生理終盤の腟洗浄はNG

女性の体は本当に神秘的です。
(思春期)月経が始まるということは、卵巣で眠っていた卵(卵胞)が成熟を始めるということです。
つまり、脳下垂体前葉というところから卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、卵巣の中にある原始卵胞(眠っていた卵)に(成熟しなさい)と刺激を与えます。すると受精が可能な卵に成熟します。このFSHというホルモンは排卵の直前まで増え続けますが、卵が成熟する過程で女性ホルモン(エストロゲン)が作られ、排卵の頃に最も多くなります。排卵されると、“排卵された”という信号が脳に行き、脳下垂体前葉から黄体形成ホルモン
(LH:排卵された後に黄体を作りなさいというホルモン)が分泌され、その黄体から黄体ホルモンが分泌され、受精卵が無事に着床し、分裂を繰り返し10ヵ月ほどかけて赤ちゃんまで成熟します。
一方、精子と出会えなかった卵は着床しないため、着床を準備していた子宮内膜成分は血液と一緒に剥がれ落ち、体外に脱出します。これが月経です。

赤ちゃんが育つ子宮は、腟を介して外部とつながっています。
外陰部は肛門に接しており、いろいろな菌が存在しますので、そのような菌が腟の中に入って増えないようにいろいろな防御機構が働いています。しかし、思春期前は腟の上皮は薄く、十分な防御力がないため時折腟炎を起こしてしまう事もあります。思春期になり、月経が始まる頃には性交にも耐えられる準備が整い、腟の粘膜上皮は厚くなり、それら細胞には乳酸菌の栄養源となるグリコーゲンが豊富になり、腟内は強い酸性の環境になります。性行為が始まるようになるといろいろな菌が腟内に侵入しますが、乳酸菌が守っているのです。

さらに、月経により多量の血液が子宮や腟内を流れ下ることで、腟内を洗っているのです。
そんな神秘的な営なみで腟内は守られていること、よく覚えてくださいね。

月経血で腟内を洗った後は、乳酸菌が増える時期!

もう1年余りも細菌性腟症で悩んでいた客さん。
お仕事柄(風俗)生理後半は早くきれいにして仕事に出たいそうです。
これまでその対策はもっぱら腟洗浄でしたが、臭いが気になるようになったので定期検査をアイラボの「腟と咽頭のSTDチェック」に切り替えたようです。その理由は性病ではない細菌性腟症の検査が同時にできるからという事でした。
しかし、初めてから一度も細菌性腟症から逃れることはできませんでした。対策は“腟洗浄は絶対にしない”を守りました。今まで習慣になっていたので“洗わないと気持ちが悪い”という思いはありましたが、外陰部はそれなりに清潔にしていましたが腟内は可能な限り自然体にしました。その間、クラミジアやカンジダ症になって治療しました。またかかりつけの先生にはフラジールを処方して頂いたこともありましたが、すぐには改善しなかったのです。

ところが今月の定期検査では腟内に炎症はなく、写真の様に乳酸菌たくさん増えていました。
検査をする私達にとっても「〇〇さん、細菌性腟症が治った!」と、みんなで喜びました。
そうなんです。
細菌性腟症は病気ではないんです。
単に腟内環境が乳酸菌主体から腟ガルドネラ菌に置き換わっただけのことです。
しかも、腟ガルドネラ菌が支配するようになっても、白血球は増えないのです。つまり腟炎は起こさないのです。
強い腟炎を起こす淋病やクラミジア、さらに腟トリコモナス症とは違うのです。

乳酸菌主体の腟内酸度はおおむねpH3.5程ですが、腟ガルドネラが主体になるとpH4.5以上になると言われています。
腟ガルドネラ菌も乳酸菌ほどではないものの酸を作るので、(ひょっとしたら)腟内をある程度守っているのかも知れませんし、他の微生物にとっても住みやすい環境を提供しているのではないか?と考えさせられることがあります。
その一つが、HPVですが、ASC-US例やLSILケースで細菌性腟症を合併していることは少なくないのです。

でも困ることが2つあります。
その一つは魚臭帯下(魚の生臭いにおいのするおりもの)です。
臭いの度合いは様々ですが、体臭と思われたり、性病では?と疑われてしまう事もあります。
もう一つの困る点は、流産や早産の原因になるという報告もあります。この点を考慮するなら、望む妊娠の前には細菌性腟症を改善しておくのが良いと思います。
細菌性腟症は病気ではありませんので、生活習慣に気をつければ改善が期待されます。
お悩みの際はDrシイナに直接ご相談下さい。セルフメディケーション!自分で努力して改善させましょう。