HPVに感染していても異常の細胞が出るとは限りません

アイラボを開業して20年以上が過ぎました。
特に女性の健康に特化した活動をしてきましたが、その理由の第一は、子宮頸がんや不妊症などの女性特有の病気は早期に発見できれば“大事にはならない”からです。しかし、女性にとってはいつの年代においても“婦人科は敷居が高い”ものです。そして、そのことが早期発見を遅らせてしまうのです。私達でも、“気軽に相談できる場” や “気軽に検査できる場” などの環境づくりなら社会の役に立てると考え、アイラボを立ち上げました。
そして、先ずは病気を知って頂くために、HPやブログでいろいろな病気や、悩み事を紹介し、さらに顕微鏡画像を取り入れ、病気の見える化にも挑戦してきました。
そんなことも少しは役立ったのか、最近自分の健康についてしっかり考える人が増えてきた気がします。

3年2ヵ月間HPV感染者を自己採取法で追跡調査した成績です

この画像は2,011年12月に開催された日本性感染症学会で『HPV持続感染例における細胞形態学的推移』というテーマでアイラボの藪崎宏美が発表したスライドの一つです。
2008年4月の検査で、細胞診ではLSILの細胞が検出され、HPVタイピング検査では16型と51型の重複感染例として始まりました。その後、2,009年1月まで同じウイルスが持続感染しているにもかかわらず、細胞診ではNILM、ASC-US、ASC-H、NILMといった具合に、異型細胞が出たり出なかったりを繰り返しています。『大切なことは、感染していても異常な細胞が必ず検出されるわけではないということです。』2008年2月から2009年3月まで異型細胞は検出されませんが、HPVが消失したわけではないということがこの写真で分かります。
ですから、以前LSIL以上の異型細胞が検出された人は、一回の検査でNILMになったからといって安心してはいけないということをこの写真は教えています。2009年4月の検査では突然ASC-Hの細胞が出ているのです。
この理由は単に細胞診の精度が悪いというだけでなく、細胞を採取する時期(性周期)にも影響することを、大河戸先生は学会で報告しています。
それ以後、LSIL、ASC-US、NILMと顔つきの悪い細胞は出ていないのですが、2009年の9月になると細胞診検査では前癌病変ともいえるHSILの細胞が検出されました。いよいよ癌に近づいてきたのかなと思いきや、またLSILやASC-USといった前がん病変から離れていくような細胞になります。しかし、2010年4月以降は、ASC-H以上の細胞のオンパレードとなります。このように、細胞診では徐々に徐々にですが、顔つきの悪いUSC-H以上の細胞が途切れることなしにいつの検査でも出っぱなしになります
子宮頸がん検診に用いられている細胞診はこのような特性を持っていることが理解できたでしょうか。

私達は2008年11月の細胞は“癌になるのでは?”と予測しました

写真上の細胞でASC-Hと診断しましたが、当時私達はこの細胞を見た時“がんの前駆細胞(将来癌になる最も初期の細胞)”ではないかと思い、“こいつは絶対に注意しなければいけない奴だ!” と勝手に決めつけていました。ところが、私達の顕微鏡にその姿はなかなか見せないのです。2010年4月以降になって、私達の目の前にやっと本性を現し始め、それ以降は毎回HSIL相当の異型細胞が検出されるようになったのです。そしてついに2011年6月の細胞診検査ではHSIL(上皮内癌)相当の細胞になった時点でこの方は円錐切除術を行いました。

患者さんからの嬉しい手紙

自己採取による定期検査で3年以上追跡検査をした結果の全てです。
職業柄定期検査として細胞診も実施していたケースです。検査を受けられた方が皆さんのためになればとのご理解を頂き、こうしてご紹介させて頂きました。
今回は特殊なケースですが、自己採取型の子宮頸がん検診でも、このように役立つ検査なのです
ご当人にも喜んでいただけましたが、私達にとってもとても嬉しいお手紙です。
こちらこそ、ご協力頂きありがとうございました。
セルフメディケーション!
子宮頸がんになる前に円錐切除術などの適切な処置が可能です

私達は「子宮頸がん検査」という言葉は「過去の言葉」とし、これからは癌になる前に発見する検査「HPV細胞診検査」に変えていきたいと考えています。

病院での検査や健診が苦手な人は無理をしなくても検査を受けることが可能です。

心配な方はお気軽にご相談ください。