10年前に風俗を利用した。5年後彼女がLSILに!そして今俺にHPVが!

子宮頸がんの原因はHPV感染! これ常識。
女性性器のHPVはその90%が自然に排除(消失)される! これも常識?
男性性器のHPVは女性と同じように自然(免疫力で)に排除されるのか? これ全く分からない。

女性が感染した場合90%が免疫力で本当に排除されると仮定すれば、男性も同じではないのか?
そう思いたくなるのは私ばかりでなく、多くの男性、そしてそのパートナーが願う事です。
しかし、私が知る限り、“男性の方が排除され難い”といった報告があったように思います。その事を私自身は確認したことはありませんが、男性のHPV検査キットを提供している側としては、その疑問に答えなければいけないと、常々感じています。

そんな折、5年前からお付き合いをしている女性(パートナー)がこの度の検診で軽度異形成と診断されました。10年前に風俗でゴムなしの行為をした私が原因ではないかと心配になり、アイラボの「男のHPVタイピング検査」を依頼したところ、3種類のハイリスク型HPVの感染が明らかになりました。大変なショックと同時にパートナーに申し訳ない思いで悩んでいます。私が感染しているHPVも数年後にはなくなるのでしょうか? そんなご相談でした。
(この事実を多くの皆さんに知ってほしいということで、この記事に関しては掲載のご承諾を頂いています。)

軽度異形成は多分こんな細胞です

写真はアイラボで軽度異形成(LSIL)と診断した別のケースです。

【余談】細胞診はあくまで推定診断で確定診断ではありません。

一般に細胞診と言われる検査は、細胞診断学と言いますが、細胞検査士がスクリーニング(標本を顕微鏡でくまなく観察して問題がある細胞を拾い上げ)し、その後細胞診専門医が「軽度異形成が推定されます」といった具合に「推定診断」します。担当医はさらに必要があれば、組織(病巣の一部組織を切り取って)検査を実施しますが、それは「病理診断」と言って確定診断になります。
このことはとても重要なことで、細胞診専門医が関与する検査ですが、あくまで「推定診断」です。
今回ご相談された方のパートナーさんがこの組織検査をされていれば「軽度上皮内病変CIN 1」と診断されます。

このCIN 1 は、病理学的には“軽度異形成でHPV感染感染”ということになります。
つまり、パートナーさんは“HPVに感染している状態”です。
淋菌やクラミジアに感染したのと同じように「感染症の段階」です。
淋菌やクラミジアは治療しないと完治できませんが、なぜHPVは(免疫力で)90%が自然にいなくなるのでしょうか?
不思議ですね。

相談された方は10年前に(ゴムなしで)風俗を利用されたとの事、その時からずっと3種類のハイリスク型HPVに感染していたのでしょうか?もちろん断定することは困難ですが、5年前からお付き合いをしているパートナーさんに感染させたということになると、かなり長い期間排除されずに持続感染していた可能性もあるし、感染させた後はピンポン感染を繰り返していた可能性も考えられます。とても難しい問題ですね。

HPVはサイレントな感染症なので分かった時のショックも大きい!

ご相談頂いた男性のショックはとても大きいと思います。
自分の過去の行為でこんなことになろうとは思ってもいなかったことと思います。
そんなこともあって、このブログでの照会に快く同意して頂きました。
風俗を利用される方は、“性病”に関しては少なからず不安を感じていると思います。
淋菌やクラミジアの様に感染後1週間以内に症状が出る病気や、いま大きな社会問題になっている梅毒においても典型的な例においては症状が出ます。
しかし、ハイリスクHPV感染は全く症状が出ないのです。
今回の様に、かなり後になって「俺がうつしてしまった」ということになってしまうのです。

この男性は(風俗利用で)どんな危険にさらされたのか?

以前私達は新しい女性用採取器具の精度を確認するため、30名の風俗営業従事者と8名の婦人科クリニック従業員のボラティアの協力で自己採取による細胞診とHPVタイピング検査を実施したことがあります。
その時の結果が全てを代表するわけではありませんが、一つの例として紹介します。

30名の風俗従事者では23名(76.7%)がハイリスク型HPVが陽性で、細胞診検査ではNILMが18例60%、ASC-USが5名(16.7%)、LSILも5名(16.7%)、ASC-H及びHSILは共に1例で、LSIL以上は7例23.3%でした。アイラボの郵送検査で使用している自己採取法での子宮頸がん検診ではLSIL以上がおおむね2.0%程ですので、非従事者(一般人)に比べ風俗従事者ではHPV感染者は少なく見積もっても10倍以上となります。

サイレントな感染症はこうして一般の人達にも広く浸透しているのが現実なのです。

利用者はこの現実をしっかり理解すべきです。

自分の大切な人に(サイレントに)感染させ、そして(サイレントに)子宮頸がんの土台を提供しているのです。
子宮頸がんの原因を2人の間に持ち込まないためにはこの現実をしっかり理解して下さい。

今回は男性からのご相談でしたが、原因はそれだけではありません。
極端なことを言えば、性交経験がある人は男女問わずHPVの感染は避けられないのです。

だから、男女問わず“ワクチン接種”をまじめに考え子宮頸がん検診は必ず受ける必要があるのです。

HPVに感染している男女の場合、完全に防げるわけではありませんが、せめてコンドームの正しい装着は守りましょう。
一方の感染が明らかになったときは二人で一緒に感染しているHPVの型を調べておきましょう。

そして、HPVの自然消失の確認をされたい方は、お気軽にアイラボにご相談下さい

大切な人にHPVを感染させない!

男性のHPV検査が急速に伸びています。
その背景には、子宮頸がんとHPVの関係が広く一般に浸透してきたことが考えられます。
私達がHPVに関する研究を開始したのは40年も前のことですが、当時学会で子宮頸がんの原因となるHPVは性交で感染するので、HPV感染は性感染症(性病)であると発言すると、座長の先生からは「子宮頸がんの原因が性感染症であるとの発言は控えるよう」注意された記憶があります。多分その理由は、HPVは多くの女性が感染している感染症で、淋病や梅毒などの性病とは異なるとの認識があったようです。また当時から子宮頸がん検診の受診率が低かったこともあり、子宮頸がんと性病を切り離したかった意図もうかがえました。
しかし私は、HPVは性交で感染するのは事実なので、事実を国民に知らせることの方が子宮頸がんの撲滅につながると考えていました。

アイラボを立ち上げ、郵送検査サービスやHPでの病気の紹介を通して真実を知らせることで、検診の大切さ伝えたいと考えました。そして20年が経過し、今は大切な人にHPVを感染させたくないという男性が増えてきました。今になって男がやさしくなったのではありません。子宮頸がんの原因(真実)が広く社会に伝えられるようになったからです。
「検診が大切!」「ワクチンが必要だ!」そんな議論とは別に「感染を予防するためには?」という議論が巻き起こることを楽しみにしています。

HPVなんかに感染したくない!

写真左(上)は弱拡大ですが、中央付近に核の大きな細胞が見られます。
写真右(下)はその拡大像です。この細胞を見て私達はHSIL(高度異型扁平上皮)の中の中等度異形成かな?、、、と思いますが、結果としてHSILと「診断」はせず、ASC-H(中等度異形成)の「存在も否定できない」と推定診断しました。
これまで沢山のHPV感染細胞を紹介してきましたが、チョットHPV感染の特徴は出ていません。
HPVに感染した細胞の最も特徴的な所見は、核の周りが白く抜けるコイロサイトーシスですが、最も危険なHPV16型にはこの所見が現れません。そんなことも考えれば、16型の感染かな?、、、と思わせます。

少し本題からそれてしまいましたが、男性の場合この写真のような細胞診による感染の有無を調べるのは著しく感度が落ちてしまうので適切な検査法ではありません。感染細胞が少ないため、PCR法など検出感度の高い方法でも検出できないことがあります。そこでアイラボでは、杏林大学保健学部大河戸先生の協力を得て、高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7PCR法を採用し、郵送検査におけるHPVタイピング検査に用いています。
今、アイラボのキットの中で、皆さんに最も多くご利用いただいているのはHPVタイピング検査(ハイリスク)+コンジローマですが、男性からのご依頼が圧倒的に多くなっています。このようなキットは他のサイトでも購入できると思いますが、検出精度がその理由かと思います。
なぜ男性の方からの注文が多いのでしょうか? 
それにはいくつかの理由が考えられますが、その一つはHPVが性行為でうつることが一般に周知されてきたことがあげられます。
アイラボの無料相談でも、「風俗を利用したので」や「以前利用したことがあるので」が最も多く、次いで「不特定の人と行為があったから」があげられます。また、最近付き合い始めた彼女から、「アイラボのキットで調べるように言われた」が続きます。
一方、女性の場合は、単に「子宮頸がんが心配だから」が圧倒的に多く、次いで「知らない人との行為があった」や「以前風俗を利用したことがある人との行為があったから」が多いようです。

子宮頸がんの予防には子宮頸がん検診(細胞診)を定期的に受けることやHPVワクチンの接種が一般的ですが、HPVワクチンの接種が進まない日本においては、HPVの感染があるかどうかも郵送検査で容易に調べることができるようになりました。そして今回紹介しました様に、あらかじめHPVの感染をチェックしてからのお付き合い開始というように、多くの選択肢が準備されていますので、自分に合った子宮頸がん予防策を選べるようになりました。
癌の中には発見された時は既に手遅れのものもありますが、子宮頸がんは手遅れになる前にいくつもの選択肢があります。子宮頸がんこそ、セルフメディケーション「自身の責任で自分の体を守ることができる病」であることを認識してください。アイラボは細胞診と遺伝子検査が得意なラボですので、お気軽にご利用ください。