ご挨拶と女性の神秘

Dr シイナのブログへようこそ

私の最後の仕事として “セルフメディケーション” という言葉を選びました。

世界保健機関(WHO)では「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義しています。 “自分自身の健康に責任を持つ”ということは、先ずは病気にならないための知識を学び、日々それを実行し、一つ一つ積み重ねていくことが大切だと考えます。
私は50年余り、顕微鏡の世界で主に子宮頸がんに関わる仕事をしてきましたが、その中でたくさんの感動に出会えました。

その一つが“女性の神秘”です。
顕微鏡の前に現れるひとつ一つの現象には必ず、それなりの理由が存在するのですが、その訳を知ると神秘としか言いようがないことが多いのです。
ひとりでも多くの(女性の)皆さんにこの “神秘の世界を見える化” することで、自身の健康状態を確認しながらQOLの向上に役立てていただければと考えました。
具体的には腟内を顕微鏡で見える世界でご自身の今の状態を観察するものです。
多分このような試みは多くないと思いますが、皆さんと一緒に作り上げていきたいと思いますので、ご協力をお願いいたします。

すでにいくつかの記事を準備していますが、先ずは神秘の世界をご覧ください。

排卵期の腟内画像

クリックして写真を大きくしましょう。

オレンジ色に染まる細胞は重層扁平上皮「表層細胞」細胞といいます。
月経後、卵巣では「卵=(卵胞)」が徐々に成熟し、卵胞ホルモン(エストロゲン)たくさんつくられます。エストロゲンは細胞を成熟させる働きがありますので、
腟の粘膜は最も厚くなり、その表面は写真のように表層細胞で覆われます。
粘膜が厚くなることで“ばい菌”の侵入を防ぐことが出来ますので、防御態勢が整っている状態ということになります。従って、腟内には“ばい菌”と戦う白血球も必要がないのでほとんど見当たりません。このように準備万端で妊娠に備えるんですよ。
排卵が終わると、脳下垂体というところから黄体刺激ホルモンが分泌されて卵巣から黄体ホルモンがつくられて妊娠の準備が始まります。
黄体ホルモンが増えてくると、腟の表面を覆っていた表層細胞が剝がれ、腟の表面は中層細胞(緑色に染まる細胞)になります。
腟の粘膜が一皮むけることになりますので、ばい菌に襲われやすくなりますね。
妊娠に向けてそれは困りますので、写真のように乳酸菌の仲間(針のように見える細菌)が増えてきます。乳酸菌が増える理由はこの中層細胞にはたくさんの糖分(グリコーゲン)が含まれているので、乳酸菌はそれを栄養源として爆発的に増えるのです。乳酸菌が増える過程で分解されたグリコーゲンから強い酸がつくられるのです。つまり腟内を強い酸性の状態にすることで、ばい菌が膣内に侵入したとしても、「お前たちを増やさせないぞ!」という環境にして防御態勢を維持しているのです。
このように腟内はホルモン環境に対応して自身を守っているのです。
これを腟の自浄作用といいます。
神秘的でしょう? 
そしてもし妊娠が成立しないと月経になり、今度は血液で腟内を清掃しているんですよ。
神秘的でしょう?
しかし、このような正常の状態が維持できない状況になってしまいことがあるのです。その原因の大半は性行為によりますが、それも人にとっては欠くことのできないことですので、健康やQOLを維持しつつうまく付き合っていくことが大切ではないかと考えます。
このブログでは皆さんと一緒に「神秘の世界を見える化」して健康を維持し、QOLを高めてまいりましょう。
決して恥ずかしいことではありません。誰しもバランスを崩してしまうことがあるのです。
皆さんでこの問題を解決していけるブログにしましょう。