男性のHPV検査が教えてくれること

子宮頸がんの原因は“ハイリスク型のHPV感染”、このことが広く国民に浸透してきたようです。それと同時に、“HPVは性交によって感染する”ことも、老若男女問わず理解されてきたようです。

私は杏林大学保健学部在任中からHPV感染に関する研究に取り組ん出来ましたが、中でも大河戸光章先生はこの分野の第一人者と言えるまでに研究成果を上げてきました。その研究の中で『高感度多種HPV検出法uniplex E6/E7 PCR』の開発は、従来法に比べて高感度な上に39種のHPVの型を均等な感度で検出できるとことと、多重感染であっても感染しているHPVの型を厳密に区別することが可能な方法です。

アイラボの郵送検査はこの方法でHPVタイピング検査を行っていますので、今回はその一端をご紹介いたします。
(大河戸先生にはその旨の許可を頂いております)

女性はもとより、男性性器からの検出も可能!

これは大河戸先生が日本臨床細胞学会のシンポジウムで講演さてた時のスライドです。
アイラボの『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種)Kit 112』は、左の濃い赤枠で示された13種を同時に測定しています。
それらのHPVが存在(>100copuies)すれば、右の黒枠内の白帯の様に、各々のHPVが均一に検出できる方法なのです。
アイラボでは、PCR検査を実施する前に必ず検体の適否判定のための標本を作製し、写真の様に顕微鏡で細胞の有無を判定します。細胞が採取されていなかったり、極めてその数が少ない時は高価な検査を実施せず、再採取をして頂いています。
2枚の写真共に男性の亀頭部分を綿棒でこすって細胞を採取したものです。亀頭部分は重層扁平上皮で覆われていますので、通常は細胞の核は観察されませんが、写真左(上)は良く見ると1個の核が見えます。もちろん細胞はたくさん採れています(細胞と言うより垢のようですが)ので検体としては適正ですのでPCR検査に進みます。
写真右(下)は、採取されている細胞はかなり少ないですが、検体としては適正と判定しました。実際PCR検査に使用する細胞はこれよりかなり多いので検査には問題ありません。

さて、このような亀頭からの検体ですが、どんな結果になるでしょうか?

子宮頸がん検診ガイドラインではHPV単独検査は推奨ランクAになっています

少し話外れますが、子宮頸がん検診でHPV単独検査の場合は、子宮腟部や頸部から採取される細胞については検体の中の細胞成分を顕微鏡で観察することはありませんので、白血球が増えている(炎症がある)か? トリコモナスやカンジダの様な感染症があるか? などについては分かりません。あくまで、子宮頸がんの原因となるハイリスク型HPVが存在するかどうかの検査ですので、“いつもと違っておりものが気になるので今年は検診を受けよう”と思われている人にはその点を理解されれておかれるとよいのではないかと思います。

従って、HPV単独検査で「陽性」の結果をもらった時は、婦人科を受診して細胞診検査を受けることになります。この細胞診検査(普通の子宮頸がん検診で行われている検査)では、今現在どのような細胞が見られるのか『子宮頸がん関連病変 NILM(異常な細胞はない)ASC-US(HPVの感染が疑われる細胞がある)LSIL(HPVに感染した細胞=軽度異形成がある)HSIL(中等度異形成・高度異形成・上皮内癌など前がん病変の細胞がある)など』を知ることが出来るのです。

大切なことは、HPV検査で陽性になったら必ず病院を受診して細胞診検査を受けなければならないのです
子宮頸がん検診におけるHPV単独検査はそのような検査であることを理解しておきましょう。

さて、uniplex E6/E7 PCRの結果はどうでしたでしょうか?

最初のケース写真左(上)は51型と52型が検出されました。
写真右(下)のケースは18型と59型、さらにこの人は尖圭コンジローマの遺伝子検査を含む『男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマ)Kit113』を希望しており、HPV11型も検出されました。

このように、検体の適否判定で観察できる細胞はかなり少なかったケースにおいても、3種類のHPVが検出されました。

私達は “検体の適否を観察すること” 、そして “どんな細胞が出現しているかを見ること” 、さらに、“どんなHPVの型であっても均質な感度で同時に検出できる方法” だからこそこのキットを提供しています。

数年前から『』男のHPVタイピング検査(ハイリスク13種+コンジローマ)Kit113』が特に男性から注目されています。
その理由は
①(自分はこれまで複数の方と付き合いがあったので)大切な人に危険なHPVを感染させたくない。
②最近風俗を利用したので、感染しているかどうか調べたい。
③パートナーの女性からこの検査を受けるように言われた
などがあるようです。

HPVは他の性感染症と同様にパートナーとの性交で感染します。
HPVはとても感染力の強いウイルスですが、ウイルスそのものを皮膚や粘膜に付けても感染は成立しません。
性交は “皮膚と粘膜をこする” という物理的刺激を加える行為ですので、そこには目に見えない小さな傷がつきます。HPVはその傷口から体内に侵入しますので、パートナーが多いほど感染の危険性は高くなります。
コンドームの使用でHPVの感染を完全に防ぐことはできません(男性性器根本部分が危険にさらされる)が、はかなりの効果が期待できますので、知識として持っておきましょう。
アイラボの無料相談で男性からの相談で最も多いのが、HPV感染についてです。
その中で特に多いのが、“パートナーが子宮頸がん検診で異常が見つかった”というものです。
・「女性」担当医から「旦那にHPVをうつされた」と言われたケース。
・「女性」パートナーにどう話せばいいのか悩むケース。
・「女性」逆にパートナーから自分が疑われてしまうケース
・「男性」パートナーから検査を受けるように言われた
・「男性」どの程度でHPVは陰性化するまで性交はできないのか?
・「男性」オーラルをしてもらっても大丈夫か?

等々、いろいろです。これらについては少しづつこのブログでも紹介していきます。

大切なことは、“HPV感染を避けること” “感染を少しでも防ぐこと” “感染有無を自身が知り、検診を受けること”
男女ともにワクチンを接種するなど、対策はいろいろあります。
この点についても皆で考えていきましょう。

男性のHPVタイピング検査を提供し始めて私達も多くのことを学びました。
『子宮頸がんは女性だけの問題ではない事』 男性自身がHPVに感染していることを現実に知ることで、本気で子宮頸がんを考えて頂ける環境が生まれてきた気がします。

大河戸先生ありがとうございます。