女性性器の臭いは病気のサイン
ー黄色いおりものと臭いが変わったー

婦人科の先生はこの患者の状況が分かっていただろうか?
■黄色いおりものが多くなり、同じ頃から臭いも気になっていた
重い腰を上げ、婦人科を受診しました。おりもの検査と腟洗浄をして頂き、1週間後にもう一度受診しました。検査の結果は淋菌、クラミジア、トリコモナス、カンジダは陰性とのことでした。腟洗浄をして頂いた後は、おりものの量や臭いは少し良くなった気がしますが、アイラボの郵送検査を受けてみることにしました。2年前に閉経したため、ホルモンの状態も一緒に調べたかったので購入したキットは「Femバランスチェック」です。
このような経緯の52歳女性です。それではさっそく顕微鏡を見てみましょう。
先ずは顕微鏡の拡大を下げて全体を見てみましょう。白血球が増えているのが分かりますが、他の大部分の視野にはもっとたくさん白血球を認めます。■ひどい腟炎を伴っていることが分かります。なぜこの部位の写真を撮影したかというと、黄色と赤で囲った部位が気になったからです。黄色い部分から拡大を上げましょう。
私のブログをいつも見て頂いている方は分かるかも知れませんが、細胞検査士の資格を取得したばかりのほやほや検査士にこの標本を忍ばせておいたところ、この細胞は見落とされました。強い炎症を伴っているため、典型的な細胞で教育されたほやほや検査士には少し難しかったのかな?いくつかの核が押し合うような所見は細胞融合によるもので、■ヘルペス感染細胞の特徴です。しかも核は均一(スリガラス様)化し、核内封入体は観察されませんので、(多分)初めての感染かな? その周りにオレンジ色に染まるのは赤血球が壊れた残骸ですので、(多分)不正出血もあったのだと思います。黄色い枠の中ではこのようなことを推定します。
次に気になるのが赤で囲った部分です。中心部がやや紫色に見える部分と、写真左下にも同じように青っぽく、もやもや感が見られます。私は、これらを見ると■腟ガルドネラ菌なのでは?、、、この時点で、ヘルペス感染を伴う細菌性腟症でがないかと推定します。
単染色という方法で観察すると、腟ガルドネラ菌が細胞に群がっています。前の写真で青っぽくもやもやしていたのはそのためです。もちろん乳酸菌は見られません。この視野だけを見てもヌージェントスコアは8になり、細菌性腟症が疑われます。
他の部位には、腟ガルドネラ菌が更にたくさん群がっている細胞も見られました。細胞診標本の中にもクルーセルと診断できる細胞があるかもしれません。ここにも乳酸菌は見られません。ということで、■ヘルペス感染による炎症を伴う細菌性腟症の診断は可能です。

細菌性腟症で炎症を伴っている? 
  それは無視できない!

腟内環境を見る上で大切な事は、目的は何なのか? です。
今回のケースは、おりものと臭いで悩む女性を取り上げましたが、目的はおりものの原因解明です。結局のところ、お医者さんは医療現場で普通に行われるおりもの検査を実施しましたが、真の原因には到達できなかったことになります。乳酸菌が多いのか? 少ないのか? いないのか? を調べる検査もありますが、乳酸菌が多いからといって炎症が伴っていないわけでもありません。まして、炎症の裏にヘルペスの感染が潜んでいることも知る由もありません。私達は長年経験から「婦人科細胞診は、最も安価で、最も正確な婦人科感染症総合的検査法」と位置づけ、すべてのキットは細胞診でチェックしています。Femバランスチェックなど、細菌性腟症関連の検査を提供していますが、細菌性腟症だけでは一般に炎症(膣炎)は伴いません。流産や早産の原因として細菌性腟症に伴う炎症が注目されている以上、炎症の有無を調べることが極めて重要だと考えています。細菌性腟症の背景に炎症がある場合、その原因こそが流早産に関係しているのではないかと考えています。