おりものが心配で郵送の検査を受けました

このブログでも紹介していますが、子宮頸がん検診はこれまで細胞診検査で行われてきましたが、細胞診検査の検査精度が徐々に下がってきているため(75%程?)、HPV検査がファーストスクリーニング検査として“推奨”されるようになってきました(検査精度95%と言われています)。
日本で子宮頸がん検診が軌道に乗ってきた頃、野田紀一郎先生は、子宮頸がん検診(細胞診検査)を受ければ子宮頸がんは100%救えると言われていました。私自身その言葉に共感し、子宮頸がん検診の受診率向上こそが子宮頸がん撲滅のキーポイントであると考えていました。なぜなら、その頃の子宮頸がん検診の受診率は25%ほどで先進国の中で最も低い状態でした。当時(2009年頃)厚生労働大臣であった舛添氏は、5年間で受診率を50%まで引き上げると豪語していましたが、いまだに達成されていません。
その間、細胞診検査の中身もかなり変わってきた気がします。採取法も綿棒からブラシ系へと変わり、自動標本作製装置の普及に伴い、細胞診の検査精度が上がったのかと思いきや、国際的にみても70%~80%と考えられています。
個人的には、ブラシ系採取器具の普及に伴い、強引に細胞を採取するため、細胞診そのものが難しくなっている印象はあります。「細胞診はどこに出しても同じだよ」といわれた先生がいましたが、私達は「ここにお願すれば安心」といわれる検査所を目指しています。
前置きが長くなりましたが、今回のケースを見ていきましょう。

自己採取はダメ!、、、と言うが?

今年春の子宮頸がん検診で“異常なし”という方が、おりものが気になってアイラボの“婦人科トータルセルフチェック”のキットを購入されました。このキットは、Drシイナラボ(アイラボ)を立ち上げた時一番最初に世に送り出した郵送検査キットです。加藤式採取器具で自己採取した検体をポストに入れるだけで「子宮頸がん細胞診検査、淋菌、クラミジア、トリコモナス、カンジダ、細菌性腟症、膣炎」の7項目を検査するものです。細胞検査士ありかた委員会を立ち上げ、細胞検査士を教育していた私が「自己採取による子宮頸がん検診はダメ!」という風潮の中で、“子宮頸がん細胞診検査” 単独で世の中に出す勇気はありませんでした。そこで最初は“婦人科トータルセルフチェックの中の一項目”としたわけです。
もちろん現在は「子宮頸がん細胞診検査」キットとして提供しています。
こんな葛藤の中で生まれた(婦人科トータルセルフチェック)キットです。
早速細胞を見てみましょう。

左上は弱拡大像です。検査を受けていただいた方が心配されていたように、白血球の増加が見られ若干腟炎を伴っているようです。そんな中に何やら核が大きくなった細胞が見られます。
標本を見ていくうちに、LSIL(=軽度異形成)相当の細胞を認める中に、下段に示すやや小型で核の占める割合が大きな細胞が多数見られました。中には角化(オレンジ色に染まる異型細胞)したものも見られます。全体的に核は迫力に乏しいため、ASC-H(HSILの存在も否定できない)と診断しました。
HPV感染に特有なKoilocytosisは見られませんが、核が溶けたような所見もありHPV感染は明らかと思います。更に、Koilocytosisが見られないとなると、16型、18型、52型の感染も考慮しておかなければ、、、
先ずは、婦人科トータルセルフチェックを受けて頂いた方には「早く見つかってよかったね」と言いたいです。今年春の子宮頸がん検診で異常はなかったので“おりもの&臭いの検査(婦人科トータルセルフチェックから子宮頸がん細胞診検査を除いたキット)”でよかったのではないかと思いますが、この方はあえて「婦人科トータルセルフチェック」を受けられました。正解でした。勿論、「おりもの&臭いの検査」を受けられたとしても、「子宮頸がん細胞診検査」の追加検査をお勧めしています。
子宮頸がん細胞診検査は勿論“医師採取”が基本であることに変わり有れませんが、開業以来20年が過ぎた私達の経験から、医師採取が「恥ずかしい、忙しい、面倒」という理由で検診を受けない方がかなり存在することが受診率が上がらない要因と考えています。検診機関の中にはそんな方のために「自己採取の方法もあります」と“小さな声で”伝えて頂ける施設もありますが、優しさですかね?
でも、HPV検査は自己採取でも精度的には全く問題はないと思われますので、今後の普及が待たれます。
セルフメディケーション!自分の健康は自分で守るの典型例です。どんな検査を受けても100%安心というわけではありません。自分の体のことは誰より自分がよくわかっているのです。
不安なことがあったら先ずは相談することから始めましょう。