ある証券マンがアイラボに 何だって? HPV検査をしたいと!

私は、投資とか株式とか全く興味のない人間。
でも、証券マン達だって仕事。
無下に断ることはしないで、一応、短い時間でもお話は聞くことにしています。
多くの場合、私に無料で子宮頸がんや性感染症の講義を受けてお帰りになるのが関の山。
いつも、「今日は良いお話を聞けて良かったね」と言って見送ります。
今日は、ある証券マンのためになるお話を紹介します。

ある証券会社の女性社員にとって私はお客さん。
その女性から、上司(?)の希望で一緒にご挨拶に伺いたいという電話がありました。
私自身、あまり興味のない分野のお客様ですが、快く承諾しました。
約束の日、2人でアイラボに来られました。型のごとく名刺を交換させて頂きました。
「今日はどんな御用でいらっしゃいましたか?」と聞くと。
その上司さん。「女性社員には、アイラボに来る途中の車の中で、今日はビックリする話をするので驚かないでね。と話してあります。」と前置きをしてから、、、、

上司の第一声は「男のHPV検査をしたい」と言う事、、、、?

「エ?、あなたご自身のお話ですか?」と尋ねると、「はい」と。「検査をすることはもちろんたやすい御用ですが、どうされたのですか?」と再度尋ねると。
「お付き合いしていた人が、検診で異形成と診断され、結果的に別れることになってしまいました。教えて欲しいのは、普通の生活をしているだけでHPVというウイルスはうつるものですか?」と聞いてきました。(ある子宮頸がん検診の講演会で、HPVワクチン推進派のチョット名の知れたお医者さんが高校生を前に、「不特定多数の人と性的な行為をするだけでなく、手をつないだだけでもうつってしますウイルスなので、、、(中略)、、、ワクチンを接種しておきましょう」と力説していました。)この公演会に私と一緒に参加した同僚の女性も「え?、、、子供達を前にこんなこと言っていいの?」とあきれ返っていましたが、HPVワクチンの接種は子宮頸がんを予防するためには大切なお話ですが、結果的にこのような立場のお医者さんが、手をつないだだけでも感染するなどと発言することで、医療に対する信頼が低下してしまうのではないか?と感じたことがありました。

話を戻しますが、その上司さんには、「確かにHPVは感染力の強いウイルスですが、健康な皮膚や粘膜に触れても感染は成立しません。目に見えない小さな傷口から感染しますので、日常の生活で知らぬ間に感染していたというのは正解ではありません。」と答えました。

実は、私(上司)、その女性が初めての人だったんです。

「そうですか。実は子宮頸がん検診などで異形成と診断されると、多くの場合直近お付き合いしていた人が疑われてしまい、別れる羽目になってしまうことが少なくないのです。あなたの様に、性的な行為をしたことがない人でもうつされたと疑われ、検査をしてみてくださいと言われますが、既にその方からうつされている可能性が高いのです。
私達は男性のHPV検査を提供していますが、決してそのような目的で提供しているものではありません。子宮頸がんは女性だけの問題ではなく、男性にも子宮頸がんに対する正しい知識をもって頂き、子宮頸がんから子宮を守り、命を守るために一緒に考えて欲しいからです。こんなことを書いていたら職員が一枚のアンケート用紙(検査キットの中に入れてある)を持ってきました。今回検査を受けた目的を書いていただく欄には「これからお付き合いをする人に傷つけたくないから(多分HPVを感染させたくないからという意味)」と書かれていました。このような男性の意識改革こそが私達の目的なのです。HPVの感染は「悪」でも「恥ずかしい事」でもありません。セックスの経験がある人ならだれにでも起こりうることなのです。■HPVワクチンはその感染を予防するもの、■不特定多数の人との接触は感染の危険性が高まる行為、■HPV検査による子宮頸がん検診は危険なHPVの感染があるかどうかを調べる検査、■細胞診による子宮頸がん検診はHPV感染の有無を調べるだけでなく、進行の度合いを推定する検査(例えば、軽度異形成、高度異形成、上皮内癌、といった)、■円錐切除術やレーザー治療はがんになる前に危険な部位を取り除く治療、等々、子宮を守る手段は山ほどあるのです。女性だけでなく、男性も一緒にHPV感染と子宮頸がんの関りを知り、“自分に合った”、“自分たちに合った”対策を一緒に考えて頂きたいのです。

具体的には

■ HPVワクチンの定期接種
世界的に12歳頃始めますが、HPVに感染する前に接種することが大切です。感染してしまってからの効果は6割ほどになってしまうと言われています。性行動は人の尊厳にかかわる行為ですので尊重されなければなりません。しかし、性の発達段階は人や環境によって異なりますので、ある年齢に達したら同時スタートという考えは少し乱暴かも知れませんし、日本の場合、性教育は極端に遅れているため、12歳前後の子供たちにHPVワクチンの定期接種と言ってもその意義を十分理解できないまま“みんながやるから私も”という、「みんなで渡れば怖くない」的感覚で臨んでいるのではないでしょうか?HPVワクチンの定期接種は性教育の絶好の機会なのです。自分は今決められない。もう少し大人になってから考える。そんな子供たちが現れる社会を私は望んでします。
オーストラリアでは男の子もHPVワクチンの定期接種を実施しています。私の孫は米国フィラデルフィアに住んでいますが、お母さん(私の娘)の勧めで中学1年生の時HPVワクチンを接種しました。
■子宮頸がん検診

検診の目的は前にも書きましたが、HPV感染があるかどうか? 病変の進行度合(LSIL、HSIL、など)を推定する検査です。子宮頸がん検診の受診率は44%程で頭打ちの状況です。自己採取型HPV検査の普及で受診率を80%位まで上げたい。そして、男性の子宮頸がんに対する意識改革で子宮頸がんゼロを目指すのが私達の目的です。

この上司さん 女性の健康と活躍を支援してくれるでしょう

この上司さんには、会社で女性の健康についての会議があったら、是非、子宮頸がんのことについて発言してください。きっと一目置かれる存在になりますよ。」と伝えました。

数日後、「男のHPVタイピング検査(ハイリスク+コンジローマ)」の注文が入りました。