風俗でゴムなしの行為をし、HPV感染が心配で眠れない

基本的に風俗の存在はいろいろな問題はありますが、“反対ではありません”という立場です。とはいえ、風俗のことをそんなに良く知っている訳ではなく“必要なんだろうな”程度の理解しかありません。アイラボを開業して間もなく、ある風俗の経営者から電話が入りました。『この仕事をするからには長くやりたいので色々なことをちゃんとやりたいので定期検査をお願いしたい』という内容でした。
アイラボを22年前に立ち上げましたが、会社経営については全くの素人、営業がまともにできるわけではありませんので、頼みの綱はネットだけでした。そのお客さんから定期検査の依頼は嬉しいの一言でしたが、実はそれだけではなく、性感染症は職業病ですので、“キャストや利用するお客さんのために少しは役に立てるかな”と思う気持ちと、“風俗をより良い形で認知して感染症蔓延防止は出来ないか”との思いが脳裏をかすめ、仕事が一段落したらこの問題にとりかかろうと考えました。

しかし、積極的に性感染症対策をしたいキャストさんは少ない

風俗と私達の接点は“性感染症対策”です。
実際、キャストの皆さんは性感染症は怖いとの認識はあるものの、それは他人事であり、実際その火の粉が自分に降り注ぐことはあまり前提にしていないようです。ちょっと信じがたい話ですが、経営者の方が教えてくれました。性感染症のことについてもほとんど知識がない子が多いのだそうです。
普通に考えれば、仕事を始める前に性感染症の予防について十分な教育がなされるべきで、それは当たり前のことと思っていました。
従って、“性感染症対策はキャスト任せではなく経営者の熱意にたよわざるを得ないのが現実ではないかと思います。”

利用される方はそれなりの感染予防に関する知識が必要

ということで、キャストの皆さんは誰一人として病気を隠して仕事をすることはないと思いますが、いつ感染したのか分からないまま仕事をしてしまうことはあり得ます。症状があれば“検査をしなければ”と思うのですが、目立った症状がなければ定期検査の日まで仕事は継続します。従って、風俗を利用される方においては、性感染症がうつる可能性があることを認識しておかなければならないのです。“利用する側とサービスを提供する側双方が十分な知識を持ち合わせることが重要です。”
その点において、今回無料相談をご利用になった方は、(その辺は分かっていながら)その場では冷静さを欠きコンドームなしでの性行為があったようです。無論、HPVだけでなく、すべての性感染症の危険にさらされたわけですから、心配で眠れないのも無理はないでしょう。ただただ、感染しないことを祈る“神頼み”になってしまうのです。

風俗営業従事者の性感染症保有率を学会に報告しました(2010年)

この表は2010年日本性感染症学会にて私が報告したものです。
最も上の赤で示したように、風俗営業従事者における子宮頸がん関連病変(LSIL以上)の検出率は14.5%になっています。通常(一般人)の子宮頸がん検診におけるLSIL以上は1.5%~2.0%との報告が多いようです。このように一般の人に比べると風俗営業従事者の場合はおおむね10倍程になっています。
利用された方が悩まれるの無理はありません。

子宮頸がんからキャストさんを守ることがHPV拡散防止につながる

せめて従業員の皆さんにはHPVワクチンを接種して頂くことができればHPVの拡散は防げます。
そんなことを常日頃考えていますが、(なかなか難しい問題もあります)保健行政に手を差し伸べて頂きたいところです。