医師の内診では問題ない! と言うが?

子宮頸がん検診は、子宮頸がんと関係のあるHPV感染に伴う種々の変化を細胞の顔つきを見て「現在の状況」をNILM、ASC-US、LSIL、ASC-H、HSIL、などに分類して報告するものです。すでに何度もこれらの意義を説明していますが、相変わらず無料相談でも「ASC-USってどういう事ですか?」といった質問が多いので簡単に説明します。
子宮頸がん検診はがんと関係がある状態を見つけるものです。
NILMは、「とりあえず、癌に関係のある所見は見られない」との理解でよいと思います。
ASC-USは、本来意義不明な異型細胞という意味ですが、その中に「ハイリスク型HPVの感染があるかも知れない」ものも含まれています。従って、ASC-USと診断された時は「HPV検査を受けることになっています。
LSILは、細胞診検査でHPV感染が明らかな場合で、単にHPVが感染している(感染症の)状態です。クラミジアや淋菌に感染しているのと同じなのです。通常「軽度異形成」と診断されます。
ASC-Hは、HSILの存在が否定できない時に使われます。
HSILは高度異型扁平上皮内病変という意味で、ここには中等度異形成、高度異形成、上皮内癌が入ります。
LSIL がHPVの感染症であったのに対して中等度異形成は感染症から腫瘍化の方向に向かい始めた状態です。定期的に細胞診検査と組織検査を行い、さらにその上の高度異形成や上皮内癌に進む場合は、病巣だけを取り除く円錐切除術が行われます。
今回紹介するケースは、先生が細胞を採取するときの内診で「特に目立った所見はない」という意味で“np”=no ploblemと記載されたと思われます。
果たして本当に“np”なのでしょうか?
早速顕微鏡を見てみましょう。

やっぱり内診だけでは分からないか?

確かに、子宮頸がん検診のためのベセスダ分類では「NILM」です。その意味からはno ploblem でよいのですが、
白血球の量から推測するとおりものは黄色で腟炎を伴っていると思われます。また、細菌性腟症も疑われますので、臭いも気になっているのではないかと推察されます。

顕微鏡の世界から見て初めて分かること。
先生がno ploblemと書かれたことは誤りではないのですが、顕微鏡で100倍、400倍で観察した“状況”も知らせてあげられたら? いいんだけどな?
アイラボでは、このようなケースについては、「白血球が増加し腟炎が疑われます。おりものや臭いが気になる場合は今回採取された検体でおりもの検査の追加が可能です。希望される場合は二次元コードよりお申し込み下さい。なお、分からないことがありましたらお電話でご相談下さい。」このような対応をとっています。
多くの方が追加検査を利用されています。しかし、残念なことに、多くの検診機関は、トリコモナスとカンジダの有無は報告しても、追加検査などの対応を取っていないのが現状で、むしろ「余計な記載を認めない」ところが多いのではないでしょうか?
多分対応ができないからでしょうね。
とってももったいない気がします。
そんな現状を知っておきましょう。「おりものや臭いが気になるから今年は子宮頸がん検診を受けよう。」、、、そんな方も少なくないと思います。せめて、「オリモノや臭いが心配なら、一度婦人科を受診しましょう。」位の対応があってほしいと思いますが、多分無理でしょう。
そんな時はセルフメディケーション、病院の受診か郵送検査の利用も考えてみましょう。