HPV56型感染例の細胞

半年前にASC-US(細胞診検査で意義不明な異型細胞)と診断され、その後の検査でハイリスク型HPVの56型の感染が明らかになった方のフォローアップ検査が行われました。
細胞診検査でASC-USと診断された時は、HPV検査(ハイリスク型HPVの感染かあるかどうかを調べる検査)を受けることになっています。この方のようにチャント受けていればHPVの感染があることが分かりますが、HPV検査を受けない人が少なくありません。
(この方はHPV検査で陽性になったことで、感染している型(ジェノタイプ)を調べるタイピング検査をして56型の感染が明らかになっています。)

さて、半年後どうなったのでしょうか?

色々な細胞が出てきました

左(上)の細胞は、核の周りが白く抜けていますが、これはHPV感染の特徴的所見の一つでコイロサイトーシス(koilocytosis)と言います。HPVに感染したすべての細胞に見られるわけではありませんが、多くのHPVで遭遇しますので、私達にとってはとても重要な所見です。
右(下)の写真には核が大きくなった2つの細胞が見られます。右側の細胞はオレンジの色素に染まっていますが、これもHPVに感染した細胞の特徴です。
HPVは角化した細胞で増殖が盛んになりますので、自らが増殖しやすい環境にするためです。
このような細胞が見られた時、私達は細胞診の段階でHPV感染が明らかになりますので“LSIL=軽度異形成”と診断することが出来ます。。
軽度異形成(LSIL)は病理学的には“CIN1”に分類されます。
LSIL(CIN 1)は、その約90%は自然に排除(ウイルスがいなくなる)されますが、残りの10%ほどが感染し続け(持続感染)、中等度異形成(CIN 2)や高度異形成・上皮内癌(CIN 3)のような前がん病変へと進んでいきます。詳しいことは別の機会にしますが、大切なことは、検診で折角ASC-USやLSILの細胞が見つけられたのですから、その先がどうなるかしっかり見守っていかなければなりません。
セルフメディケーション、自分の健康は自分で責任をもって守る。
フォローアップ(追跡)検査は長い期間定期的に受診しなければなりませんので負担は大きいのですが、あなた以外にあなたの健康は守れないのです。
さらに大切なことがあります。子宮の入り口から少し奥に入ったところ(子宮頸部)に発生する子宮頸部腺がんの多くもHPVの感染が引き金になっています。
だから、LSILやHSILと診断された時は必ず精密検査が必要なんです。