ASC-USと診断されて悩むカップル

子宮頸がん検診でASC-US/Ⅲaと診断されたので近くの婦人科を受診したところ、クラスⅢaなので組織検査をした方が良いと言われ検査を受けましたが、組織検査で何が分かるのでしょうか?』という質問がありました。

今回はこのことについて考えたいと思います。
現在日本ではベセスダ分類という方法で診断(評価)していますので、ASC-USはあくまでASC-USであって、クラスⅢaではないのです
そう言えば、アイラボに検査を提出して頂いている病院からの医師のコメントに「前回(アイラボではこのような診断はしていませんので、他の医院と思われる)ASC-US/Ⅲa、組織検査異常なし」や「他院でASC-US/Ⅲa、HPV(-)、組織検査異常なし」こんな医師のコメントを時々目にします。、、、ということは、ASC-US/Ⅲaの報告を受け取った婦人科医の中には組織検査まで実施しているケースがかなりあるということかも知れません。
アイラボでは、基本的に医師が判断できているものと理解していますので特にコメントはしていませんが、必要に応じて“HPVの追加検査が望まれます”とコメントすることはあります。

ベセスダ分類を採用する前は、日母クラス分類で診断(評価)していましたが、クラスⅢaと診断された場合はコルポスコピーや組織検査で対応することになっていましたので、ASC-US/Ⅲaは組織検査の対象と考えているのでしょうか?
それとも、「ASC-USは意義不明な異型細胞という診断なので、組織検査をやっておこうという事なのでしょうか?

ASC-USはそんなに心配する必要はない!

ASC-USと診断された時に注意しておきたいのは、HPVの感染があるかも知れない細胞が含まれる可能性があることです。日本産婦人科医会の指針では、ハイリスク型HPVの感染があるかどうかを検査(HPV検査)することを推奨しています。HPV検査で陽性の場合はLSIL(軽度異形成)と同様の対応でコルポスコピーと組織検査が推奨されています。陰性の場合は年に一度の細胞診検査、HPV検査を行わない場合は6ヶ月以内に細胞診の再検査が推奨されています。
この表は風俗で働いている人について細胞診とHPV検査を同時に行った結果で、アイラボの藪崎宏美が日本性感染症学会「2011,12月(HPV持続感染例における細胞形態学的推移)」で発表した一部です。私達は、HPVが感染してから子宮頸がんになるまでを大きく3段階に分けることができると思います。詳細は別の機会に述べたいと思いますが、各表の左は検査年月を示しています。例えば中央の表の一番上の「804」は2008年4月に検査したことを意味します。そして最下段の「1105」は2011年5月になります。3つの表全てにおいてHPV検査は陽性ですが、細胞診の結果は「水色はNILM」「黄色はASC-US」「オレンジ色はLSIL」といった具合に、感染していても異常な細胞が出たりでなかったりを繰り返しています。私はこのような時期を「第一段階」としています。この第一段階の90%は免疫力でHPVが排除されると言われています。
ですから、ASC-USと診断されても、それほど心配することはありませんが、HPVが陰性化するまでは定期的に検査することが大切になります。

ASC-US/Ⅲaの報告は早くなくすべき!

私達診断する側にとっては、ASC-USはあくまでASC-USであって、LSIL(軽度異形成=明らかなHPV感染)よりは細胞の異型が弱く、「HPV感染の可能性もあるのでHPV検査で確認しておいた方が良い」程度の認識で、そんなに心配する状況ではないのです

今回のご相談の様に、「組織検査をすると何が分かるんですか?」とのご質問の背景には、ひょっとしてがんの可能性があるのか?とか、そこまではいかなくてもかなり悪い状況なのか?といった様に心配事が膨らんでしまうのではないかと考えます。
日本における子宮頸がん検診は、1973年以降パパニコロウ分類を元に“日母クラス分類”として使用されてきましたが、1988年米国ベセスダにおいて行われた子宮頸部細胞診に関する会議を境に欧米を中心にこの会議でまとめられた診断基準(ベセスダシステム)が採用されるようになりました。我が国においても2008年以降“ベセスダシステム2001を採用することになりましたが、移行期の混乱を防ぐ意味で“日母クラス分類”と併記されてきました
それによると、ASC-US「意義不明な異型扁平上皮細胞」は推定病変として「軽度扁平上皮内病変疑い」とし、日母クラス分類ではⅡ-Ⅲaとし、次の対応としてはHPV検査が望ましい、または6月以内に細胞診再検査としています。
しかし、2014年以降厚生労働省は子宮頸部細胞診の報告様式をベセスダシステムに一本化し、子宮頸部細胞診運用について記載したこの本においてもベセスダシステムがわが国に公式に導入されて久しく、今日ではこの欄(日母クラス分類)は削除されるべきであろうと記載されています。

しかしそれから10年が経過したにもかかわらず、ゆがめられたままのこの診断報告形態を本気で変えなけれなならないと思います。私がアイラボ以外で関与しているA検査会社では全くその動きはありません。またB社は基本的にASC-US/Ⅲaの報告はしていないが、ユーザー(開業医)からの要望があるところだけ記載しているとの回答がありました。

ASC-US相当の所見でクラスⅢaの報告は早急にやめるべきで、どうしても組織検査を必要とする場合はその旨を丁寧に分かりやすく伝える必要があると思われます。