子宮頸がん検診で『AGC』、、、これって何?

この細胞は、加藤式自己採取器具で採取した検体に見られた異型細胞ですが、アイラボでは『“AGC”と診断して、早い機会に婦人科を受診して子宮の入り口(子宮腟部)から少し奥に入った子宮頸部(子宮頸管内)の精密検査を受けて下さい。』と報告しました。“早い機会に”とあえて記載した背景には『子宮頸部腺がん』の存在が強く疑われたからです。
この細胞は、医師がサーベックスブラシという子宮腟部から子宮頸部にかけて細胞を採取する器具で採取しました。前の細胞とは全く様相が異なり、黄色く染まる粘液が特徴的な子宮頸部に発生する腺がんです。このケースも“AGC”と診断し、同様に子宮頸部の精密検査(組織検査)にて確認して頂くよう報告したケースです。
この細胞は、加藤式自己採取器具で採取された細胞です。細胞の核がやや大きくなり、核小体も大きくなっています。このケースは本来自己採取器具では採取し難い子宮の入り口より少し奥からも採取されています。外反といって内側の細胞がめくれるようにして腟内に露出してくれば自己採取器具でも採取されないわけではありませんが、細胞の核が元気そうに見えるので、(良性の変化)と思われますが、念のために婦人科を受診して再検査を受けて頂く事にしたケースです。

この様に“AGC”には様々な細胞が入ってきます。

細胞診とは、採取された細胞を観察してその病変を推定する診断法です。
“がんと診断できるケース” “がんと思われるが断定が困難なもの” “良性の変化と思われるががんの存在も否定できないケース” など、様々な顔つきの細胞が現れたり、観察する検査士によっても診断には幅がります。
今回ご相談頂いた方は、市町村が行う子宮頸がん検診を受けられ、“AGC”と診断されました。その後この方は、最寄りの大学病院を受診し細胞診の再検査と組織検査、さらにHPV検査を受けられたようです。
その結果、細胞診検査ではASC-US(意義不明な異型細胞)と診断されたためハイリスク型のHPV検査を受けられ「陰性」でした。また、組織検査においても異常は見られなかったようです。

検診での“AGC”は何だったのか? 、、、当然の疑問ですね。

少し専門的な話になりますが、私の回答を以下に示します。

AGCとは“atypical glandular cell(異型腺細胞)“という意味です。
腺細胞とは、“腟内は(皮膚と同じ)重層扁平上皮という強い組織(粘膜)で覆われています。これは性行為や出産に耐えられるように厚く幾重にも細胞が重なって丈夫な粘膜です。一方、子宮の入り口から少し奥に入った子宮頸部は粘液を分泌する(単層の)円柱上皮という組織からできています。その接点を扁平円柱接合部(Squamo-Columnar Junction)といいますが、子宮頸がんはこの境目(SCJ)から発生します。
多くの子宮頸がんは“扁平上皮がん”になりますが、一部円柱上皮の性格を持った癌が発生します。これを“腺がん”といいます。
扁平上皮癌に比べて腺がんは少し奥に発生しますので、“検査で見つけにくい”特徴があるし、“たちが悪い”癌なのです。
この癌を見逃さないため、採取する側の医師は“少しでも奥の方から細胞を採取してきよう”としてお奥まで採取できる器具を使って“新鮮な細胞をごっそり”採取してきます。私たち細胞検査士も“腺がんを見逃してはいけない”という思いが強いものですから、少しオーバーに拾い上げざるを得ない状況にあるのです。

扁平上皮癌の場合は、NILM(正常)→ASC-US(HPV感染があるかも?)⇒LSIL(HPV感染がある)⇒ASC-H(HSILお存在が否定できない)⇒HSIL(中等度異形成・高度異形成・上皮内癌などの前がん病変)⇒SCC(扁平上皮癌)といった具合に進行度によって細胞の顔つきが違います。しかし腺がんの場合はそれほど明確な差が現れず、細胞診の判定も難しいのです

AGCとはそういう状況の中で“異型な腺細胞が見られていますので精密検査で確認してほしい”といった診断であり、検査する側の個人差もありますが、そういう状況をご理解頂ければと思います。

(今回の検査で異常がなかったことで安心頂けます)良かったですね。
検診を受けて“AGC”と診断されたことで、病院を受診して精密検査を受けることになってしまったわけです。
結果は、『現在のところ異常はなく、半年後に再検査を受けることになりました。』と、かなり面倒なこになってしまいました。

しかし、細胞診は“怪しい細胞を拾い上げる検査”なのです。
細胞診に携わる私達にとっては、精密検査に廻すべきか、次の検診まで待っても大丈夫な細胞か?大変難しい判断を要求されますので、自身の技術を磨き、常に高い精度を提供する使命感が求められます

“精密検査を要す”の結果を受けた時は、『セルフメディケーション! 自分の健康は自分でしか守れません!』精密検査を受けて“今回は異常ありません”の結果をもらうことが大切なのです。