ヘルペスの初感染(可哀そう)

性感染症は、一度に幾つもの感染症にかかってしまうことがあります。
私がこれまでの経験でも、ヘルペス、淋菌、クラミジア、トリコモナス、マイコプラズマが一度の検査で陽性になったことがありますが、今回もそれに近いケースかも知れません。
このケースは、数日前から性器に痛痒い症状が現れ、ほぼ歩行困難な状況で検査を受けました。今回のケースは同時に感染したのか、いくつかは以前に感染していたのかは不明ですが、顕微鏡を見て即診断できたのはヘルペスの感染です。
顕微鏡を見ているだけでも、とても可哀そうになるくらいです。
ヘルペスウイルスが猛烈に増えている真っ最中!

早速皆さんも見てみましょう。

ヘルペスが猛烈に増えています

こんなに色々な細菌やウイルスに感染しているのに、白血球の増加(膣炎を疑う所見)は見られません。弱拡大(左上、一番上)の写真中央には「異型細胞?」らしき核がちょっと大きくなった細胞が見られます。拡大を上げてみると(右上、上から二番目)まぎれもないヘルペス感染細胞です。
ヘルペスに感染している細胞の特徴は
1)この細胞のように核の中がスリガラス(曇りガラス)のような無構造に見える。
2)多核形成と言って、一つの細胞にたくさんの核が見られる。
3)核辺縁の不規則な肥厚(普通の細胞の核膜は薄く均一ですが、写真の細胞はどれも核膜が不規則に厚くなっています)。
4)核が押し合っているように見える。
5)核の中央に赤っぽく染まる核内封入体が見られる。(再発の時に見られる所見で今回は見えません)
等々です。

右上(上から2番目)の写真では、核が一つの細胞、核が2つの細胞が見られ、なんとなくそれら細胞が仲良く寄り添って見えませんか?(私にはそう見えます。色々なことを想像しながら顕微鏡の世界と話をしているんです。)
実は、ヘルペスに感染して、ウイルスが核の中で増殖し始めると細胞融合(感染している細胞同士がお互いにひっついてあたかも一つの大きな細胞のように見える現象)が起こるんですよ。 この写真はまさにそんな感じです。ウイルスが猛烈に増えている状態なんです。痛そう!本当に可哀そう!これら細胞はそんなことを感じさせてくれます。
左下(上から3番目)の写真もまさに融合しようとしている所見ですね。
このように細胞融合するために多核細胞のように見えたり、核が押し合っているように見えるんです。核の中でウイルスが増えてしまうために本来核の中に存在しているクロマチンが核の端っこに追いやられて核膜が不規則に厚くなって見えるんです。

細胞の顔つきが変わるのにはそれなりの理由があるんですね。
顕微鏡とこんな話をしながら診断しているんです。
仕事としては楽しいのですが、本人にとってはとてもつらく可哀そうの一言です。
性交渉には危険が伴います。
望まない妊娠。
今回の様な性感染症。
口やのどにもヘルペスや淋菌が感染しているかも知れません。
本当に怖いですね。
セルフメディケーション!
自分の健康は自分で守る!
性感染症から自分を守るためには、しっかりした感染症に関する知識を持つことです。
今回のケースはあまりにも無防備で無茶しすぎです。
今回検査しなかった、梅毒(今大変増えています)、HPVやHIVなどについてもしっかり調べておきましょうね。感染していないという保証は全くありません。

困った時にはアイラボの無料相談を気軽にご利用ください。