やはりHSILが潜んでいた

前回、HPV感染のケースで、大型巨細胞が出現した記事を書きましたが、またこんな細胞が!
本当にLSILでいいのかな?、、、と、思いきや、やはり潜んでいました。見つかってよかった。
そんな感じです。

私達アイラボでは、病院から依頼される医師採取標本は25×25mm(625㎟)の標本を作製します。また、加藤式器具で採取された自己採取検体は、25×36mm(900㎟)の範囲に細胞を塗抹します。医師採取検体はSurePath標本のおよそ5.5倍、ThinPrep標本のおよそ1.6倍になり、自己採取標本ではSurePath標本のおよそ7.9倍、ThinPrep標本の2.4倍の細胞を観察していることになります。

目立つ細胞に目をとらわれていると、より悪い細胞を見落とす危険性が出てきます。
今回紹介するケースはアイラボの標本ですが、ごくわずかなHSIL相当の細胞が見られたケースです。
慎重な観察(スクリーニング)を怠ると、LSILとして報告される可能性があります。

早速見てみましょう。

LSILとHSILでは雲泥の差

最初に目に飛び込んできた細胞は上の写真です。
これらの細胞は、前回紹介した細胞とほとんど同じ巨細胞化したHPV感染細胞です。
このような細胞だけなら、HPV感染でLSIL(軽度扁平上皮内病変=軽度異形成)ということになりますが、標本内の数か所に下のような細胞集塊を認めました。中層から深層型の異型細胞で、HSILを考えなくてはいけないケースです。しかし異型細胞が少ないこともあったので、ASC-H(HSILの存在も否定できない)と診断しました。

観察する細胞が少ない標本では、異常な細胞の割合も少なくなるので、発見できる可能性はさらに低くなります。
最下段は、アイラボの標本と自動標本作製装置によるものの比較です。
検体の採取法や標本作製法は医療機関によって様々です。
検査を受ける側からすれば“どこで検査しても同じ”と思うでしょうが、検体の採取も綿棒や特殊な形をしたブラシなど様々です。アイラボは産科を標榜されている先生方は「綿棒採取」それ以外はサーベックスブラシを使用している先生が多いようです。

綿棒採取は精度が悪いと言われていますが、その理由は先生方が綿棒で採取した検体を直接スライドガラスに塗抹すると、せっかく採取された細胞が綿棒側に残り、スライドガラスに肝心の細胞が十分塗抹されないことによります。従って、アイラボでは、先生方が採取した綿棒をそのまま保存液に入れてアイラボまで搬送し、アイラボで細胞検査士が綿棒から細胞成分全てこき落としているため、検査精度に影響することはありません。当然のことですが、子宮頸管内を精査したい時はブラシを利用されていますが、それは医師の判断によります。
一方、より強引に細胞を採取するサーベックスブラシは、細胞を採取するという点では優れていますが、子宮腟部、
扁平円柱接合部(SCJ)、子宮頸部領域の全ての細胞を掻き採ってくるため、細胞診断を難しくしている傾向があります。つまり、あまり異常ではない細胞も異常なのではないかとの心配からover diagnosis(過剰診断)する傾向にあるような気がします。
結果的に細胞診の精度の低下につながる可能性も否定できないのではないかと思います。

今回の記事は何やら専門的な話に陥ってしまいましたが、受診者の皆さんは、ASC-US以上の細胞が検出された時は医師の指示に従い、定期的な追跡検査を怠らないことが大切と思います。
また最近、HPVの遺伝子検査が普及していますので、HPV検査で陽性の場合は感染しているHPVの型を調べておかれるのも、子宮頸がんに対する意識を持続させる点からも勧めています。アイラボでは「HPVタイピング検査」として高感度なUniplex E6/E7 PCR法で調べています。
このUniplex E&/E7 PCR 法は杏林大学保健学部大河戸先生のグループが開発した方法で、例えばいつもこのブログで見て頂いている1個の細胞からでも感染しているHPVの検出は可能なんです。最近、女性に優しい男性から注目されている検査です。自分の大切な人にはHPVを感染させない!これもセルフメディケーション!