子宮頸がん検診ガイドライン2019年についての私見

我が国の子宮頸がん検診の受診率は43.6%(2022年)、HPVワクチン接種率は1.9%(2019年)と世界的に見ても最低レベルと言っても過言ではありません。
この背景には、行政の対応のまずさはいうまでもありませんが、対岸の火事的思考(遠くの出来事に無関心であること)や喉元を過ぎれば熱さも忘れるといったことわざがある様に日本人の国民性とも言われています。自分には何の症状もないし、(何の根拠もないのに)自分には子宮頸がんは関係ないと都合よく解釈したり、芸能人が子宮頸がんになったと聞くと慌てて検診を受ける人が増えるが、それも一時的です。
結局のところ、十分な教育がなされていないことが最大の要因かも知れません。
このスライドは、2015年、ライオンズクラブに在籍中、八王子市の市民団体
『有害情報から子供を守る会』主催のシンポジュウムで使用したものです。
その中に下に示す1枚のスライドがありました。
私が20代(50年も前)の頃、千葉大学教育学部養護教諭養成課程の故武田 敏教授の元で性教育を学んでいましたが、その時日本人の国民性という言葉がよく出てきました。このスライドの様に、
日本人の性に関する教育が如何にゆがめられていたかが良く理解できると思います。
私が中学生の頃、“男子は外で遊んでいろ”と言われ、女子だけが暗幕を貼った教室で何やら“男子には聞かせたくない話”がありましたが、まさにそれは月経教育であったのです。性に関することはなるべく内緒にしておく教育が今なお尾を引いている気がします。

私がHPVの研究を始めた今から40年も前のことですが、学会でHPV感染のことを発言すると座長の先生から『子宮頸がんの原因になるHPV感染は性感染症(性病)であるといってはいけない』とよく言われたものです。それはなぜかと問うと、『クラミジアや淋病とは違い、感染している人があまりに多く、症状もないので性感染症と言ってはいけない。』という回答でした。子宮頸がん検診の受診率が上がらない中、HPV感染が性感染症だと言うと、「(何の根拠もなく)私にとって性病は関係ない」という女性が益々検診を受けなくなるのではないかと心配したのかも知れません。

米国に住むある日本人いわく、HPVの感染が子宮頸がんの原因になると聞いた米国人は『私は大丈夫か?と言ってすぐ検査に行く』そうですが、日本人は(何の根拠もなく)「私はHPVには関係ない」と、対岸の火事的思考は欧米の人とは異なりますね。

私はこのブログで、セルフメディケーション(自身の健康は自分で守る)の考えを広めるため、女性特有の病気について様々なケースを紹介し、自身の知識を広めて頂きたいと考えています。
今回は最新の子宮頸がん検診ガイドラインについて勉強したいと思います。

HPV検査単独法が推奨グレードAになった

細胞診単独法HPV検査単独法推奨グレードAに、細胞診・HPV検査併用法推奨グレードCで、細胞診単独法の検体採取は医師採取に限り自己採取は認めないになっていますが、HPV検査単独法と細胞診・HPV検査併用法は、検体は医師採取を原則とするとなっています。その理由は「国内でのエビデンスが不足しており、受診率向上につながるか、精密検査以降のプロセスにつながるかなどのfeasibility研究が必要である。」としています。
HPV検査単独法と細胞診・HPV検査併用法は医師採取を原則とするになっていますので、、これまで医師採取を苦手としていた人や仕事や子育てで忙しい人、わざわざ検診機関まで出向くのが面倒という人にとっては朗報といえます。

自己採取器具エヴァリンブラシとは

エヴァリンブラシは採取後乾燥できるため郵送に適しており、医師が採取した成績と一致しているため(Tranberg et al.,BMC Infecious Diseases,18,1-7,2018. Polman et al.The lancet oncology,20,229-38.2019. Onuma et al. International Jounal of Clinical Oncology,25,1854-60,2020.)、世界中で採用されています。写真上に示すように、ストッパーがついているため、安心して使用できます。挿入部の長さは4cm、細胞採取ブラシの長さは3.3㎝で全長7.3cmの器具です。

前述のように採取後細胞は乾燥状態で検査施設まで運ばれるため、HPV検査のみに使用されます。
輸送しやすいメリットはありますが、陽性と判定された場合は、現状の進行度(NILM、LSIL、HSILなどの)が分からないので、医療機関を受診して必ず細胞診検査を受けることになります。
このルールが守れないと検査の意味が全くなくなります。

下の白い採取器具は加藤式です。子宮頸がん検診用に開発され、細胞診を目的とした自己採取器具としては最も優れた器具と思われます。当社では、医師採取が苦手な方や忙しい方、検診に足を運ぶのが面倒な方に郵送検査として提供しています。
細胞診のみならずHPV検査や淋菌クラミジアなど婦人科領域の検体採取器具として利用できます。

中のピンクの採取器具は加藤式をグレードアップしたもので、大阪の大成メディカル社が主にHPV検査用に開発したものです
加藤式と同様に保存液を添加して検査施設まで輸送しますので、同一検体で細胞診やおりもの検査にも使用できます。
HPV検査で陽性の場合、残りの検体で細胞診の追加検査ができる点が今後に期待されます。

アイラボのHPV検査単独法とは、、、、

我が国の子宮頸がん検診は細胞診単独法で進められてきましたが、受診率向上を目的に自己採取によるHPV検査単独法が自治体や企業検診への導入が期待されます。
そんな中、アイラボの郵送検査の最大の特徴は全ての検体(例えば淋菌やクラミジアの検査でも)についてパパニコロウ標本(細胞診標本)を作製し、検体の適否判定、炎症の有無、感染症や臭い、更にホルモン状態のチェックを簡単に行っています。勿論アイラボのHPV検査単独法による子宮頸がん検診でも、そのようなチェックを行っていますので、是非アイラボのHPV検査をお試しいただければ幸いです。