アイラボの男性HPV検査をチェックしておこう

男性のHPV検査は『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR』で検査しています。
この検査法は高感度でしかも全てのHPVが同じ感度で検出できるのが特徴ですので、単独感染と多重感染を厳密に区別することができます。
基本的には39種のHPVを同時に検出できますが、アイラボが提供している『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマKit113)は「16,18,31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,68の13種に加え、尖圭コンジローマを引き起こす6,11と、アイラボが独自に加えている53,66の計17種」を同時に調べます。

アイラボではどの検査においても、(お客様に採取して頂きますので)検体が適正に採取されているかをチェックしていますが、この検査も遺伝子検査を実施する前に細胞診標本を作製して検体の適否判定を行っています。

それでは早速本日最初の標本を見てみましょう。
亀頭の先端を中心にカリの部分から水で湿らせた綿棒で擦過(こすって)して細胞を採取しました。
通常はこの写真のように、ややオレンジの色調で染まる(核が見られない)重層扁平上皮の表層細胞が採取されます。顕微鏡の1視野にこれだけの数の細胞が採取されているので、検体としては『適正』と判定します。

拡大を上げてみましょう。
拡大を上げた写真ですが、細胞に明らかな核は見られません。
この様に亀頭部分の細胞は皮膚と同様に、核のない細胞がほとんどです。
勿論この段階でHPVの感染があるかどうかは分かりません。
このように、検体として十分な細胞が観察できますので、遺伝子検査に送られます。

遺伝子検査の結果は『陰性』で、17種全てが検出されません。

先ずは一安心ということですね。

次のケースを見てみましょう

このケースもオレンジ色に染まる扁平上皮細胞が採取されていますので、検体としては『適正』ですので
遺伝子検査に廻します。

拡大を上げてみましょう。
写真の中央左側の細胞には明らかな核が見られます。
それも一つの細胞だけでなく、いくつもの細胞に見られ、しかも核は大きくなっています。
前のケースとは明らかに異なった所見です。

検体を採取する時には特に隆起性病変(イボ状の病変)は確認できなかったようですが、健康な亀頭部分をこすって来てもこのような核のある細胞に遭遇することはほとんどありません。従ってこの核のある細胞を見た段階で、HPVの感染を疑うことができました。

結果は尖圭コンジローマを起こす6型が検出されました。
亀頭の皮膚表面には目では確認できなかったが、感染した細胞が露出していたことになります。
HPVの感染細胞は皮膚の表面に存在しますので、軽くこすっただけでも検出できるのです。

検体の適否判定は極めて重要な検査です。

検査に必要な検体が採取されていないと、遺伝子検査の結果は感染していても『陰性』になってしまいます。
従って、十分な細胞が採取されていない時は、無料で採取器具をお送りしています。



このキットは子宮頸がんハイリスク型13種と尖圭コンジローマの原因となる6型と11型を同時に感染しているHPVの型を調べる検査です。現在はサービスでHPVの53型と66型を追加して調べています。
特徴は、6畑、11型の単独検査に比べて割安料金になっています。
こちらのキットは子宮頸がんハイリスク型13種の型を調べる検査です。
現在サービスで53型と66型を追加して調べています。

中咽頭がん対策として咽頭HPV検査キット提供準備開始

4月29日のスマホ記事に『咽頭がんの発症リスクは「オーラルセックス」により増大していた?!』
という記事がありましたので、この機会にこの病気について少し勉強しておきましょう。

この記事を要約してみると
 1)この20年、欧米では「中咽頭がん」が増加している
 2)日本でも増加傾向にある。
 3)かつてその原因は喫煙や飲酒が主な原因とされていたが、近年オーラルセックスによるウイル
   スの感染が明らかになった

 4)中咽頭がんの7割はHPVへの感染
 5)オーラルセックスで中咽頭がんの発生率が8.5倍
 6)日本では毎年24,000人程が中咽頭がんと診断されている。
 7)以前は中年男性に多かったが、今では若い男女にも見られる
 8)イギリスで扁桃腺の摘出手術受けた1,000人を調べたところ80%がオーラルセックスの経験があった。
 9)しかし、中咽頭がんを発症する人は少数でしたが、その原因は分かっていないが 
(この記事では)HPVは自然免疫で十分対応できることがあげられている。
10)女性のHPVワクチン接種率の高い国では、男性のHPV感染も少なくなることが分かっている。
11)アメリカ、イギリス、オーストラリアでは男性へのHPV接種拡大を進めている。
12)日本でも男女双方にHPVワクチン接種を広めることで、咽頭がんの発症を減らすことが期待されている。

こんな内容の記事です。

早速、“中咽頭がん”で検索してみましょう

がん情報サービスのページが出てきました。
https://ganjoho.jp/public/cancer/mesopharynx/about.html

発生には、喫煙と飲酒のほか、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因となっているものがあることが分かっています。ヒトパピローマウイルス感染に関連した中咽頭がんは、そうでないものに比べて予後が良いことが知られています。

“中咽頭がん 発生率”で検索すると

国立がん研究センター中央研究所の小村先生の記事がありました。
『中咽頭がんの原因には何があるの?〜喫煙や飲酒、ウイルス感染が関連している〜』

【飲酒・喫煙】
中咽頭がんの原因の多くを占めるのが、飲酒と喫煙であるといわれています。
お酒、たばこにはどちらも発がん性があります。中咽頭は飲食物や空気の通り道であることから、お酒をよく飲む人、たばこをよく吸う人ほど発がんリスクが高まるとされています。また、(お酒を飲んで顔が赤くなる人)は、アルコールの分解がうまくいかず、発がん性のアセトアルデヒドが体内に蓄積しやすいために、継続的に飲酒することで発がんの可能性が高まることが分かっています。なお、中咽頭がんは50~70歳代に好発しており、女性よりも男性に多い傾向があります。これは飲酒や喫煙による長年の慢性刺激が誘因になること、飲酒や喫煙の習慣が男性に多いことが理由と考えられています。

【ウイルス感染】
中咽頭がんの発症には、ヒトパピローマウイルスの関与も指摘されています。ヒトパピローマウイルスは、皮膚や粘膜の細胞を介してヒトからヒトへ接触感染するウイルスで、咽頭への感染は主に口腔性交(オーラルセックス)によるものです。
感染しても大抵は症状が出ないまま排除されますが、感染して状態が続くとがんを抑制する遺伝子のはたらきが失われ、これによってがんが発生すると考えられています。
ヒトパピローマウイルスは100を超える種類が存在し、一部の高リスク型(特に16型と18型)が中咽頭がんの発生に関与しているとされ、性交の多様化によって近年では中咽頭がんの発症者が比較的若い世代にも増えてきているといわれています。
また、子宮頸がん、腟がん、外陰がん、肛門がん、陰茎がんなどの発生にも関わっており、これらの部位においては主に腟性交や肛門性交(アナルセックス)によって感染します。

アイラボでは咽頭のHPV検査キットを提供していません、、が?

その理由は、
自己採取では咽頭から適正な検体が安全に採取できない』からです。
しかし、中咽頭がんとHPV感染の関係が徐々に明らかにされるにしたがって、『検出率が低いのは理解しましていますがどうしてもやってほしい』という方が増えてきています。特に風俗で働く女性にとっては子宮頸がんどころではなく、中咽頭がんの方が心配という人が増えている気がします。その理由として、『子宮頸がんは定期的に検診を受けていれば(早期に発見できるので)適切に対応できるが、中咽頭がんについては良く分からないだけに怖い』ということがあげられます。

ここ1年ほどの間に“どうしても検査をして欲しい”という方には、検査精度が低い可能性があることを説明した上でキットを提供しました。18名の方にハイリスク型13種と(当社が独自に加えている)66型と53型の計15種について調べました。
検査は杏林大学保健学部大河戸先生が開発した高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCRで測定しました。その結果、2名の女性からHPVの感染が確認されました。
その1例目は、子宮頸がん検診でLSILと診断され、最近のどが痛いこともあり、のどのHPV感染も気になったので検査されました。
結果は58型、66型、53型の感染が確認されました。他の1例は、オーラルのサービスをしている女性で、腟と咽頭のHPVタイピング検査を依頼された方です。腟からは上記15種のHPVは検出されませんが、咽頭から66型が検出されています。

性器に比べて口腔や咽頭は感染しにくいのではないか?

前で紹介した中咽頭がんの原因は「飲酒と喫煙」が主な理由にあげられていましたが、私は喫煙と飲酒がHPVに感染しやすい土壌を作っているのではないかと考えています
つまり、HPVはウイルスですが、コロナやインフルエンザとは異なり、健康な粘膜や上皮細胞に接触しても感染は成立せず、粘膜や上皮に傷がつくことで感染が成立するが、口腔や咽頭からはそれに比べて検出される割合が(経験的に)少ないのが現状です。私達はその原因として、“うがい液”での検査は十分な検体が採取されない可能性を考慮して検査キットの提供を控えてきました。しかし、最近の研究で、医師による咽頭擦過検体とうがい液を比較しても結果に大きな差が見られないことが明らかになりました。
これらの結果から総合的に考えてみると、検出率が低いのではなく、HPVがオーラルセックスで口腔や咽頭に侵入したとしても、口腔や咽頭が健康であれば感染が成立しないのではないかと考えました。飲酒や喫煙で粘膜にダメージを受けている状態ですと感染しやすく、それは喫煙や飲酒だけでなく、風邪で咽頭が赤く腫れている時や歯周に炎症がある場合では感染しやすいのではないかと思います。
従って、アイラボが実施した(うがい液で陽性になった)2名は中咽頭に感染病巣があるためであり、(オーラルセックスで一時的にHPVによる汚染があったとしても)感染が成立しないケースが多いのではないかという結論に達しました。

中咽頭がん対策として咽頭HPV検査キットの販売の準備を始めます。

検査方法は、『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR』を採用します。

早速準備に取り掛かりますが、お急ぎの方はアイラボにご一報下さい。
042-652-0750です。

男性のHPV検査が教えてくれること

子宮頸がんの原因は“ハイリスク型のHPV感染”、このことが広く国民に浸透してきたようです。それと同時に、“HPVは性交によって感染する”ことも、老若男女問わず理解されてきたようです。

私は杏林大学保健学部在任中からHPV感染に関する研究に取り組ん出来ましたが、中でも大河戸光章先生はこの分野の第一人者と言えるまでに研究成果を上げてきました。その研究の中で『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7 PCR』の開発は、従来法に比べて高感度な上に39種のHPVの型を均等な感度で検出できるとことと、多重感染であっても感染しているHPVの型を厳密に区別することが可能な方法です。

アイラボの郵送検査はこの方法でHPVタイピング検査を行っていますので、今回はその一端をご紹介いたします。
(大河戸先生にはその旨の許可を頂いております)

女性はもとより、男性性器からの検出も可能!

これは大河戸先生が日本臨床細胞学会のシンポジウムで講演さてた時のスライドです。
アイラボの『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種)Kit 112』は、左の濃い赤枠で示された13種を同時に測定しています。
それらのHPVが存在(>100copuies)すれば、右の黒枠内の白帯の様に、各々のHPVが均一に検出できる方法なのです。
アイラボでは、PCR検査を実施する前に必ず検体の適否判定のための標本を作製し、写真の様に顕微鏡で細胞の有無を判定します。細胞が採取されていなかったり、極めてその数が少ない時は高価な検査を実施せず、再採取をして頂いています。
2枚の写真共に男性の亀頭部分を綿棒でこすって細胞を採取したものです。亀頭部分は重層扁平上皮で覆われていますので、通常は細胞の核は観察されませんが、写真左(上)は良く見ると1個の核が見えます。もちろん細胞はたくさん採れています(細胞と言うより垢のようですが)ので検体としては適正ですのでPCR検査に進みます。
写真右(下)は、採取されている細胞はかなり少ないですが、検体としては適正と判定しました。実際PCR検査に使用する細胞はこれよりかなり多いので検査には問題ありません。

さて、このような亀頭からの検体ですが、どんな結果になるでしょうか?

子宮頸がん検診ガイドラインではHPV単独検査は推奨ランクAになっています

少し話外れますが、子宮頸がん検診でHPV単独検査の場合は、子宮腟部や頸部から採取される細胞については検体の中の細胞成分を顕微鏡で観察することはありませんので、白血球が増えている(炎症がある)か? トリコモナスやカンジダの様な感染症があるか? などについては分かりません。あくまで、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVが存在するかどうかの検査ですので、“いつもと違っておりものが気になるので今年は検診を受けよう”と思われている人にはその点を理解されれておかれるとよいのではないかと思います。

従って、HPV単独検査で「陽性」の結果をもらった時は、婦人科を受診して細胞診検査を受けることになります。この細胞診検査(普通の子宮頸がん検診で行われている検査)では、今現在どのような細胞が見られるのか『子宮頸がん関連病変 NILM(異常な細胞はない)ASC-US(HPVの感染が疑われる細胞がある)LSIL(HPVに感染した細胞=軽度異形成がある)HSIL(中等度異形成・高度異形成・上皮内癌など前がん病変の細胞がある)など』を知ることが出来るのです。

大切なことは、HPV検査で陽性になったら必ず病院を受診して細胞診検査を受けなければならないのです
子宮頸がん検診におけるHPV単独検査はそのような検査であることを理解しておきましょう。

さて、uniplex E6/E7 PCRの結果はどうでしたでしょうか?

最初のケース写真左(上)は51型と52型が検出されました。
写真右(下)のケースは18型と59型、さらにこの人は尖圭コンジローマの遺伝子検査を含む『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマ)Kit113』を希望しており、HPV11型も検出されました。

このように、検体の適否判定で観察できる細胞はかなり少なかったケースにおいても、3種類のHPVが検出されました。

私達は “検体の適否を観察すること” 、そして “どんな細胞が出現しているかを見ること” 、さらに、“どんなHPVの型であっても均質な感度で同時に検出できる方法” だからこそこのキットを提供しています。

数年前から『』男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマ)Kit113』が特に男性から注目されています。
その理由は
①(自分はこれまで複数の方と付き合いがあったので)大切な人に危険なHPVを感染させたくない。
②最近風俗を利用したので、感染しているかどうか調べたい。
③パートナーの女性からこの検査を受けるように言われた
などがあるようです。

HPVは他の性感染症と同様にパートナーとの性交で感染します。
HPVはとても感染力の強いウイルスですが、ウイルスそのものを皮膚や粘膜に付けても感染は成立しません。
性交は “皮膚と粘膜をこする” という物理的刺激を加える行為ですので、そこには目に見えない小さな傷がつきます。HPVはその傷口から体内に侵入しますので、パートナーが多いほど感染の危険性は高くなります。
コンドームの使用でHPVの感染を完全に防ぐことはできません(男性性器根本部分が危険にさらされる)が、はかなりの効果が期待できますので、知識として持っておきましょう。
アイラボの無料相談で男性からの相談で最も多いのが、HPV感染についてです。
その中で特に多いのが、“パートナーが子宮頸がん検診で異常が見つかった”というものです。
・「女性」担当医から「旦那にHPVをうつされた」と言われたケース。
・「女性」パートナーにどう話せばいいのか悩むケース。
・「女性」逆にパートナーから自分が疑われてしまうケース
・「男性」パートナーから検査を受けるように言われた
・「男性」どの程度でHPVは陰性化するまで性交はできないのか?
・「男性」オーラルをしてもらっても大丈夫か?

等々、いろいろです。これらについては少しづつこのブログでも紹介していきます。

大切なことは、“HPV感染を避けること” “感染を少しでも防ぐこと” “感染有無を自身が知り、検診を受けること”
男女ともにワクチンを接種するなど、対策はいろいろあります。
この点についても皆で考えていきましょう。

男性のHPVタイピング検査を提供し始めて私達も多くのことを学びました。
『子宮頸がんは女性だけの問題ではない事』 男性自身がHPVに感染していることを現実に知ることで、本気で子宮頸がんを考えて頂ける環境が生まれてきた気がします。

大河戸先生ありがとうございます。

HPVと膣ガルドネラ菌は仲良し?

私のブログの半分以上が細菌性腟症とHPV感染に関係したものですが、HPV感染が疑われるASC-USやLSILケースで細菌性腟症が合併していることがとても多いのです。そればかりでなく、円錐切除術(高度異形成や上皮内癌と診断された人の病巣部分を切除する手術)を行った人にも細菌性腟症のケースが多いのです。
ある婦人科の先生に円錐切除後の方に細菌性腟症が多いのはなぜですかと質問すると、“治療してもご主人(パートナー)からうつってしまうから”、、、、という回答でした。

私は、乳酸菌に代わって腟ガルドネラ菌が腟内を支配するようになると、乳酸菌が支配している時に比べ、HPVの増殖や感染が起こりやすくなるのではないかと考えたくなるぐらいです。

今回、またそれらしいケースに遭遇しました。
早速見てみましょう。

そうそうこんなケースですよ!

白血球の増加は比較的弱い標本背景ですが、細菌性腟症に特有なClue cell (クルーセル)が見られます。
また写真の中央には赤く染まるASC-US相当の異型細胞が見られます。
腟ガルドネラ菌とHPVが同居できるのだから、両者はとても相性がいいのかな?、、、なんて思ってしまいます。

また別の見方をすれば、腟内環境が乱れず、腟内が腟ガルドネラ菌に支配されない環境であれば、HPVの感染も起こりにくいのではないかと思ってしまうのです。つまり、腟内がたくさんの乳酸菌の仲間によって守られている環境であればHPVの感染も起こりにくいという論法にはならないだろうか?
いつもそんなことを考えながら仕事をしています。
もしそうだとしたら、腟内環境を常にチェックできれば子宮頸がん対策に貢献できるのでは?、、、何って思うぐらいです。いずれにしても腟内フローラである乳酸菌の仲間が腟内を支配していることの大切さがわかってきますね。

乳酸菌の仲間を守る方法は、規則正しい生活習慣の維持が最も重要かと思います。
そんなわけで、自身の腟内フローラチェックは、多くの感染症から自身を守ために、とても大切なのではないかと思います。

コイロサイトが一杯!

HPV感染細胞が一杯!
HPV感染の最も特徴的所見はこのコイロサイトーシスです。
細胞の核周囲が白く抜ける現象です。
HPVのウイルスが核の中で増えているため、核と細胞質との交流が不全になり(変性におちいりこのようる)、このような独特の形態を示すと考えられています。
HPV感染例でも、こんなにたくさんのコイロサイトが集塊を作って見られるのは珍しいです。

早速細胞を見てみましょう。

典型的なコイロサイト

HPVに感染し、たくさんの細胞の核の中でウイルスが増殖しています。
この症例は、このような細胞が顕微鏡の視野を動かく度に出てきます。
かなり激しくウイルスが増えているのでしょうね。
この時期はHPVの感染症という段階で、ヒトの遺伝子にHPVの遺伝子は組み込まれていません。なので、細胞診断的にはいくらたくさんこのような細胞があっても軽度異形成(LSIL)と診断されます。
女性の子宮頸部に関してはHPV感染のおおむね90%は自然に排除されるといわれていますが、残りの10%ほどは持続感染してその一部が子宮頸がんへと進みます。
従って、検診ではHPVに感染しているかどうかを調べ、感染している場合現在どのような状態なのかを調べることになります。
細胞診による子宮頸がん検診は、HPVの感染があるかどうかよりも、今どんな異型細胞が出ているかを調べる検査です。ほぼ正常な細胞だけならNILM(ニルム)、由来がはっきりしない(HPVの感染も否定できない)細胞が出ている時はASC-US(アスカス)、明らかなHPV感染が見られ、軽度の扁平上皮内病変が疑われるときはLSIL(ローシル)、それ以上(前がん病変)をHSIL(ハイシル)といった具合に分類します。
私が細胞診を始めた50年も前、HPV感染とかハイリスク型HPVなんて言葉は全くありませんでした。それもそのはず、子宮頸がんの原因そのものが分かってなかったからね。
自分自身がこの流れの真っただ中で細胞診をやっていたのですが、その頃から子宮頸がんとHPVの関係が分かっていたかのような錯覚に陥ります。
今では細胞診はさらに進み、最も危険なHPV16型は、コイロサイトーシスの変化は示さないことも明らかになってきました。
また一歩、子宮頸がんの謎も明らかになりました。
16型の感染があっても、コイロサイトーシスは伴わないんです。
杏林大学保健学部、大河戸光明先生の発見です。
私は75歳、細胞診を始めて53年になります。子宮頸がん撲滅を目指し大いに貢献してきた細胞診断学ですが、科学の発展と共に子宮頸がん検診の最前線は徐々にHPV検査にバトンタッチされていくものと思います。しかし、HPV感染から癌に至るまでの過程の検査法としてはこれからも重要な検査法であり続けるでしょう。でも、私はパパニコロウさんが世に送り出した“細胞診断学”はもっと広く女性の健康やQOL(生活の質)の向上に広く貢献すると考えています。なぜなら、婦人科細胞診は“最も手軽で、最も安く、最も信頼性の高い感染症の総合的な検査法” だからです。これからも視野を広め、女性のセルフメディケーションの身近な検査法として発展させていくのが私達の使命と考えています。

十代でも油断禁物

子宮頸がんは、元を正せばHPVの感染です。
つまり、HPVは性交で感染することになります。
私が現役で学会活動をしていた頃、子宮頸がんの原因はHPVの感染なので、“子宮頸がんも元を正せば性感染症が原因”、、、と言ったような表現をすると、座長の先生から「子宮頸がんと性感染症を結びつけるのはよくありません」と言ったコメントとを頂いたことがあります。つまり、子宮頸がんの原因であるHPVはほとんどの女性が生涯一度は感染する可能性があるので、淋病やクラミジアなどの性感染症と一緒にしない方が良いという考えだったのかも知れません。また、子宮頸がんの原因が“性病”というイメージを植え付けると、“私は性病とは関係がない”、、、という理由で、子宮頸がん検診を受けない女性が増えるのではないかとの懸念もあったようです。

しかし、今となれば、国民に正確な知識を提供することの方が検診の受診率向上につながるのではないかと考え、今回のようなケースもあえて紹介させて頂きます。

当然のことですが、十代であっても性交経験がある人はHPVに感染してもおかしくないのです。
年齢に関係なく性交経験がある人は、その時点から検診を受けることが大切なんです。

早速写真を見てみましょうね。

冗談じゃないよ! これは大変!

全て同じ倍率の写真です。
上の左(一番上)の細胞は、細胞がオレンジ色の染まっています。HPVに感染した細胞の特徴の一つで、核も少し濃く染まっていますのでLSILに相当する所見かな?
上の右(上から2番目)の写真は、周りの細胞から比べても大きいし、核も驚くほど大きい。
やだな?、、、そんな感じの細胞です。
下の左(上から3番目)の写真も、大型でびっくりする細胞です。
この前の細胞も含め、普通じゃない。HSIL程度の異常を考えなくてはいけない細胞です。
そう言えば、出現している異常な細胞にコイロサイトーシスは見られません。HPVの16型の感染も考えておかなくてはいけないのかな?
下の右(上から4番目)は、小型の細胞です。細胞は小さいですが、前の大きな細胞と由来は同じような気がします。じっくり考えなくてはならないケースです。
とても難しい診断になりますが、私達はHSILで中等度異形成の存在を推定しました。
そして組織学的な精密検査とHPVのジェノタイピング検査(感染しているHPVの型を調べる検査)の必要性を伝えることにしました。
組織学的検査という新しい言葉が出てきましたので簡単に説明しておきます。
今回のように、子宮頸部の細胞診検査では、子宮の入り口付近(子宮膣部と頸部)の粘膜をこすって細胞をとってきます。そして、粘膜の表面がどんな細胞になっているかを見て、その病変を推定診断するのです。
組織検査は“おかしいと思われるいくつかの部分”から、組織(小さな肉片)を切り取ってきて、より正確にその病変を調べます。その結果によって、どのような治療をすべきかといった具合に治療方針が決められるのです。
検査精度を高めていくために、私達にもその結果は伝えていただけます。
子宮頸がんは性交経験がある人ならだれでも可能性はゼロでありません。
しかし、子宮頸がんから自分を守るための手立てはいくつもあります。
その一つは“HPVワクチンの接種”です。副反応の問題が大きく報じられた日本では大きな社会問題になり、せっかく始まった定期接種が中断してしまいました。日本だけが世界から取り残された感があります。でも、コロナの影響で、私達はかなり“ワクチン”という言葉に抵抗感がなくなってきたと思います。
HPVに感染してからではなく、より高い効果を得るためには感染する前の接種が大切です。
二番目は検診です。これも受けるか受けないかは自身で決めることですが、相変わらず検診受診率は低迷しています。しかし、最近HPV検査だけでも95%ほどの有効性が伝えられています。この方法なら自己採取でも医師採取とほぼ同等の検査精度が得られますので、気軽にトライできると思います。
この検査で大切なことは「陽性」になったら必ず細胞診検査を受けることです。
なぜなら、ハイリスク型HPVに感染していることが分かったわけですから、今どんな状況かをちゃんと調べておかなくては意味がないということです。NILMかも知れません、LSILかも知れません、はたまたHSILの状態かも知れないのです。
セルフメディケーション、自分の健康は自分で責任をもって守りましょう。

最も危険なHPV 16型単独感染例

子宮頸がんの発生で最も危険とされているHPVは16型で、それは私達のこれまでの経験からも疑う余地はありません。

最近、この16型の細胞像(細胞の顔つき)について新しい発見がありました。
それは、私と長年研究を共にしてきた杏林大学保健学部大河戸光章先生の研究成果です。
HPVに感染した細胞の代表的な特徴は、このブログでもたくさん紹介していますがコイロサイトーシス(核の周りが白く抜ける特徴的所見)を有する細胞の出現です。しかし、16型に感染した細胞にはこの所見(コイロサイトーシス)が現れないというのです。
私達細胞診に携わる者にとってはとても重要な発見なんです。

それでは、16型単独感染例の細胞を見ていきましょう。

エッ? 細菌性腟症なの?

〇の写真以外は全て同じ倍率です。
先ずは上の左(一番上)の写真です。
「アッ!!、、、こんな写真よく見る」私のブログをよく見て頂ける人には、“細菌性腟症ではないの?” って分かる方が多いと思いますが、このケースはそれ以外に大きな問題があるのです。
上の右(上から2番目)の拡大を上げた写真を見ると、中央に核が濃く染まった数個の細胞集塊(細胞の集まり)が見えます。
これはヤバイ! 小型の細胞で核が濃く染まっていることがヤバイのです。
直感的に“上皮内癌があるかも?” と考えます。

他の細胞達も見てみましょう。
濃く染まる細胞の数は若干異なりますが、同じような顔つきの細胞達です。
この症例は加藤式による自己採取された検体ですが、この3枚の写真から私達はHSILと診断しました。
疑う病変は高度異形成から上皮内癌で、病理学的にはCIN 3に相当する病変が推定されます。

そうそう。大河戸先生が言われるように、確かにコイロサイトーシスを伴うHPV感染細胞は見られなかった。
このような細胞が発見されたことについて、当人は大変ショックだと思います。
しかしよく考えてみましょう。
高度異形成や上皮内癌(CIN 3)なら、円錐切除術という方法でその部分だけを外科的に切除することが可能なのです。
勿論、その後妊娠も出産も可能なんです。
今回、あなたご自身で郵送検査ではありますが子宮頸がん検査「子宮頸がん細胞診検査+HPVタイピング(ハイリスク)検査」を受けられたことは大正解であり、自身のために大金星を獲得したことになります。
今後、婦人科を受診し、子宮頸管内を含め精密検査を受けていただく事になりますが、先生の指示に従い完治されることを祈っています。
セルフメディケーション、自分の健康は自分で責任をもって守る。
私達がこの仕事をしていて最高に幸せを感じるケースでしたが、いつも大変緊張して検査に臨んでします。
自己採取と限りませんが、特にASC-USやLSIL(CIN 1)の様に、HPVの感染症の段階では、異常な細胞が出たり出なかったりを繰り返すのです。
「治ったのかな?、、、って思ってもまたLSILやASC-USの細胞が出てきます。そして時にはそれより細胞の顔つきが悪い今回のようなHSILの細胞が出るようになります。
HSIL(CIN 3)になると、多くの場合毎月検査しても異型のある細胞を見つける確率が上がります。
自分の健康は自分で守る。そんな習慣をつけましょう。

HPV45 56 58 59 66 型感染例に見られた細胞達

HPV感染は、決して一種類とは限りません。
すでにいろいろなところで紹介しているように、HPVはとても感染力が強いウイルスですが、HPVのウイルスが含まれた分泌物を皮膚や粘膜に軽く塗っても感染は成立しません。つまり、皮膚や粘膜にはそれぞれウイルスの侵入を防ぐための機能が備わっているのです。
それなのに、今回のケースのように、こんなにもたくさんのHPVが同時に検出されることがあるのでしょうか?
それは同時か複数回に渡って感染したかは別として決して少ないことではありません。
ウイルスは小さな傷口から体内に侵入します。それはHPVと限らずHIVも同じです。
なぜ性行為で感染するリスクが高いかと言えば、性器の場合は性交という物理的刺激(擦ること)によって双方の性器に目に見えない小さな傷ができるからです。傷そのものは見えないかもしれませんが、性交後にヒリヒリ感を経験した人は少なくないと思います。性器に比べ口腔や咽頭にHPVが付着しても粘膜が健康な状態であれば多くの場合感染は成立しないのです。しかし、風邪など、何らかの影響で粘膜に炎症が起こっている場合は感染の危険性が高くなりますので、オーラルセックスは安全とは言えないのです。

さて、前置きはこれ位にして標本を見てみましょう。

色々な細胞が出てきました

全て同じ倍率の写真です。
上の左(一番上)の細胞は、周りの細胞に比べ、ひときわ核が大きくなっています。この細胞を私たちが見た時には“ASC-US”または“LSIL”を考えます。“ASC-US”とする場合は「意義不明な異型細胞=HPV感染?」ということになりますが、“LSIL”とする場合は「HPVの感染がある」ということになります。“LSIL”と決めるには少し核の染まりが弱い(クロマチン量が乏しい)ようです。
上の右(上から2番目)の写真は周りの細胞に比べ数倍以上に大きくなっています。しかも、核は複数個あるように見えます。これら2つの所見はHPV感染に特徴的な所見ですので、細胞学的には“LSIL”と診断したい所見です。
中の左(上から3番目)の写真は、細胞がオレンジ色に染まっています。専門的には角化傾向にあると言います。そしてその細胞には3つの核が存在します。細胞が角化することは、HPVが自らの増殖に適した環境に変えようとするもので、これもHPV感染細胞の特徴の一つです。核が多くなる“多核化”もウイルスによるDNA合成阻害に伴うもので、HPV感染の特徴の一つです。
中の右(上から4番目)は、細胞の角化が強く、核もクロマチンの増加が見られ(やや濃く染まり)、カンジダやトリコモナスなどの感染に伴う変化とは異なります。軽度異型扁平上皮内病変“LSIL”相当の所見かと思われます。
最下段左(上から5番目)角化した細胞の隣に小型でN/Cが大きくなった細胞が見られます。由来ははっきりしませんが、これだけではなんとも決められません。
しかし、最下段右(上から6番目)の細胞は、小型でN/Cが大きくなっています。このような細胞がもっと多く見られれば積極的にHSIL“高度異型扁平上皮内病変”の中等度異形成を疑いますが、いかんせん少数ですのでASC-H“高度異型扁平上皮内病変の存在が否定できない”と診断しました。
5種類のHPVに感染していますが全体的に細胞の顔つきはおとなしく、「高度異型扁平上皮内病変の存在が否定できない」という診断に落ち着きました。
HPV遺伝子検査で感染は明らかになっても、現在“がん関連病変としての進行度”は分かりません。極端なことを言えば、NILM(異常な細胞は見られない)、ASC-US(由来がはっきりしない細胞が見られる、HPV感染があるかも?)、LSIL(HPV感染を伴う軽度異形成)、HSIL(前がん状態)、、、なのかが分からないということになります。
なので、HPV検査が「陽性」の場合は、細胞診で現在の状況を見極めることが大切になるのです。
自分の健康は自分で守る!セルフメディケーションを忘れないでください。
セルフメディケーション、自分の健康は自分で責任をもって守る。
医師採取による子宮頸がん検診が苦手な方でも「自己採取法によるHPV検査」なら気軽に受けられるでしょう。
もしその検査で「陽性」になったら、当然細胞診検査を受けて「今、自分はどんな状況か」を調べることが重要になります。子宮頸がん検診で重要なのは「子宮頸がんの原因になるHPVの感染があるかどうかを調べる」ことですが、「今、どんな細胞が出ているのか(子宮頸がん関連病変の進行度合い)を知ることこそが最も重要になるのです。
今回のケースは自己採取法です。
自己採取法の最大の弱点は子宮の入り口から少し奥に入った子宮頸部やさらに奥の子宮体部の癌を早期に発見することが出来ないことです。
むしろ自己採取における子宮頸がん細胞診検査はこのようながんの早期診断を目的としていませんので、HPV感染が明らかになった時点(HPV検査で陽性、または細胞診でLSIL以上の細胞が見られた時)で医師採取による子宮頸管を含めた精密検査を自分の意志で受けることの重要性を知ってほしいと思います。
更にもう一つ!
その精密検査で「異常なし」という結果が出ても安心してはいけません。残念なことですが検査は100%ではないのです。細胞を採取するのも、標本を作製するのも、顕微鏡で観察するのも、すべて人なのです。
一度の検査で安心することなく子宮頸がん検査は定期的に自分の意志で行うことが大切なのです。

HPV56型感染例の細胞

半年前にASC-US(細胞診検査で意義不明な異型細胞)と診断され、その後の検査でハイリスク型HPVの56型の感染が明らかになった方のフォローアップ検査が行われました。
細胞診検査でASC-USと診断された時は、HPV検査(ハイリスク型HPVの感染かあるかどうかを調べる検査)を受けることになっています。この方のようにチャント受けていればHPVの感染があることが分かりますが、HPV検査を受けない人が少なくありません。
(この方はHPV検査で陽性になったことで、感染している型(ジェノタイプ)を調べるタイピング検査をして56型の感染が明らかになっています。)

さて、半年後どうなったのでしょうか?

色々な細胞が出てきました

左(上)の細胞は、核の周りが白く抜けていますが、これはHPV感染の特徴的所見の一つでコイロサイトーシス(koilocytosis)と言います。HPVに感染したすべての細胞に見られるわけではありませんが、多くのHPVで遭遇しますので、私達にとってはとても重要な所見です。
右(下)の写真には核が大きくなった2つの細胞が見られます。右側の細胞はオレンジの色素に染まっていますが、これもHPVに感染した細胞の特徴です。
HPVは角化した細胞で増殖が盛んになりますので、自らが増殖しやすい環境にするためです。
このような細胞が見られた時、私達は細胞診の段階でHPV感染が明らかになりますので“LSIL=軽度異形成”と診断することが出来ます。。
軽度異形成(LSIL)は病理学的には“CIN1”に分類されます。
LSIL(CIN 1)は、その約90%は自然に排除(ウイルスがいなくなる)されますが、残りの10%ほどが感染し続け(持続感染)、中等度異形成(CIN 2)や高度異形成・上皮内癌(CIN 3)のような前がん病変へと進んでいきます。詳しいことは別の機会にしますが、大切なことは、検診で折角ASC-USやLSILの細胞が見つけられたのですから、その先がどうなるかしっかり見守っていかなければなりません。
セルフメディケーション、自分の健康は自分で責任をもって守る。
フォローアップ(追跡)検査は長い期間定期的に受診しなければなりませんので負担は大きいのですが、あなた以外にあなたの健康は守れないのです。
さらに大切なことがあります。子宮の入り口から少し奥に入ったところ(子宮頸部)に発生する子宮頸部腺がんの多くもHPVの感染が引き金になっています。
だから、LSILやHSILと診断された時は必ず精密検査が必要なんです。

細胞が巨大化する

生理がある女性(性成熟期の女性)の腟の表面は70ミクロン位の扁平上皮細胞でおおわれていますが、時々その倍以上にもなる大型の細胞に遭遇することがあります。
もうかなり昔になりますが、中央アジアの国にJICAから派遣された細胞検査士さんから、
「椎名さん、扁平上皮細胞が日本人に比べてみんな大きいんだけど、なぜなんでしょうか?」という国際電話が入りました。
「そちらの国では貧血の方は多いですか?」と質問すると、多いと思いますという返事が返ってきました。
「もしかすると、葉酸が欠乏しているのではないでしょうか?」とお答えしたことがありました。

今日はこんな細胞が飛び込んできました

あまり多くの細胞が見えませんが、左の弱拡大の写真でも中央のオレンジ色に染まる細胞がひときわ大きいのが分かります。拡大を上げると(右)、グリーンに染まる細胞が一般的な扁平上皮細胞でおよそ70ミクロン程です。オレンジ色の細胞はその3倍にもなろうかというほど巨細胞です。さらにその中央には核が2個見られます。
実はこの症例は軽度上皮内病変(LSIL)でフォローアップしているケースで、ハイリスク型HPVの感染があります。HPV感染の特徴はこれから紹介していきますが、1)コイロサイトーシス、2)細胞質が複数の色素で染まる(多染性)3)細胞質の角化傾向(オレンジ色に染まる傾向)、4)多核形成、それに5)細胞の巨大化などがあります。この細胞は3,4,5の所見を備えていますので、HPV感染がかなり疑えますね。
扁平上皮細胞が大きくなる原因を整理しておきましょう。
1) HPV感染、2)前に述べました葉酸欠乏症、3)放射線治療時がその代表です。
HPVは核の中で増殖(増えます)しますので、当然細胞が分裂するために必要なDNA合成を阻害します。細胞は分裂したいのに核の中でDNA合成が追い付かないため、細胞は待ちきれずどんどん大型化してしまうようです。葉酸もDNA合成に関係しますので欠乏状態では同じ現象が起こります。放射線もDNA合成を阻害します。
普通より細胞が大きくなるにもそれなりの訳があるんですね。