私達はASC-USとします

ASC-USはアスカスと言い、「意義不明な異型細胞」が出現しているという意味です。
つまり、由来がはっきりしないが、NILM「上皮異常は認めない(陰性)」でもなく、明らかにLSIL 「軽度扁平上皮内病変(軽度異形成)」と診断できる所見でもない時に分類されます。

少し専門すぎて分かりにくいと思いますが、子宮頸がん細胞診検査という目的からすれば、「HPV感染と断定できないが、HPV感染を否定できない細胞が見られた。」という意味です。

するとこのような細胞が出現!

左(上)のオレンジ色に染まる細胞は比較的大きな細胞で、周りに見られる正常の中層細胞に比べると、核が大きく、やや濃く染まっています。従ってNILMではないのですが、LSILとするには核の所見が乏しいのです。つまり、どっちつかずの変な細胞なんで「意義不明な異型細胞」とします。右(下)の細胞も正常の細胞に比べると核が大きくなっています。「お前はどこから来たのかい?」、、、そんな細胞なので、こちらも「意義不明な異型細胞」と私達は判断し、ASC-USと診断します。
ASC-USと診断された時は「HPV検査」で子宮頸がんと関係がある危険なHPV(ハイリスク型HPV)の感染があるかどうかを調べることになります。
ハイリスク型HPVは国際的に13種(16,18,31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,68)が知られています。
HPV検査は基本的に13種の中のいずれかの感染があるかどうかを調べる検査で、感染している個々の型を調べる検査ではありません。測定機種によっては最も危険な16型、次いで危険な18型、その他に分けて報告されるものがあります。また、測定方法によっては検出感度が異なったり、検出できない型が存在することもあります。
さらに、私たちの経験からこれら13種以外の型(例えば82型など)の感染でもHSIL相当の異常な細胞が検出されていますので、HPV検査の信頼度はおおむね95%程と考えられています。
それでは半世紀以上もの長い間子宮頸がん検診に採用された細胞診検査の精度はどうなんでしょう?
日本の子宮頸がん検診の草分けのお一人でもある野田紀一郎先生は「細胞診で子宮頸がんは100%防げる」と言われておりましたが、私自身も全く同感でこの仕事を続けてまいりました。しかし、我が国の子宮頸がん検診の受診率は他の先進国に比べ最も低く、現在でも50%を超えていないのです。そして細胞診の検査精度については私が思っているのとは異なり、80%とも70%とも言われているのが現状です。このことについてはまた別の機会にお話ししたいと思いますが、とても残念な評価です。
いずれにしても、HPV検査と細胞診検査の精度は100%ではありませんので、私達は両方の検査を同時に実施する方法を提案しています。
セルフメディケーション、ASC-USと診断されたら「HPV検査」を受けましょう。
検診でASC-USと診断されたら、残った検体で「HPV検査」が出来ます。これは保険が適用されますので必ず受けましょう。保険の適用にはなりませんが、自己採取で「HPV検査」で子宮頸がんと関係がある危険なHPV(ハイリスク型HPV)の感染があるかどうかを調べることも可能ですす。
私達が実施した外国製のエヴァリンブラシという採取器具と加藤式器具の改良型(セルソフト)との比較調査ではHPVの検出感度はほとんど変わりません。