たま未来連携EXPO2024 特別企画に出展

私達は八王子市下恩方町で登録衛生検査所(株式会社アイ・ラボ CytoSTD 研究所)を運営していますが、スタッフ全員が杏林大学保健学部出身ということもあって、杏林大学とは最新の知見と技術を共有し、主に子宮頸がん検診の受診率向上に関する検査技術や器具の開発に努めてまいりました。
そのような経緯から、この度、たま未来連携EXPO2024 (2024年12月19-20日、東京たま未来メッセ(八王子市)展示室AB)にて特別企画「アイディア集合!共創プロダクト体験ラボ」に出展させて頂きました。

子宮頸がんゼロの町を目指す取り組みのおさらい

私達(アイラボ)は、開業当初から子宮頸がんで亡くなる人“ゼロ”を目指す活動を行ってきました。
その基になるのは、日本の子宮頸がん検診の牽引者の一人である野田起一郎先生の「全ての人が検診を受ければ子宮頸がんで亡くなる人をゼロにすることができる」というお話を聞いたことに始まります。
しかし、日本の子宮頸がん検診の受診率は、一向に上がりません。
舛添要一氏が厚生労働大臣であった頃、公明党の浜四津敏子議員がこの問題を指摘したことに対し、舛添氏が5年間で受診率を50%まで引き上げると打ち上げました。
その効果は、3年後の国民生活基礎調査で37.7%に上昇しましたが、多くの団体の活動もむなしく、2019年43.7%、2022年43.6%と子宮頸がん検診の受診率は頭打ちの状況です。

頭打ちの原因は何か?

日本の性に関する教育が関係しているのではないか?
このスライドは、千葉大学教育学部養護教諭養成課程(故武田敏教授の元)で教務補佐として在籍していた時に学んだ一部です。
性に関する事は、なんとなく表に出したくない、隠しておきたい、、、日本人には特にそんな思いがあるのではないか? 子宮頸がん検診においても、基本的には「全く心配していないわけではないが、特に症状もなく自分には関係ないのでは?」、、、そんな風に思っている人が多いのではないでしょうか?
ですから、私達が行った(下に示す)アンケート調査でも、比較的自分にとって都合のよう状況であったら検診を受けるといったところではないかと思います。これをまとめると、恥ずかしい忙しい面倒くさいというのが実情と思われます。

自分でできる(自己採取)方法ならすべてが解決できるのでは?

私はかねてから、加藤式自己採取器具の有効性を評価している一人です。
本来は医師が採取すべき検体ですので、それに代わる器具は安全性、機能性、有効性のどれをとっても最高のデバイスでなければなりません。医師採取に次いで最も優れた器具でなければならないのです。
私達は現存する器具では加藤式を選びましたので、次にチャレンジするのは検査技術です。
検査精度向上に関する検査技術は⓵標本作製法と➁観察法に分かれます。
先ず、標本作製法については、“採取された検体を全て保存液の中に洗い出し、それを遠心分離器にかけ、得られた細胞成分を用いて標本を作製することにしました(液状化処理)”。
この方法にすることで、採取された(異常な)細胞をより効率的に収集することができ、さらに細胞が重なることがないため顕微鏡で観察しやすくなることで、検査精度が上がります。
自己採取法は腟内に自然に剥離した細胞と子宮の入り口付近を擦過した大量の細胞(正常の細胞と異常な細胞)が採取されます。従って、相対的に異常な細胞の割合が少なくなるので、顕微鏡で観察する細胞検査士の使命感・責任感が問われますので、改めて再教育のプログラムを用意しました。。
数少ない異常細胞を如何に見落としなく探すためのトレーニングです。
細胞検査士資格認定試験においても少数例(数少ない異型細胞を見落としなく発見できる能力も見る試験)として大変重要な私見として組み入れられていますが、それを再認識して頂くものです。
修了者にはこのような認定書を渡すことにしました。
細胞診は機械で自動的に調べる検査でないため、人への投資は極めて重要になります。

そして、医師採取と変わらない精度にこぎつけました

先ずは、お医者さんが採取するのとどの程度違うのかを調べる必要があります。
少ない情報を集めたのがこのスライです。

最善の方法とは言えませんが、検診を受けるのが「恥ずかしい、忙しい、面倒」な人にもこの方法でも受けて頂ければ受診率は少しでも上げられると考えました。
平成22年度東京都で年間5000件以上の自己採取検体を扱う検査所の成績と医師採取検体の成績を比較すると、その差は歴然としています。子宮頸がん検診ガイドラインで自己採取法が“ダメ”、“医師採取に限る”とされている理由はまさにここにあるのです。医師に代わる検体の採取なので、検査を勧める人、検査を受ける人は採取器具の選定には細心の注意が必要になります。また、検体の処理方法によっても精度が著しく変わる事、顕微鏡を観察する細胞検査士の使命感についても同様で、全てが適正に行わられない限りこの方法は“ダメな方法”になってしまうことを十分認識する必要があります。
注目!自己採取例でのD社の成績が他の3社(A~C社)に比べて良い成績でしたので、直接その理由をお聞きしたところ、表に示した回答を頂きました。
私達がセルソフトを用いた細胞診検査でLSIL以上の検出率は30例中7例23%(APJCP.2024.25.5.1673.にて報告)であり、1/23以下の検出精度でした。

自己採取法の欠点を理解しておく必要があります

最大の欠点は子宮の入り口から少し奥に入ったところにできるがん(自己採取器具で直接擦過できない所にできるがん)を早期に発見できない可能性がある事を十分認識して対策することが重要になります。

アイラボでは、報告書に以下のような注意事項を添付しています。
※注意1 この度の結果にかかわらず、既に閉経されている方で不正出血が見られた時は、婦人科を受診して体がん検査を受けましょう。
※注意2 この度の結果にかかわらず、以前に比べ粘液様のおりもの(帯下)が増えた時は、アイラボの無料相談をご利用頂くか、婦人科を受診して下さい。
※自己採取型の子宮頸がん検査は子宮の奥に発生したがんを早期に発見するのは困難なことがあります。
厚生労働省健康局がん・疾病対策課より、「子宮頸がん検診におけるHPV検査単独法の導入について」https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001132571.pdf その経緯を含め解説しています。
この中で私達が最も注目した点は、これまで子宮頸がん検診に使われてきた細胞診単独法「医師採取に限る」という表現でしたが、HPV検査単独法においては「医師採取を原則とする」に代った点です。子宮頸がん検診の受診率は国民生活基礎調査の結果を基に公表されていますが、2019年が43.7%でしたが、2022年の調査では43.6%で、すでに頭打ちの状況です。
毎年1.1万人の方が子宮頸がんに罹患し、およそ2,900名の方が亡くなっています。
子宮頸がんは決して命を落とすようながんではないのです。
予防法としては、HPVワクチンの接種やほぼ全国的に網羅されている検診システムがありながら、どうして先進国の中で最低レベルに甘んじているのでしょうか。

ヘルスリテラシーの低さが最大の要因ではないか?

こちらは今回のたま未来連携EXPO2024での風景
こちらの写真は今年10月に東京ビッグサイトで開催されたFem+(フェムプラス)
に参加した際の様子
「子宮頸がんの原因、、、知っていますか?」という質問に対し、HPVの感染と答えられた人は2割程、HPVはどうして感染するのかとの質問に至っては正しく答えられた人は皆無に等しいのです。
HPVワクチンの接種やHPV検査という言葉は聞いたことがあったり、なんとなく子宮頸がんと関係があるということは知っていても、それが性交でうつるという認識には至っていないのです。
子宮頸がん?、、、自分には関係ない、、、と勝手に思い込む(対岸の火事的思考)人
でも、身内や、有名人が子宮頸がんで、、、というニュースを見たり聞いたりすると、自分は大丈夫なのか?、、、と、少しは知識を高めるる努力をしますが、、、、しばらくすると何もなかったように忘れてしまう「喉元過ぎれば熱さ忘れる」、、、そんな人多いのではないでしょうか?

ヘルスリテラシーの低さと言うより、“都合の良くない話は、あまり深く考えない” 「臭いものには蓋をする」的な日本の性教育の歴史が今なお影響し、日本人の国民性になっているのかも知れません。
ですから、大切な話をする時にはインパクトのある言葉で正しいことを伝えること大事になります。

子宮頸がんは女性だけの問題ではありません。
セックスによってHPVというウイルスが感染することが始まりです。
でも、HPVは淋病やクラミジア(症状が乏しいこともあります)の感染とは異なり、症状が全くないため、感染していることに気付きません。
「風俗を利用してもう10日経っても何の症状もないので、(性病に)感染しなくて良かったと胸をなでおろした経験はありませんか?」
子宮頸がんに関係のあるハイリスク型HPVに感染していても、全く症状はなく、虫眼鏡で性器を観察しても感染部位は分かりませんので、心配事は何もない、、、とかってに解釈し、大切な人へうつしていきます。

出展企業の交流会で突然の登壇要請

突然の登壇要請でしたので、今回アイラボが強調した、「子宮頸がん“0”を目指す」根拠をお話することにしました。
日本における子宮頸がん検診の受診率は43.6%が直近の数字です。
今年4月から、HPV検査単独法も子宮頸がん検診の方法として準備ができた自治体から行なえるようになりました。検体の採取は「医師採取を原則とする」になっていますが、受診率を上げるという意味では医師採取のみの場合大きな改善は期待でしません。既にWHOや米国FDAは自己採取が許可されています。
私達は子宮頸がん“0”を目指す方法は、現在通常の検診を受けている方が約44%、これに自己採取によるHPV検査が可能になれば、受診率80%は困難な目標ではないと考えています。残りの20%は男性の子宮頸がんに対する正しい知識を浸透させることで、風俗等におけるHPV感染予防や男性のHPVワクチン接種の加速が期待されます。アイラボが男性用のHPV検査を提供している理由はそこにあります。

■男のHPVタイピング検査(ハイリスク+コンジローマHPV)

■男のHPVタイピング検査〈ハイリスク13種HPV