HPV感染細胞がすごすぎない?

もう50年以上もこの仕事をしていますが、こんなに激しい異型細胞が標本のあちこちに見られる事ってあっただろうか? HPVの性格が変わってきたのかな? 皆さんご存じのように、コロナでも色々変異しますしね。
昔、こんな異型の強い細胞が出てきたら癌を疑っていたかもしれません。

標本を観察している時に、あまりにもすごい異型細胞に遭遇すると私でもそれに目を奪われてしまいます。冷静に!、冷静に!もっと怖いやつが潜んではいないか?、、、と、いつも言い聞かせて観察(スクリーニング)しています。

今日もそんな細胞との出会いがありました。
それではじっくり見ていきましょうか。

ウイルスってすごいね!

今回は角化(オレンジ色に強く染まる)細胞で、超大型の異型細胞を紹介します。
写真上の左(一番上)は弱拡大ですが、周りに見られる細胞に比べ数倍以上の大きなオレンジ色の細胞が見られます。拡大を上げてみると、その中央には複数の大きな核が見られます。
次の写真も同じように巨大な細胞でいくつかの核が存在します。

こんな驚くような細胞ですが、私達はLSIL(HPV感染を伴う軽度異形成)と診断します。
LSILとは“軽度扁平上皮内病変”という位置付で、がんの方に向かう腫瘍性の病変ではなく、淋菌やクラミジアなどと同じく感染症としての位置づけです。女性の場合、おおむねその90%は自然にいなくなります。残りの10%程で感染が持続してHSIL(高度扁平上皮内病変)へと進みます。
LSILと診断された場合は、細胞診検査で “HPV感染が明らか” になったわけですので、その後は定期的に追跡検査が必要になります。
3ヵ月から半年に一度婦人科を受診して細胞診検査を受けることになります。
その第一の目的は、HSILへと進行していないかをチェックする分けですが、軽度異形成の段階では異常な細胞が全く発見できないこともありますので、一度NILM (異常な細胞が見られない)と診断されても、油断することなく定期的なfollow-up が大切になります。
大変面倒なことですが陰性化するまでは主治医の指示に従いましょう。
検診でせっかく見つかってもその後病院を受診されない方もおります。
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