ACS(アメリカがん協会)子宮頸がんスクリーニングガイドライン2025
自己採取HPV検査25‐65歳「許容」

ACSは、子宮頸がんスクリーニングガイドライン(2025)を更新しました。
更新の背景には、検診受診率の低迷と地域・社会経済・人種/民族間で受診率の格差が持続し、未受診者層へのアプローチが課題になっていました。
アクセス障壁を下げ、未受診者の参加を促し前がん病変の早期発見を目的にしています。
この自己採取に関する研究42件中、受診率の改善が見られた研究が40であった事が導入の背景にあります。
このガイドラインを何回かに分けて学んでみたいと思います。
今回は「自己採取法」について学んでみたいと思います。

HPV自己採取法とは

自己採取腟検体(self-collection)は受診者が自身で腟内サンプルを採取し、PCR法(FDA承認)でハイリスク型HPVを検出する方法です。
主にクリニックなど臨床環境での実施が基本ですが、限定的に遠隔医療経由の在宅採取も認められています。
方法は医療者の指導の下で適切な器具を用いて採取します。ラボで承認されている方法(例えばコバスなど)で測定します。
結果管理とフォローアップは医療機関が担います。
自己採取は腟検体なので細胞診はできませんので、陽性時は臨床医採取での(細胞診による)トリアージが必須になります。
採取器具の一例として写真最上のエヴァリンブラシが挙げられています。
アイラボが使用しているセルソフト(中)や加藤式(下)採取器具は子宮腟部(子宮の入り口で腟内に接している部位=子宮頸がんや高度扁平上皮内病変の好発部位)をも擦過し、細胞診を目的で作製されているのとは異なり、エヴァリンブラシは腟から検体を絡め採ってくる(腟検体)器具ですので長さが著しく異なります。
私達はエヴァリンブラシとセルソフトによるHPV検査の比較を行い論文(APJCP2025.5.1673)としてまとめています。表はその一部ですが、Case4以外は両者に大きな差はみられません。最も異なる点は赤枠で示したように、セルソフトは細胞診も同時に調べることが出来る点です。医師採取検体に比べると頸管内に発生する腺がんを早期に発見することに問題がある事や正常細胞に比べ異型細胞の割合が少ない(子宮腟部だけでなく腟内の正常細胞も大量に擦過するため)点を考慮すれば、高度扁平上皮内病変(中等度異形成、高度異形成、上皮内癌)のスクリーニング検査としての意義は大きと思われます。
ハイリスク型HPVに感染したからと言ってすぐに軽度異形成や高度扁平上皮内病変になるわけではありません。これは、風俗で働く人を長期間追跡した結果で、当社の藪崎が2011年に日本性感染症学会で発表した資料です。いずれも2008年4月(表の左804)が最初の検査ですが、左と中のケースはハイリスク型HPVに感染していませんが、右のケースは最初から軽度異形成の細胞が検出されました。私達はASC-US(HPVの感染が否定できない)やLSIL(軽度異形成=細胞診でHPV感染が推定できる)が出ている時期をHPV感染の第一段階としています。この時期は、表でも分かるように、LSILやASC-USの細胞が出たりでなかったりを繰り返します。NILMが続いても決して油断してはいけません。ASC-H(HSILの存在も否定できない細胞)に相当する細胞が見られた以降、HSILの細胞が連続して検出されるまでの時期を第二段階としています。この時期に入ってもNILMが出ることもあり、油断は厳禁です。そして、HSILの細胞が毎回みられるようになった時期を第三段階としていますが、自己採取でも、中等度異形成以上になると安定して異型細胞を捕捉できるようになります。
このケースは23歳でLSILが発見され約3年間追跡したケースです2010年4月以降第三段階に入り26歳で円錐切除術を受けました。最終的な組織検査の結果は高度異形成と診断されました。HPVの感染やLSILの細胞が見られて以降厳重な追跡検査が必要なことが分かります。
こちらのケースは、最初から第三段階(HSIL相当の細胞が検出されの細胞が検出された)でした。

HPV検査は医師採取/自己採取で変わらない

ACSは自己採取器具としてエヴァリンブラシを採用していますが、その背景には医師採取と変わらないという報告があるためです。私達はそのエヴァリンブラシで採取した後セルソフトで採取した研究において両者に差がなかったことから、HPV検査にセルソフトを採用しています。そしてその検査でHPVの感染が確認されたケースは細胞診を実施し、その結果をもって医療機関を受診するシステムを採用しています。その理由は、HPV陽性者の中には、過度な心配から精密検査(医療機関での細胞診トリアージ)を受けない人がいるためです。“現状では過度な心配の必要はないが、自己採取細胞診では子宮の奥に発生したがん(例えば腺がんや特殊なタイプのがん)を早期に発見できないことがあるので、必ず医師採取で子宮の奥を含めて精密検査を受けることが大切である。” ことを伝えることにあります。
陽性者を必ず医療機関に送り込むための策と考えています。