最も危険なHPV 16型単独感染例

子宮頸がんの発生で最も危険とされているHPVは16型で、それは私達のこれまでの経験からも疑う余地はありません。

最近、この16型の細胞像(細胞の顔つき)について新しい発見がありました。
それは、私と長年研究を共にしてきた杏林大学保健学部大河戸光章先生の研究成果です。
HPVに感染した細胞の代表的な特徴は、このブログでもたくさん紹介していますがコイロサイトーシス(核の周りが白く抜ける特徴的所見)を有する細胞の出現です。しかし、16型に感染した細胞にはこの所見(コイロサイトーシス)が現れないというのです。
私達細胞診に携わる者にとってはとても重要な発見なんです。

それでは、16型単独感染例の細胞を見ていきましょう。

エッ? 細菌性腟症なの?

〇の写真以外は全て同じ倍率です。
先ずは上の左(一番上)の写真です。
「アッ!!、、、こんな写真よく見る」私のブログをよく見て頂ける人には、“細菌性腟症ではないの?” って分かる方が多いと思いますが、このケースはそれ以外に大きな問題があるのです。
上の右(上から2番目)の拡大を上げた写真を見ると、中央に核が濃く染まった数個の細胞集塊(細胞の集まり)が見えます。
これはヤバイ! 小型の細胞で核が濃く染まっていることがヤバイのです。
直感的に“上皮内癌があるかも?” と考えます。

他の細胞達も見てみましょう。
濃く染まる細胞の数は若干異なりますが、同じような顔つきの細胞達です。
この症例は加藤式による自己採取された検体ですが、この3枚の写真から私達はHSILと診断しました。
疑う病変は高度異形成から上皮内癌で、病理学的にはCIN 3に相当する病変が推定されます。

そうそう。大河戸先生が言われるように、確かにコイロサイトーシスを伴うHPV感染細胞は見られなかった。
このような細胞が発見されたことについて、当人は大変ショックだと思います。
しかしよく考えてみましょう。
高度異形成や上皮内癌(CIN 3)なら、円錐切除術という方法でその部分だけを外科的に切除することが可能なのです。
勿論、その後妊娠も出産も可能なんです。
今回、あなたご自身で郵送検査ではありますが子宮頸がん検査「子宮頸がん細胞診検査+HPVタイピング(ハイリスク)検査」を受けられたことは大正解であり、自身のために大金星を獲得したことになります。
今後、婦人科を受診し、子宮頸管内を含め精密検査を受けていただく事になりますが、先生の指示に従い完治されることを祈っています。
セルフメディケーション、自分の健康は自分で責任をもって守る。
私達がこの仕事をしていて最高に幸せを感じるケースでしたが、いつも大変緊張して検査に臨んでします。
自己採取と限りませんが、特にASC-USやLSIL(CIN 1)の様に、HPVの感染症の段階では、異常な細胞が出たり出なかったりを繰り返すのです。
「治ったのかな?、、、って思ってもまたLSILやASC-USの細胞が出てきます。そして時にはそれより細胞の顔つきが悪い今回のようなHSILの細胞が出るようになります。
HSIL(CIN 3)になると、多くの場合毎月検査しても異型のある細胞を見つける確率が上がります。
自分の健康は自分で守る。そんな習慣をつけましょう。