CIN 1で3ヶ月に一度検査しているんですけど、それって何?

趣味の会で初めてお会いした方に名刺を差し上げましたところ、アイラボさんてどんなお仕事をされていますか?ということで、『子宮頸がんやおりもの検査などをしています』といって、簡単な説明をしました。すると、「私、検診でCINの1と言われ、3ヶ月に一度婦人科を受診していますが、これって(CINの1)どういうことなのか良く分からないんですけど?」婦人科の先生はどのように説明してくれましたかと尋ねると、「何か専門的な説明はしてくれたのですが、私自身全く理解していません。」HPVというウイルスについても説明はなかったんですか?と聞くと、「全くありません」、、、と言うのです。
子宮頸がんとHPVの関係については、HPVワクチンのこともあるし、大半の国民は「知っている」と思い込んでいましたが、お話を聞いている時の表情から、ご自分の(CIN 1 )がHPV感染が原因であることは全く知らなかったようです。お医者さんも、そんなこと当然知っていると思い説明はされなかったのでしょうか?私のブログを見ている皆さんはそんなことないですよね。
立て続けにその方は「HPVの感染って、どうして起こるんですか?」と聞いてきました。
このような方に説明する時は、(その後、パートナーやご主人さんとの対応のことを考えると)一瞬緊張しますが、正直にお話しさせて頂いています。そして、感染しても全く症状がないのでいつ感染したのか全く分からない事多くの女性(日本ではなく欧米の調査では70%)は生涯一度は感染すると言われている事を伝え、だから子宮頸がん検診は世界中で行われている事、トラブルにならないでくださいね、と伝えるようにしています。
このようなことももあり、最近男性のHPV検査が増えています。その理由として、“大切な人に感染させたくないと思う(風俗利用経験があったり、複数の女性とお付き合いの経験がある)男性”、“お付き合いしてもいいけどHPV感染が心配なのでHPV検査を受けてくださいという女性”が増えているようです。

またまた話が横道にそれてしまいました。

この機会にCIN 1について説明しておきましょうね。
CIN 1とはCervical Intraepithelial Neoplasia の略で、日本語では子宮頸部上皮内腫瘍という意味の病理学的表現です。子宮頸がん検診は細胞診という方法で行われますので、(病理学的表現ではなく)
LSIL(Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion) 軽度扁平上皮内病変(軽度異形成)と表現されます。
軽度異形成とは、クラミジアや淋菌と同じようにHPVというウイルスの感染症という位置付けになります。
つまり、この方の現状は、HPV(ヒトパピロマウイルス)という子宮頸がんに関係のあるウイルスが感染しているという意味になります。(この写真は当人のものではありません)

アイラボの報告書で(CIN 1=LSIL)はどんな状態なのか?

この写真は、アイラボの郵送検査や健康保険組合から依頼された方に使用している細胞診の報告書です。一般の方にも理解して頂けるように若干表現を変えています。そしてもし異常が見られた場合、日本中どこの婦人科を受診されても先生方にご理解いただけるように診断の根拠となる細胞の写真を添付しています。
報告書の内容をもう少し個別に説明しましょう。。
この方が診断された「CIN 1」つまり軽度異形成(LSIL)は、子宮頸がん関連病変の中の入り口に相当する段階です。前にも述べたように、“HPVというウイルスの感染がある”という段階で、前がん病変ではありません。しかし、HSIL (高度扁平上皮内病変)の中の中等度異形成になると、人の細胞の遺伝子の中にHPVの遺伝子が組み込まれた状態になり、LSILの感染症から腫瘍の性格を持つ細胞へと性格が変わります。その意味では中等度異形成・高度異形成は前癌病変と言えます。
“ASC-HはHSILの存在が否定できない”時に使われる分類です。

子宮頸部のHPV感染については、その90%が免疫力によって自然に排除されると言われてります。
しかし、残りの10%が感染し続け(持続感染)中等度異形成や高度異形成に進みますので、LSILと診断された場合は定期的追跡検査が必要になります。
最近では、感染しているウイルスの型を調べることも可能になり、アイラボでは「HPVタイピング検査〈ハイリスク13種)」Kit005で調べることができます。
検診で、LSILと診断された時には婦人科を受診することになります。そしてもう一度細胞診検査を受けます。その際は「子宮頸管を含め」検査して頂くことを特に強調しています。その理由は、子宮の入り口から少し奥に入ったところに発生する“子宮頸部腺がん”を見逃さないためです。特に自己採取法で採取されたケースでは十分な細胞が採取されていない可能性があるので、この点を強調しています。(医師採取においても頸管内の細胞が採取されないこともあります)
再検査の結果“NILM”になることは少なくありません。採取の仕方がまずいことや性周期によって細胞が取れにくいことがあるためでです。確かにLSILの90%はいずれNILMになりますが、HPVが排除されたからと考えるのは誤りです。主治医の指示に従って定期的な検査が必要です。
細胞診とは別に、“HPV検査でウイルスがいなくなったかどうかを調べることも可能です。”

追跡検査は面倒がらずに受けましょう。

検診でHPVの感染を見つけたのですから、それを無駄にしないためにも追跡検査は面倒がらずに受けてくださいね。
追跡検査は通常細胞診で行います。LSILからNILMになることは、“異常な細胞がなくなった”ということですが、“HPVが排除された”わけではありません。排除されたかどうかはHPV検査の方が精度が良いと思います。
追跡検査のもう一つの意義はLSILより進行したHSILの細胞に代わっていないか?を見るためです。そのためには細胞診は欠かせない検査になります。