膣の中にヘルペスが感染しても症状は

ヘルペス、正式には単純性ヘルペスウイルス感染症です。
唇にできるのがⅠ型、性器にできるのがⅡ型となっています。
しかし、性行為で感染することが多いため、Ⅰ型・Ⅱ型を分ける意味はあまりありません。
つまり、性交だけでなく、キスやオーラルセックスでもうつります。
初めてこのウイルスに感染した時は強い痛みを伴い、特に外陰部に感染した時は歩行困難ななることもあります。しかしこのケースは、外陰部には特にヘルペスを疑う所見は見られないものの、かゆみとおりものが増えたことで婦人科を受診し、子宮頸部細胞診検査を実施しました。

多核細胞が出現しています

子宮頸部の細胞診検査は、子宮頸がんに関係した細胞だけでなく、いろいろな感染症に伴う変化も観察できます。ヘルペス感染もその一つで、特徴的な所見がみられるケースでは細胞診での診断が可能です。
その特徴的な所見とは
1)(写真のような)多核形成。
一つの細胞の中にいくつもの核がみられるもので、ヘルペス以外にもHPVの感染や放射線治療後、がんなどで同じような所見が見られます。しかし、ヘルペスの場合は一見多核に見えますが、実は、いくつかの細胞が融合してあたかも多核の様に見えるだけなのです。
2)核のスリガラス様構造。通常、細胞の核は細かい顆粒状(クロマチン)を呈していますが、核の中でウイルスが増殖すると、(写真の様に)核内は無構造化します。このことをスリガラス様と表現します。つまり、ウイルスが核の中で増えていることを意味します。
3)核の鋳型状配列。細胞融合により(写真の様に)核がお互いに押し合っているように見られる所見です。
4)核辺縁の不規則な肥厚。クロマチンが核辺縁に押しやられ、(写真の様に)核膜が厚い部分と薄い部分がみられる現象です。
5)好酸性核内封入体。初めての感染には見られない所見で(このケースです))、再発時の細胞にみられる特徴です。
このケースの様に、腟内にのみ感染がみられる時は、特徴的な症状はなく、黄色いおりものが多くなるなど、クラミジア、淋菌、トリコモナスなどと同じような症状になることが少なくありません。しかし、このケースの様に白血球の増加(腟炎)が乏しい時は、婦人科の先生も再発に気付かないため、診断できない可能があります。
しかし、自分では“いつもと違う?” “何かおかしい?” と感じたので、婦人科を受診しましたが、それは正解でしたね。
おかしいと思ったらそのままにしないことです。セルフメディケーション。自分の健康は自分だけしか守れません。