嫌な臭いが心配で郵送検査を受けた

最近においが気になるので郵送の検査を受けた
ケースの話。
性器の臭いは様々です。
自分の臭いが異常なのかどうなのかもわからない人が多いようです。
昔、日本臨床細胞学会で細菌性腟症に関する発表をしましたが、座長の先生から「細菌性腟症はどんな臭いですか?」との質問を受けました。
「私は医者ではないので、臭いについては分かりません。」と答えると、座長の先生は、「診察の時、最もきついニオイは進行した癌ですが、診察の時チョット臭いが気になる人がいますが、それなのかな?」と言っていました。
私が細菌性腟症の研究を始めたきっかけは、ある婦人科の女医さんが子宮頸がん検診の依頼書に(臭い⊕)と書かれていましたが、その数があまりにも多いので先生に問い合わせると、「気になる臭いがあるのでそう書いています。父(婦人科医)が「診察の時に気づいたことがあればメモをしておきなさい」と言うので、いつもそうしていますが、何か困ることがありますか?」という答えが返ってきました。
実はこの女医さん、細菌性腟症という言葉は知っていましたが、先生が(臭い⊕)と書かれた人が細菌性腟症による臭いとは理解されていなかったようです。
このことからも分かるように、細菌性腟症はちょっと気になる臭いなんです。
医学的には「魚臭帯下(魚の生臭さ)」と表現されますが、女の子の間ではイカ臭いと表現されることが多いようです。
この依頼者も、イカ臭いと表現していました。
早速細胞像を見てみましょう。
このように弱拡大で観察しても一目瞭然細菌性腟症が疑われる所見です。
でも待てよ!写真中央にちょっと目立つ大きな細胞があります。
これも細胞検査士が見れば一目瞭然ヘルペス感染細胞かな?
拡大を上げてみました。
大きな細胞の中に複数の核が見えます。
典型的なヘルペス感染細胞です。
しかも核の中をよく見ると、赤っぽく染まる丸い大きな物が見えますが、これは好酸性核内封入体と言います。
これは初感染(初めてヘルペスに感染)では見られない現象で、再発を意味します。
つまり、現在ヘルペスの症状はないが、腟内で再発しているという事なのです。
やはり細胞診はすごいね

他の部位にも同じような細胞が見られます。
こちらも拡大を上げてみました。
核がたくさんある細胞のように見えますが、
実は別々の細胞が寄り集まって一つの細胞のように見えるのです。
ヘルペスに感染した細胞は細胞融合を起こすため、
各々の核が重なることなしに寄り集まっているように見えるのです。

腟内のヘルペスは症状が出ないので発症に気付かない!

ヘルペスが外陰部に初めて発症した時は、
激痛のため歩行困難になることもあります。
しかし、再発を繰り返すたびに症状は軽くなります。また、腟内に発症した場合、今回の様に痛いといった症状は出ませんので、
発症していることに気が付かないため、
この時期の性交渉は大変危険です。

といった具合で、
細胞診って色々なことが分かるから、誰でも
気軽にチャレンジできる郵送検査
を利用してくださいね。

アイラボのHPV検査単独法による子宮頸がん検診

子宮頸がん検診ガイドラインでは、細胞診単独法とHPV検査単独法が推奨ランクAに、また、細胞診・HPV検査併用法が推奨ランクCになっています。細胞診単独法は医師採取に限るが、HPV検査単独法と細胞診・HPV検査併用法は医師採取を原則とすとなっています。
私達は子宮頸がん検診の受診率を上げる目的で、細胞診にも自己採取による検査を提供していますが、HPV検査に関しては、エバリンブラシで採取した場合、医師採取と大きな違いなないことが報告されています。また、私達が実施したエバリンブラシとセルソフト(加藤式自己採取器具の改良型で、大成メディカル社製(大阪))との比較においても、ほぼ同様の成績が得られ(論文掲載受理)、自己採取法の普及と受診率向上が期待されます。
写真の様に、器具の外観だけでも3種の違いは一目瞭然です。
上はオランダ製のエバリンブラシ、中はセルソフト、下は加藤式採取器具です。
セルソフトは5年ほどかけてアイラボと大成メディカル株式会社が加藤式の安全性を担保した形で外観や利便性を向上させた最新の採取器具ですが、細胞採取効率に関しては変わりありません。

加藤式やセルソフトに比べエバリンブラシは、採取部位が4cm程短く、子宮腟部を擦過するというよりも腟の奥から細胞を絡め採るようにできています。一方加藤式とセルソフトはスポンジ部分で子宮腟部を擦過し、更に後腟円蓋部に自然に剥離して溜った細胞まで絡め採る機能があります。従って、細胞成分を沢山採取するという点では加藤式やセルソフトがすぐれていることが分かります。

しかし、私達が試みた研究(エバリンブラシで採取した後にセルソフトで採取した成績)ではHPVを捕捉するという点において、大きな相違は見られていませんので、HPV検査には両者共に推奨されると思われます。
このような絵で見るとわかりやすいですね。
加藤式やセルソフトは腟内の最も奥まで到達し、腟内に子宮の入り口が出っ張った子宮腟部を擦過してくることが分かります。

加藤式だからできるHPV検査とは

加藤式採取器具で届いた検体です。
受付作業が終えると検査の下準備に入ります。
先ずは、細胞成分が採取されているスポンジの部分をアイラボの細胞保存液の中に洗い出します。
白く濁って見えるのが細胞成分です。細胞が多いほど濁りは強くなります。
遠心分離機にかけると、細胞成分は試験管の下に集まりますので、上の液を捨てます。
このように細胞成分だけが沈渣として得られます。
この細胞成分を全ての検査に使用します。
アイラボの郵送検体は自分(検体を採取するのは素人)で採取しますので、全ての検体(例えばHPV検査だけの依頼であっても)について検体の適否判定(検体として適切かどうかを判断)を行ったうえで検査を開始します。このように、少ない面積ですが遠心分離した沈査(細胞成分)をガラスに塗って子宮頸がん細胞診検査と同じパパニコロウ染色を行います。
婦人科を受診すると、先生は細胞を採取する際に内診をしますが、自己採取ではそれもできませんので、このような簡易的な標本で、白血球の増加(炎症)はないか?、その他にも顕微鏡下で観察できることはザッと観察します。
アイラボでは、この作業を最も大切にしています。

アイラボのHPV検査は女性特有な病気の情報も提供可能です

採取して頂いた検体は物ではなくお客様そのものです。
せっかく採取して頂いた検体からの情報はできるだけ皆様にお伝えしています。
HPV検査は本来、ハイリスク型HPVの感染があるかどうかを調べるだけですが、白血球が増加している場合は、腟炎の原因をはっきりさせるための「おりもの&臭いの検査」をお勧めします。また、HPV検査でハイリスク型HPVが陽性の場合、改めて病院に行かなくても「細胞診検査が追加でできます。更に感染しているHPVの型を調べる「HPVタイピング検査」も追加検査ができるように、検体はおおむね2週間から1ヵ月ほど保存しております。

検診機関様&健康保険組合様も郵送検査をご検討下さい

子宮頸がん検診を細胞診からHPV検査に変えると、腟炎や感染症の情報はなくなります。
私達は、
「婦人科細胞診検査は(子宮頸がんだけでなく)婦人科感染症の総合的診断法である」
と考えています。
子宮頸がん検診がHPV検査に代っても、アイラボでは女性特有の病気について可能な限りの情報をこれまで通り報告してまいります。

安心したかったのでアイラボの子宮頸がん検査を受けてみた

40代後半の方の決断です。
もう何年か前になりますが、パートナー以外の方と一度だけ性交渉がありました。
その後、特に気になる症状はなく、日々これまでと変わらない生活をしています。
パートナー(旦那)とも特に変わったことはありませんが、これまで子宮頸がん検診を受けたことがなかったので、ちゃんと調べておこうと思い、郵送での子宮頸がん検査を受けました。

良く決断しました。大大正解です!

良く決断しましたね。
HPVは感染してもほとんど症状は出ませんが、感染初期に若干外陰部にかゆみを訴える方がいるくらいです。症状も無いのに、医療機関に赴くのも面倒なことですし、ついつい億劫(おっくう)になってしまいますよね。その上、恥ずかしい思いも少なからずあり、子育てなどや仕事で検診を受けない人はたくさんいます。ちなみに日本では2年に一度検診を受ける人の割合は、
2019年の国民生活基礎調査(厚労省)によると、子宮頸がん検診受診率は47.3%であり、2009年に受診率50%を目指したにもかかわらず、10年経っても目標に届いていないのが現状です。
そのため、2019年に子宮頸がんに(罹患)かかった人は10879人、2020年に子宮頸がんで亡くなった人は2887人に上っています。(がんセンター研究所、2022年10月25日更新・確認)こんな中、郵送検査であっても子宮頸がん検査を受けたことこそ、セルフメディケーション(自分の健康は自身で管理する考え)の大切なところです。

果たしてその結果はどうだったのでしょう?

私達は、この細胞を見てHSIL(ハイシル)中等度異形成と診断しました。
この方は細胞診とHPV検査を同時に行う最新の子宮頸がん検査を希望していました。当然のことですが16型16・18型以外が陽性でした。

自己採取は検査施設や採取器具で大きく異なります。

下の表は以前紹介したものですが、HPVが感染してからHSILまでになるためにはかなりの時間がかかります。
また、感染していても(医師採取も同様)常に異常な細胞が出るわけでなく、NILM(異常な細胞は見られない)やASC-US(意義不明な異型細胞)、LSIL(軽度扁平上皮内病変)が出たりでなかったりを繰り返します(第一段階)。
この研究はアイラボの藪崎宏美が日本性感染症学会「2011,12月(HPV持続感染例における細胞形態学的推移)」で発表した一部です。
多くの場合、一旦HSILの細胞が発見されると、毎月同じ様な細胞が確認できるようになります(第三段階)。
このことは、自己採取でもがんが進行する前に発見できることを物語っています。

学会で同時に提示したスライドですが、

同様の現象が見られます。
この方は最下段の検査を受けた後、円錐切除術を実施し、結果は上皮内癌でした。
子宮頸がんガイドラインで自己採取法はすっかり信頼をなくしていますが、
採取器具と検査法さえ間違わなければ有効な方法と思われます。
大切になるのは、検査を提供する側は、採取器具の性能や検査精度を熟知し、しっかり説明責任を果たすことです。また受診者も“チコちゃんに叱られないように” 事前にそれらのことはチェックはすべきと考えます。

自己採取でも、検査を受けて大大正解でしたね

自分がいくら努力しても自分ではどうしようもないがんがあります。
しかし、子宮頸がんはあなた自身が守れるがんなのです。今回ご紹介したように、HPVの感染は誰にでも起こり得るのです。病院に行くのが面倒、医師採取は苦手、等々、、、、理由はあってもあなたの子宮と命を守るのはあなたしかいません。

淋菌とクラミジアの検査を依頼された方でも、アイラボでは

細胞診による子宮頸がん検査や淋菌やクラミジアの検査は通常医師が診察時に採取します。
従って、アイラボのような検査所に届いた検体は“医師によって適正に採取されている”ことが前提で検査を開始します。
細胞診検査では、届けられた検体は特殊な染色を行った後細胞検査士が観察しますので、たとえ医師が採取した検体であっても目的の細胞が採取されていない時は『判定不能』として報告し、再度採取していただく事になりますが、淋菌やクラミジアなど採取された検体をそのまま測定機にかけるため、多くの場合それが適正な検体であったかどうか分からないことがあります。例えば、郵送検査で尿を用いて淋菌やクラミジアの検査を依頼した場合、尿の代わりに市販のペットボトル入りのお茶を入れたらどうなるでしょうか?その結果は『陰性』で届きます。本来であれば『不適切検体』となるべきですが、そのような報告にななりません。
そんなこともあり、アイラボでは郵送検査を提供している全ての検体は検体の適否判定を実施しています。
上の写真が、適否判定用の標本で、下が子宮頸がん検査用の細胞診標本です。
観察する面積は少ないですがこの手間を加えることで、検体の適否判定のみならず、白血球の増加(炎症)があるかどうか?など、いろいろな情報をお客さまに還元できるのです。
実際この様に観察しています。

検体の適否判定が目的ですが、思いもよらない情報が!

いくつかの事例を紹介します。

1)男性の方で、“尿道の淋菌クラミジアの検査”を依頼されました。が?
  標本中には異型細胞がゴロゴロ、淋菌クラミジアは陰性でしたが、『早急に泌尿器科を受診して
  精密検査を受けるようコメントしました。』


2)女性の方で、“腟内フローラチェック”を依頼されました。が?
  標本中には白血球の増加が著しい(強い腟炎が見られた)ため、『おりもの&臭いの検査の追
  加』
を提案させて頂きました。しかし、いずれの感染症も陰性でした。アイラボではこのような
  場合、追加検査で『女性のマイコプラズマチェック』を提案させて頂いています。ただしこの検
  査は高額なため、あらかじめ担当者にご相談頂くようコメントした上でご本人に判断して頂きま
  す。 その結果、マイコプラズマ・ジェニタリウムが検出されました。

3)女性の方で、シンプルキットではない“おりもの&臭いの検査”を依頼されました。が?
  標本中には、HSILの存在を疑わせる異型細胞が見られたため、追加で『最新の子宮頸がん検査』
  または『子宮頸がん+HPVタイピング検査』を提案しました。細胞診検査を追加した理由は、検
  体の適否判定標本は観察面積が限られているため、正規の標本で確認する必要があるためです。
  また、HPVタイピング検査を提案した理由は、HPV感染は明らかなので、若干高額になりますが
  感染しているHPVの型を調べておくことが今後の経過を見るうえでも有益と思われるからです。

婦人科細胞診標本は最も安価な婦人科感染症の総合検査

アイラボでは、検体の適否判定に細胞診(パパニコロウ染色)標本を用いています。その理由は、婦人科検査材料(自己採取子宮頸がん検査、腟内フローラチェック、おりもの&臭いの検査、等)のパパニコロウ標本は腟内や子宮頸部の状態を容易に広範囲に見ることができるまさにスクリーニング検査に最適な標本だからです。
子宮頸がん検診に子宮腟部・頸部のパパニコロウ標本を用いているため、子宮頸がん関連病変の細胞の有無を見るだけでなく、『炎症の有無』『ホルモン状態』『トリコモナスやカンジダなどの感染症』等々、たくさんの情報が提供されます。これを無駄にせず、受診者に可能な限り伝える事の重要性をアイラボでは訴えています。

婦人科細胞診はがんの早期発見だけでなく、感染症の早期発見やQOLの向上に有益な方法ですので、郵送検査部門での普及に期待されます。

症状だけで病気を決めつけないで!

おりものの臭いが気になり、細菌性腟症ではないかと心配になり、アイラボの「腟内フローラチェック」のキットを購入された方もケースです。
細菌性腟症はおりものが“魚の生臭い臭いがする”と表現する方が多いように、専門的には「魚臭帯下」と言います。実はこの病気は、私が初めて学会で報告した40年ほど前は、婦人科の先生方にもあまり知られていない病気でした。しかし最近では、ネットの普及によって多くの方に知られる病気になりました。
それだけではありません。この病気を疑って検査を依頼された方の多くは細菌性腟症です。

さて、今回の方も正解(細菌性腟症)なのでしょうか?
早速顕微鏡を見てみましょう。

あれ?

これは細菌性腟症ではなさそうです。

写真の背景にはなにやら細菌のようなものがたくさん見えます。
「細菌性腟症は」はずれですね。
正解は腟カンジダ症です。
拡大を上げた右(下)の写真には、少し赤みがかった酵母の様な細菌が見えます。
木の枝のような仮性菌糸は見られませんが、まさしくカンジダです。
腟内はカンジダだらけの状態と思われます。
これではおりもののにおいが気になるはずです。
腟カンジダ症の症状は“かゆみ”ですが、この方は特にかゆみは気にならなかったようです。
かゆみの次は“白いおりもの”が特徴で、“オカラ様”とか“かゆ状(おかゆの様に見える状態)”だとか、“カッテージチーズ様”などと表現されます。このケースでは、これらの症状も特に気になるほどではなかったようです。
なので、細菌性腟症を疑ったのかも知れませんね。

婦人科の先生方から依頼される検査でもよく経験することですが、先生から「カンジダはいますか?」という依頼があるケースでも、実は「細菌性腟症」だったり、またその逆であったりすることも少なくありません。症状だけでは「はずれ」もあり、実際は「細菌性腟症」なのに「カンジダ」の治療薬が処方されるケースもあるようです。
多くの女性が悩むこの病気(個人的には病気ではなく状態)ですが、先生方にも「大したことはない!」と、素通りされてしまうのかも知れません。子宮頸がん検診でも細菌性腟症にはたくさん遭遇しますが、報告書に記載しないよう指示されることも少なくないのは大変残念なことです。
だから検査があるのです。今回のケースは腟内フローラチェックの依頼でしたので、カンジダの検査も含まれているので“幸運”でした。今回の教訓は「症状だけで決めつけない」ちゃんと検査で確認することが大切!、、、です。セルフメディケーション!検査をされたあなたは合格!