中等度異形成は腫瘍化の始まり

HPVが感染してから子宮頸がんになるまでにはいくつもの段階があり、一般的には何年もかかります。
HPVの感染はどうして調べるのか? それは誰でも自宅で簡単に調べられます⇒ HPV検査です。HPV検査は危険なウイルスの感染があるかどうかを調べるだけですので、もし陽性という結果が出たら婦人科を受診して細胞診検査を受けることになります。
細胞診検査は、(今HPVに感染していると仮定した場合)現在どんな状況なのかを教えてくれる検査で、例えば、今は(感染しているけど)異常な細胞が見られない時は「NILM(ニルム)」、由来があまりはっきりしない異型細胞が出ている時は「ASC-US(アスカス)」、HPV感染が明らかな軽度異形成は「LSIL(ローシル)」、中等度異形成以上(前がん病変)は「HSIL(ハイシル)」などと診断できる検査です。子宮頸がん検診で広く行われている検査で、医師が採取しますので、婦人科を受診します。また私達は病院が苦手な人のために自己採取法も準備しています。
このケースは自己採取法で中等度異形成と診断したケースを紹介します。

腫瘍化の始まりか?

左(上)の弱拡大の写真を見ると、白血球の増加はなく腟内はとてもきれいです。
しかし、写真の中央には周りとはチョット違う細胞が見えます。私達は毎日顕微鏡でこんなチョットおかしな細胞があるかどうかを見ているんです。
拡大を上げた写真を見ると、あまり大きな細胞ではありませんが、相対的に核が大きく、濃く染まっています。
このように小さな細胞で核が濃く染まっていることがヤバいのです。専門的になりますが中層から深層型の核異常細胞と言って、中等度異形成があるかな?と推定します。
細胞診でそのように診断されると、次は病院で組織検査が行われます。おかしそうな部位から小さな組織(肉片)を採取してより詳しく調べます。
病理検査で中等度異形成が確定すると“CIN 2” と評価されます。
“CIN 1” は軽度異形成です。この軽度異形成と中等度異形成では考え方が全く異なります。軽度異形成はクラミジアや淋菌と同じようにHPVの「感染」に過ぎないのです。しかし、中等度異形成は「腫瘍化」の始まりなのです。
難しい説明は別の機会にしますが、より厳重なフローアップ(追跡)が必要になります。何を追跡するかと言えば、高度異形成や上皮内癌へと病変が進まないかをチェックするのです。
そして、その進み具合によっては医師の判断で円錐切除術という方法で異常な部位のみを切除することになります。従って、今は子宮頸がん検診と言っても“がん”を探しているのではなく、HPVの感染からがんになる一歩手前の状態を見つけているんです。
と言うことで、子宮頸がんから自分を守るためには“自らの意志で検診を受ける”ことが必須なのです。検査の方法も遺伝子検査の普及に伴い大変受けやすくなっています。私達は自己採取法を選択する場合はHPV検査と細胞診検査を同時に行う方法を勧めていますが、最も大事なことは、何らかの異常が見つかったら必ず精密検査を受けることなのです。頻度は少ないものの、子宮頸部の奥に発生する頸部腺がんをも見逃さないためです。セルフメディケーション!あなたの健康はあなた以外に守ってくれません。