の半数に甘んじています。

細胞診に加えHPV検査が子宮頸がん検診の主役に!

我が国においてもHPV検査が推奨グレードAになったことで、本年4月から対策型検診(自治体の検診)においてもHPV検査の導入を決めた自治体があります。その背景には受診率をあげたいという願いがあります。
細胞診単独法の検体採取は医師に限るになっていますが、HPV検査単独法は原則医師採取になっていますので、自己採取にも少し道が開けました。6月16日の記事でも紹介したように、米国FDAも自己採取を許可しましたので、自己採取解禁の後押しになれば幸いです。

とは言っても、HPV検査単独法には陽性者に対する長期間にわたる追跡や精度管理体制を構築することが絶対条件になっています。先ずはHPV検査陽性者全員が細胞診検査を受けられることが重要になってきます。

普通の検診が苦手な人にも検診の機会を提供したい!

これがアイラボのこだわりです。

大成化工株式会社(大阪 白石保行社長)と共にHPV検査用自己採取器具(セルソフト)の開発を手がけて7年、子宮頸がん細胞診検査用加藤式器具に改良を加えたセルソフトは2024年6月、完成しました。同時にその有効性は学術論文としてAsian Pacific Journal of Cancer Prevention. 2024.25(5).1673-1679に掲載しました。

アイラボは “女性の健康とQOLの向上”を目的に立ち上げた検査会社です。自宅で簡単に採取し、病院での検査と同等の精度を提供できる検査キットの開発に努めてきました。
まさにこの20年、Femtech Laboとして活動してきましたので、セルソフトの完成を記念した特別商品を発表したいと考えました。

その第一の特徴は、セルソフトによる自己採取!

自己採取器具セルソフトの性能は医師採取と変わらない
(APJCP 2024 Vol25 253-259)

この論文では、医師採取と検体採取能力が変わらないとされるエヴァリンブラシ(写真上)で先ず採取した後、セルソフト(写真中)で採取しました。その理由は画像でも理解頂けると思いますが、セルソフトのスポンジ部分はより奥(子宮腟部)から大量の細胞成分が採取採取できるからです。
その結果は両者ほぼ同じ検出率でしたので、間接的ではありますがセルソフトのHPV感染細胞の採取能力は医師採取と変わらないことになります。

第二の特徴は、採取された検体の適否判定と腟内状況のチェック

HPV検査は、ハイリスク型HPVの感染があるかどうかを調べるのが目的の検査ですので陽性または陰性として報告されます。
検査の方法によっては最も危険な16型、次に危険な18型その他(11種)、に分けて報告されます。
前にも述べましたように、自己採取という特殊性から、アイラボでは検体が適正に採取されているかを重要視しており、どんな検査(キット)でも必ずパパニコロウ標本を作製して検体の適否判定を実施しています。適正に採取されていない時は本人に再採取の希望を確認をしたうえで採取器具を無料で再送付しています。
適否判定は写真の様に顕微鏡で観察しますが、この際、腟内の状況も同時に観察できます


しかし、通常の子宮頸がん検診では、「炎症」「トリコモナス」「カンジダ」が見られた時には報告されますが、HPV検査ではこのような標本作製まで行われないため、腟内の状況まで報告されることはありません

私達アイラボは婦人科細胞診(子宮頸がん検診)は最も安価で最も精度の高い婦人科感染症の総合的診断法と位置付けていますので、HPV検査が主役になってもこのサービスは続けてまいります。

第三の特徴は、HPV検査陽性例には即細胞診検査を実施します

ゴルフで日焼けして真っ黒ですね。
77歳になりますがこの暑い中週一でゴルフを楽しんでいます。

HPV検査で陽性になった人は細胞診検査を受けることになりますが、これを受けないと検診を受けた意味が全くなくなります。
くどいようですがHPV検査はハイリスク型HPVの感染があるかどうかを調べる検査であり、陽性となった人の腟内が今どんな状況になっているか分かる検査ではありません。異常な細胞が見られないNILM(ニルム)なのか?前がん病変のHSIL(ハイシル)なのか?全く分からないのです。もし、HSIL(中等度異形成、高度異形成、上皮内癌)で高度異形成以上である場合、今すぐ円錐切除などの処置をしなければなりません。そのため、陽性だった場合は必ず精密検査(細胞診)をすぐに受けなければならないのです。
このスライドは、2011年12月に開催された日本性感染症学会学術集会で当社藪崎宏美が発表した内容の一部です。すべて加藤式による自己採取例で、2008年4月の検査でLSILの細胞が検出され、16型と51型の持続感染例です。翌5月はNILM、9月10月はASC-US、11月にASC-Hの細胞を認め、12月から翌年の1月、3月はNILMでしたが、同時行った遺伝子検査では16型と51型が検出されています。2009年9月の検査でHSILの細胞が検出されましたが、その後も半年ほどはLSIL、ASC-H、ASC-USと不安定な時期が続きますが、2010年4月以降は高度異型細胞が連続して検出されるようになります。
HPVの感染からがんになるまでにはおおむねこのような状況が続きますので、時期によっては異常な細胞が検出されないこともあります。油断は禁物なのです。
2008年11月にASC-H(高度異型扁平上皮内病変の存在が否定できない)と診断した細胞と、2011年6月に採取された細胞はHSIL(高度異型扁平上皮内病変=中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)、上皮内癌が含まれる)と診断しましたが、これらの細胞の顔つきは同じように見えます。
私達は2008年11月に見られた細胞をがんの前駆細胞(将来がんの方に向かう細胞)と考えていますが、2008年12月~2010年2月の間はNILM~HSILの細胞が出たりでなかったりしています。しかし、2010年4月以降は自己採取した検体では毎回AS-H~HSILの細胞がみられるようになります。これはどういうことかというと、がんの性格を持った細胞の集まりが広くなったと考えています。
検診を受けた時がたまたま2008年12月~2010年2月の時期だと、細胞診の結果が最悪NILMになってしまうこともあるという事実、そして、2010年4月以降のように(自己採取でも)安定的に高度異型扁平上皮内病変の存在が疑われる細胞が発見できるという事実を考えると、HPV検査で陽性になったり、細胞診でLSILと判定された場合はかなり長い期間定期的なチェックが大切になることが分かります。
これは別のケースですが、最初の検査からHSILの細胞がみられ、私達は細胞診で高度異形成と診断してフォローアップしたケースです。2008年12月から2009年12月の間、自己採取法で毎回同じ様な細胞が検出されています。このケースも16型が主体ですが、CIN3になると加藤式やセルソフトによる自己採取でも、毎回の検査でHSILの細胞が出続けます
この方はもう何年も前にHPVに感染していたんでしょうね。でも、自己採取であっても細胞診を受けたことで、子宮も命も守れました

HPVの感染からCIN3になるまでにはかなり長い年月が

この表も同じ学会で発表したものですが、ハイリスク型HPVが感染してからNILM~LSILの細胞が見られる時期を(私達は)第一段階と考えています。この時期はおおむね90%がHPV感染は陰性化するといわれています。
ASC-Hが出始め、NILM~HSILの細胞が出たりでなかったりする時期を第二段階、ASC-H以上の細胞がいつでも検出される時期を第三段階と分けることができます。第三段階はHPV感染症の時期は過ぎ、腫瘍の性格を持った細胞に代り(前がん性病変ん)ますが、この時期までに検診で発見できれば子宮を守ることができるのです。

アイラボの自己採取型子宮頸がん検診は貴女と病院との架け橋

2009年以降、通常の検診が苦手な人でも検診が受けられるよう、私達は加藤式採取器具を用いた細胞診検査の精度向上に取り組み、その成果を論文にまとめ報告してきました。しかし、子宮頸がんガイドラインでは自己採取法による細胞診検査は認められることはありませんでした。そこで、加藤式採取器具のさらなる改良に取り組み、前述の通り7年越しでHPV検査用器具として生まれ変わったのがセルソフトです。わが国では(医師採取を原則とする)という条件付きですが、検診の受診率を上げるためには自己採取法の導入は絶対条件になりますので、自治体や企業検診においても、通常検診とは別に自己採取も選択できる仕組みを検討して頂きたいと思います。

HPV検査用採取器具セルソフトに関する論文

この研究はHPV検査における自己採取器具の検体採取能力を確認するために行いました。
比較の対象としたエヴァリンブラシは、HPVの採取能力が医師採取と変わらないとの報告があり、それが世界的に認知され普及しています。セルソフトの強みはHPV検査のみならず、多目的検査に対応できますので、HPV検査においてほぼ同等の結果が得られれば、一度の採取で必要に応じていろいな検査に対応できることです。

HPV検査単独法が子宮頸がん検診に承認されたことで

子宮頸がん検診は、これまで行われてきた細胞診単独法(推奨グレードA、検体は医師採取に限る)に加え、HPV検査単独法も推奨グレードAになり、厚労省からも指針が示され、今年4月1より自治体でも徐々に採用するところが増えてくると思われます。検体採取は原則医師採取とするになっていますが、その理由として我が国においてその有効性が明らかになっていないからとされています。今回の研究で比較の対象としたエヴァリンブラシは自己採取器具で、検体採取能力は医師採取と同等と言われていますが、セルソフトはそれと同等の採取能力が確認されたため、子宮頸がん検診の受診率向上に期待されます。

米国FDA、HPV 検査で自己採取を許可、がん早期発見に一助

情報入手先:日経新聞
内容:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16E3P0W4A510C2000000/

セルソフトは通常の検診が苦手な人のために開発したデバイスです。
そのような方にも手軽に採取できる器具なので、各自治体でもこれまでの細胞診検査に加え(これまでの検診が苦手な人にも)新しい検診の機会を提供して頂けると我が国の子宮頸がん検診受診率が一気に50%を越し、欧米並み水準も期待できると思います。
日本の未来のために、わが国でも早急に“HPV検査に自己採取を許可”して頂きたいものです。

子宮頸がん検診(HPV検査用)採取器具セルソフト完成!

前回のブログでHPV検査のことを話しましたが、その時に紹介したHPV検査用採取器具セルソフトについて少し詳しく説明します。
もう8年程前になりますが、同じ頃2組の方がアイラボに来られました。
その人達の共通点は、既に世に出回っている加藤採取器具は素晴らしい器具ですが、“外観がごついのでもう少し優しいイメージの器具にできないか?”という点と“自己採取=悪法”のレッテルを一掃できるような器具を作りたいというものでした。
私と加藤式との出会いについては(私の)別のブログ「https://ameblo.jp/yoshio0816/」でも詳細に紹介していますが、もう40年も前のことになります。医師採取検体があまりにひどい(検査にならない)ことが続いた頃、加藤式で採取した標本に出会いました。『素晴らしいの一言』、いつか自分が責任ある立場になったら、加藤式についてじっくり検討してみようと思ったのです。
その当時の写真で、をした標本は不適正としたものです。
当時の加藤式で作製された写真はありませんが、
このように採取器具から直接塗抹標本を作製したものです。
(加藤式標本作製法より抜粋)
これは現在アイラボで作製している細胞診標本です。
このような薄層塗抹標本を作製することで異型細胞の検出率は約2倍になりました。

子宮頸がん検診の受診率を50%まで上げようとしていた時

当時在籍していた八王子高尾ライオンズクラブで講演したスライドがありました。
細胞診でLSIL以上の異型細胞がどれだけ検出されたのかを比較したものです。
先ず、医師採取の代表的な機関として日本対がん協会各支部の平均と八王子市を上げました。医師が採取して直接スライドガラスに塗抹したケースでは1%と0.89%でした。自己採取についてはあまり資料がないのですが、加藤式については名古屋公衆医学研究所と千葉県の某検査機関から得られた加藤式自己採取器具で直接塗抹したものでは0.99%と0.89%と医師採取と大きな相違がないことが分かります。
しかし、平成22年度(2010年)東京都衛生検査所精度管理事業報告書の中で年間5000件以上自己採取検体を扱っている検査会社の検出率をみると、A、B、C社はそれぞれ0.36%、0.44%、0.36%とほぼ同じ成績で自己採取法の検査精度が極めて悪いことが分かります。しかし、D社は0.92%と医師採取や加藤式と同じような成績でしたのでその会社に問い合わせました。その回答は検査の対象は全て風俗営業従事者であり、採取器具はホームスミアでした。ホームスミアについての資料はこれしかありませんし、私自身が採用した経験がないのでコメントを控えさせていただきますが、私共が加藤式を用いて風俗営業従事者の検査を実施した成績(日本性感染症学会2011.12、藪崎宏美発表)では、367名中LSIL32名、ASC-H13名、HSIL6名で、LSIL以上と診断したのは51名13.8%でした。 そして今回、セルソフトを用いた調査(APOCP,volume25(2024)issue5に掲載予定)においても、風俗営業従事者30例中LSIL5名、ASC-H1名、HSIL1名とLSIL以上のケースが7例23.3%でした。LSIL以上の異型細胞の検出率のみで較するとホームスミアに比べ13~23倍になります。
このような作業をしていた頃、自己採取法の実態が分かればと思い、某大手検査会社の営業部門を訪問しました。そこではすでに加藤式に比べホームスミアにおける異型細胞の検出率は1/10以下であることを認識されていたことに衝撃を受けました。

自己採取法のイメージを変えたい! そしてもっと普及させたい!

前に紹介した2つのグループの思いがこんなところにあったのです。
その後、一方のグループは外観や機能が加藤式とは全く異なる試作品を作り意見を求められましたが、それ以降進捗状況などの報告は受けていません。そしてもう一方の会社は安全性が担保されている加藤式の改造に着手していました。外観をやさしくして、機能も向上させ、材質には環境にやさしいバイオマスプラスチックを使用したセルソフトを完成させました。
見た目は加藤式に比べ優しい感じがして、イメージチェンジができたようです。
器具の長さ、挿入部の長さ、スポンジ部分の長さは加藤式と変わりませんが、挿入部が若干細くなっています。
材質を変えたことは軽量化にもつながり、扱いやすくなりました。

関係した皆さんに心より感謝申し上げます

アイラボに最初に見えたのが、吉田興産株式会社吉田勝彦社長でした。子宮頸がん検診の受診率が上がらないわが国において、加藤式自己採取器具の有効性を高く評価した上で、外観も含め女性が安心して使って頂けるものにしたいという思いで大成化工株式会社と株式会社アイ・ラボCyto STD研究所との橋渡し役として粘り強く活動して頂けました。
大成化工株式会社代表取締役社長の白石保行氏も自ら数回当社アイラボに足を運んで頂きました。吉田社長と同様、女性の健康を守るデバイスとして加藤式を高く評価し、加藤式採取器具存続の必要性を熱く訴え、利益度外視でセルソフト開発に望んで頂きました。
心より感謝申し上げ、セルソフトが多くの女性の健康を守るデバイスとして認知され普及することを心よりお祈り申し上げます。
最後になりますが、セルソフト改良に取り組んで頂いた大成化工とアイラボのスタッフの皆さんに感謝申し上げます。また、論文提出に関係した杏林大学保健学部大河戸光章先生、論文筆頭者の藪崎宏美さん、英文担当の椎名奈津子さんに感謝申し上げます。

なお、論文はAsian Pacific Journal of Cancer Prevention, Vol 25の5月号に6月2日に掲載されます。

子宮頸がん検診ガイドライン2019年についての私見

我が国の子宮頸がん検診の受診率は43.6%(2022年)、HPVワクチン接種率は1.9%(2019年)と世界的に見ても最低レベルと言っても過言ではありません。
この背景には、行政の対応のまずさはいうまでもありませんが、対岸の火事的思考(遠くの出来事に無関心であること)や喉元を過ぎれば熱さも忘れるといったことわざがある様に日本人の国民性とも言われています。自分には何の症状もないし、(何の根拠もないのに)自分には子宮頸がんは関係ないと都合よく解釈したり、芸能人が子宮頸がんになったと聞くと慌てて検診を受ける人が増えるが、それも一時的です。
結局のところ、十分な教育がなされていないことが最大の要因かも知れません。
このスライドは、2015年、ライオンズクラブに在籍中、八王子市の市民団体
『有害情報から子供を守る会』主催のシンポジュウムで使用したものです。
その中に下に示す1枚のスライドがありました。
私が20代(50年も前)の頃、千葉大学教育学部養護教諭養成課程の故武田 敏教授の元で性教育を学んでいましたが、その時日本人の国民性という言葉がよく出てきました。このスライドの様に、
日本人の性に関する教育が如何にゆがめられていたかが良く理解できると思います。
私が中学生の頃、“男子は外で遊んでいろ”と言われ、女子だけが暗幕を貼った教室で何やら“男子には聞かせたくない話”がありましたが、まさにそれは月経教育であったのです。性に関することはなるべく内緒にしておく教育が今なお尾を引いている気がします。

私がHPVの研究を始めた今から40年も前のことですが、学会でHPV感染のことを発言すると座長の先生から『子宮頸がんの原因になるHPV感染は性感染症(性病)であるといってはいけない』とよく言われたものです。それはなぜかと問うと、『クラミジアや淋病とは違い、感染している人があまりに多く、症状もないので性感染症と言ってはいけない。』という回答でした。子宮頸がん検診の受診率が上がらない中、HPV感染が性感染症だと言うと、「(何の根拠もなく)私にとって性病は関係ない」という女性が益々検診を受けなくなるのではないかと心配したのかも知れません。

米国に住むある日本人いわく、HPVの感染が子宮頸がんの原因になると聞いた米国人は『私は大丈夫か?と言ってすぐ検査に行く』そうですが、日本人は(何の根拠もなく)「私はHPVには関係ない」と、対岸の火事的思考は欧米の人とは異なりますね。

私はこのブログで、セルフメディケーション(自身の健康は自分で守る)の考えを広めるため、女性特有の病気について様々なケースを紹介し、自身の知識を広めて頂きたいと考えています。
今回は最新の子宮頸がん検診ガイドラインについて勉強したいと思います。

HPV検査単独法が推奨グレードAになった

細胞診単独法HPV検査単独法推奨グレードAに、細胞診・HPV検査併用法推奨グレードCで、細胞診単独法の検体採取は医師採取に限り自己採取は認めないになっていますが、HPV検査単独法と細胞診・HPV検査併用法は、検体は医師採取を原則とするとなっています。その理由は「国内でのエビデンスが不足しており、受診率向上につながるか、精密検査以降のプロセスにつながるかなどのfeasibility研究が必要である。」としています。
HPV検査単独法と細胞診・HPV検査併用法は医師採取を原則とするになっていますので、、これまで医師採取を苦手としていた人や仕事や子育てで忙しい人、わざわざ検診機関まで出向くのが面倒という人にとっては朗報といえます。

自己採取器具エヴァリンブラシとは

エヴァリンブラシは採取後乾燥できるため郵送に適しており、医師が採取した成績と一致しているため(Tranberg et al.,BMC Infecious Diseases,18,1-7,2018. Polman et al.The lancet oncology,20,229-38.2019. Onuma et al. International Jounal of Clinical Oncology,25,1854-60,2020.)、世界中で採用されています。写真上に示すように、ストッパーがついているため、安心して使用できます。挿入部の長さは4cm、細胞採取ブラシの長さは3.3㎝で全長7.3cmの器具です。

前述のように採取後細胞は乾燥状態で検査施設まで運ばれるため、HPV検査のみに使用されます。
輸送しやすいメリットはありますが、陽性と判定された場合は、現状の進行度(NILM、LSIL、HSILなどの)が分からないので、医療機関を受診して必ず細胞診検査を受けることになります。
このルールが守れないと検査の意味が全くなくなります。

下の白い採取器具は加藤式です。子宮頸がん検診用に開発され、細胞診を目的とした自己採取器具としては最も優れた器具と思われます。当社では、医師採取が苦手な方や忙しい方、検診に足を運ぶのが面倒な方に郵送検査として提供しています。
細胞診のみならずHPV検査や淋菌クラミジアなど婦人科領域の検体採取器具として利用できます。

中のピンクの採取器具は加藤式をグレードアップしたもので、大阪の大成メディカル社が主にHPV検査用に開発したものです
加藤式と同様に保存液を添加して検査施設まで輸送しますので、同一検体で細胞診やおりもの検査にも使用できます。
HPV検査で陽性の場合、残りの検体で細胞診の追加検査ができる点が今後に期待されます。

アイラボのHPV検査単独法とは、、、、

我が国の子宮頸がん検診は細胞診単独法で進められてきましたが、受診率向上を目的に自己採取によるHPV検査単独法が自治体や企業検診への導入が期待されます。
そんな中、アイラボの郵送検査の最大の特徴は全ての検体(例えば淋菌やクラミジアの検査でも)についてパパニコロウ標本(細胞診標本)を作製し、検体の適否判定、炎症の有無、感染症や臭い、更にホルモン状態のチェックを簡単に行っています。勿論アイラボのHPV検査単独法による子宮頸がん検診でも、そのようなチェックを行っていますので、是非アイラボのHPV検査をお試しいただければ幸いです。

不正出血、先生は子宮頸がん検査をしたけど

ある婦人科の先生から、不正出血があった人の子宮頸がん検査の依頼がありました。
検体は血液成分が多かったので、通常より長めの(36mm幅)の標本を作製しました。
その理由は、血液成分を多く含む検体は相対的に観察すべき細胞が少なくなるのです。
早速顕微鏡を見てみましょう。
背景にはオレンジ色に染まる赤血球がたくさん見えます。
白血球はあまりないので、出血はしているものの腟炎は起こしていないようです。
標本をくまなく観察しても子宮頸がんに関係がある異型細胞は見られません。
この写真を見た段階で、アイラボの職員に標本を回しました。
流石、我が職員達は私に手渡された理由が理解できたようです。
拡大を上げてみました。
写真中央やや左下で緑色っぽい細胞はトリコモナス原虫。
これは細胞検査士ならだれでもわかります。
さて、これからが問題!
核が一つしかない細胞がコロコロしています。
リンパ球?
さらに拡大を上げてみました。
トリコモナス原虫の核が縦に細長く見えます。
この写真の中には13個くらいの細胞が見えますが、その中で核が1個しかない細胞が4個見えます。
これらはリンパ球ですが、リンパ球の割合が多いので濾胞性頸管炎が疑われます。
子宮の入り口(子宮頸部)にリンパ球の塊(リンパ濾胞)を作る代表的な感染症はクラミジア感染です。この標本の中に星雲状封入体を有する細胞が確認できれば、クラミジア感染の診断は可能ですが、それを確認できなくてもこのケースの様に濾胞性頸管炎の所見だけでも、かなりの確率でクラミジア感染を疑うことが出来ます。

従って、このケースはトリコモナスとクラミジアのダブル性感染症(性病)が疑われますので、検査を依頼された先生には、その旨を報告しました。
後日、先生からはクラミジアの追加検査を頂き、
この例もクラミジア感染が確認されました。
細胞診は奥が深いですね
これが星雲状封入体を有する細胞です。

婦人科細胞診は婦人科感染症の総合的診断法です

今後、子宮頸がん検診にHPV検査単独法を採用される自治体や健康保険組合が増えてくると思いますが、採取器具によってはHPV検査しかできませんので、このように腟内の状況を見ることが出来なくなります。
アイラボでは採取器具を加藤式やセルソフトを採用し、しかも必ず顕微鏡で検体の適否判定を行っていますので、
そこで得られる腟炎や感染症、さらに腟内フローラの状況等についても報告していきたいと考えています。
アイラボはこの作業を最も大切にしています。
HPV検査の報告は、ハイリスク型の感染があるかどうかの結果のみが報告されます。
従って、見本の報告書の中の赤い文字についての報告はありません。
自己採取法では医師の内診に相当する観察はありませんので、私達は内診に代わるものとして顕微鏡で観察した状況を報告するようにしています。

今回は少し内容がずれてしまった感はありますが、細胞診は様々な情報を提供してくれますので、受診者はもとより、結果をみた婦人科の先生方にも重要な情報提供になると思います。

子宮頸がん検診用加藤式自己擦過法器具は生きています

最近、子宮頸がん検診用の加藤式自己擦過法器具に関する問い合わせがありました。
その内容は、
一昨年製造販売元から廃業の手紙が届きましたが、まだ購入できると聞きました。
廃業されていないのですか?
というものです。

大阪の大成メディカルという会社が製造しています

確かに名古屋にあった加藤式器具製造所は廃業されました。
しかしその後、大阪の大成メディカル株式会社様が引き継がれ、
現在は大阪で製造しております。
所在地 〒567-0054大阪府茨木市藤の里2-11-6
072-648-3601
https://www.taiseimedical.com/

販売元はやはり大阪の吉田興産株式会社さんになります。
所在地 〒565-0811 大阪府吹田市千里丘上15-15
06-6878-2300
https://ko-yoshida.co.jp/

アイラボでも加藤式自己採取器具を販売しています。

アイラボでは、
比較的小口のお客様には加藤式採取器具を販売しております。
しかも、
ご希望があれば検査も承っておりますのでお気軽にお問合せ下さい。
042-652-0750

アイラボがお受けできる検査項目

1.子宮頸がん細胞診検査
2.ハイリスクHPV検査
3.HPVタイピング検査
4.婦人科トータルセルフチェック
5.腟内フローラチェック

このほかにもご要望があれば全国どこでも検査の受託可能です。
詳細はアイラボのHPをご覧頂くか、電話でご相談ください。
https://ilabo-cyto-std.com
042-652-0750

加藤式自己採取器具を用いたアイラボ子宮頸がん検査

アイラボの子宮頸がん細胞診検査は独自に開発したLBCの採用により、
子宮頸部扁平上皮内病変の検出率は医師採取とほぼ同等です。
LSIL以上の病変については、おおむね1.5~1.9%で推移しています。

また、標本の作製から顕微鏡での診断までの全ての行程が
上に示す研修修了者によって行われます。

安心したかったのでアイラボの子宮頸がん検査を受けてみた

40代後半の方の決断です。
もう何年か前になりますが、パートナー以外の方と一度だけ性交渉がありました。
その後、特に気になる症状はなく、日々これまでと変わらない生活をしています。
パートナー(旦那)とも特に変わったことはありませんが、これまで子宮頸がん検診を受けたことがなかったので、ちゃんと調べておこうと思い、郵送での子宮頸がん検査を受けました。

良く決断しました。大大正解です!

良く決断しましたね。
HPVは感染してもほとんど症状は出ませんが、感染初期に若干外陰部にかゆみを訴える方がいるくらいです。症状も無いのに、医療機関に赴くのも面倒なことですし、ついつい億劫(おっくう)になってしまいますよね。その上、恥ずかしい思いも少なからずあり、子育てなどや仕事で検診を受けない人はたくさんいます。ちなみに日本では2年に一度検診を受ける人の割合は、
2019年の国民生活基礎調査(厚労省)によると、子宮頸がん検診受診率は47.3%であり、2009年に受診率50%を目指したにもかかわらず、10年経っても目標に届いていないのが現状です。
そのため、2019年に子宮頸がんに(罹患)かかった人は10879人、2020年に子宮頸がんで亡くなった人は2887人に上っています。(がんセンター研究所、2022年10月25日更新・確認)こんな中、郵送検査であっても子宮頸がん検査を受けたことこそ、セルフメディケーション(自分の健康は自身で管理する考え)の大切なところです。

果たしてその結果はどうだったのでしょう?

私達は、この細胞を見てHSIL(ハイシル)中等度異形成と診断しました。
この方は細胞診とHPV検査を同時に行う最新の子宮頸がん検査を希望していました。当然のことですが16型16・18型以外が陽性でした。

自己採取は検査施設や採取器具で大きく異なります。

下の表は以前紹介したものですが、HPVが感染してからHSILまでになるためにはかなりの時間がかかります。
また、感染していても(医師採取も同様)常に異常な細胞が出るわけでなく、NILM(異常な細胞は見られない)やASC-US(意義不明な異型細胞)、LSIL(軽度扁平上皮内病変)が出たりでなかったりを繰り返します(第一段階)。
この研究はアイラボの藪崎宏美が日本性感染症学会「2011,12月(HPV持続感染例における細胞形態学的推移)」で発表した一部です。
多くの場合、一旦HSILの細胞が発見されると、毎月同じ様な細胞が確認できるようになります(第三段階)。
このことは、自己採取でもがんが進行する前に発見できることを物語っています。

学会で同時に提示したスライドですが、

同様の現象が見られます。
この方は最下段の検査を受けた後、円錐切除術を実施し、結果は上皮内癌でした。
子宮頸がんガイドラインで自己採取法はすっかり信頼をなくしていますが、
採取器具と検査法さえ間違わなければ有効な方法と思われます。
大切になるのは、検査を提供する側は、採取器具の性能や検査精度を熟知し、しっかり説明責任を果たすことです。また受診者も“チコちゃんに叱られないように” 事前にそれらのことはチェックはすべきと考えます。

自己採取でも、検査を受けて大大正解でしたね

自分がいくら努力しても自分ではどうしようもないがんがあります。
しかし、子宮頸がんはあなた自身が守れるがんなのです。今回ご紹介したように、HPVの感染は誰にでも起こり得るのです。病院に行くのが面倒、医師採取は苦手、等々、、、、理由はあってもあなたの子宮と命を守るのはあなたしかいません。